ちょっと昔のInnovative Tech
「AIを使う学生」vs.「使わない学生」、エッセイが創造的なのはどっち? 米大学が2025年に実証実験
ちょっと昔のInnovative Tech:
2019年の開始以来、多様な最新論文を取り上げている連載「Innovative Tech」。ここではその番外編として“ちょっと昔”に発表された世界中の個性的な研究論文を独自視点で厳選、解説する。執筆は研究論文メディア「Seamless」(シームレス)を主宰し、日課として数多くの論文に目を通す山下氏が担当。イラストや漫画は、同メディア所属のアーティスト・おね氏が手掛けている。X:@shiropen2
米ジョージタウン大学に所属する研究者らが国際学術誌Computers in Human Behavior: Artificial Humansに発表した論文「Homogenizing effect of large language models (LLMs) on creative diversity: An empirical comparison of human and ChatGPT writing」は、人間たちが生み出すアイデアと生成AIが出力するアイデアのどちらが多様で創造的であるかを検証した研究報告だ。
大規模言語モデル(LLM)は、個人の文章作成やアイデア出しをサポートするツールとして広く普及している。しかしその一方で、多くの人が同じAIを利用し続けることで、社会全体からアイデアの多様性が失われ、似たり寄ったりの内容ばかりになってしまう均質化の危険性が指摘されている。
この問題を検証するため、研究チームは人間が書いた大学入学エッセイと「GPT-4」が執筆したエッセイ計2200件を比較する実証実験を行った。この研究では、エッセイが1件追加されるごとに新しいアイデアがどれだけ集団全体に追加されるかを示す「多様性成長率」という独自の基準を用いて評価が行われた。
まずエッセイ1件ごとの多様性を見た場合、基本設定のままでは、AIが書いたエッセイの多様性は人間より低かった。しかし出力の創造性を高めるようパラメーターを調整すると、AIが書いたエッセイの多様性は人間を上回るようになった。
ところが、複数のエッセイを集めて全体としてのアイデアの豊富さを比較すると、人間の集団は基本設定のAIに対して約2倍から最大で約8倍高い多様性成長率を示した。つまり、個人レベルで比較するとAIの出力に頼ったほうが創造的になる場合があるが、集団レベルになると結果は逆転し、自力で書く学生たちが多様なアイデアを生み出すという。
次の調査では、AIに順序立てて深く考えさせる高度な指示(Chain-of-Thought)を与えて検証を行った。これによりAIの生み出す集団レベルの多様性は基本設定の4倍以上に向上したものの、それでも人間のエッセイはAIに対して約2倍もの多様性成長率を維持していた。どんなにAIへの指示や設定に工夫を凝らしても、人間の集団が持つアイデアの豊富さには及ばなかった。
なぜAIは似たようなアイデアになりがちなのかというと、AIは過去の膨大なデータから次に続く確率が最も高い自然な言葉を予測して文章を作成しているからだという。
加えて、問題のある不適切な発言を避けるための安全対策(人間のフィードバックによる強化学習)が施されているため、どうしても予測可能で平均的な、いわゆる無難で優等生だが尖ったところのない文章になりやすいとの見方を示している。ただし、LLMの進化によってアイデアが均質化しにくくなる可能性もあり、モデルによる影響を継続的に定量評価する必要があるという。
Source and Image Credits: Moon, K., Green, A. E., & Kushlev, K. (2025). Homogenizing effect of large language models (LLMs) on creative diversity: An empirical comparison of human and ChatGPT writing. Computers in Human Behavior: Artificial Humans, 6, 100207. https://doi.org/10.1016/j.chbah.2025.100207
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Innovative Tech
2019年にスタートした本連載「Innovative Tech」は、世界中の幅広い分野から最先端の研究論文を独自視点で厳選、解説している。執筆は研究論文メディア「Seamless」(シームレス)を主宰し、日課として数多くの論文に目を通す山下氏が担当。イラストや漫画は、同メディア所属のアーティスト・おね氏が手掛けている。
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
メルカリ、梨の転売疑惑に「盗品の出品は確認されず」 誹謗中傷には利用制限も
-
2
Anthropic、「Claude Opus 5」公開 Fable 5に迫る性能を半額で――サイバー安全策は緩和、拒否時は自動フォールバックも
-
3
「iPhone高騰」はこれからも続く? 中国CXMTに近づくApple、メモリ競合へのけん制が不発に終わりそうなワケ【後編】
-
4
「ニューロマンサー」実写ドラマ、Apple TV+で2027年1月配信開始へ
-
5
「こんなのに追われたら……」急斜面もやすやす爆走、中国製の車輪付き四足ロボのデモ動画が話題 最高時速20km超
-
6
海外の新作バカゲー「電車アタック」にマンガ家が感心した理由 ブッ飛んだ内容と完成度の高さ、そして“日本”
-
7
検索結果に「詐欺ではありません」と表示させる詐欺手口、警視庁が注意喚起 AI要約も餌食に
-
8
「めっちゃカメレオン」公式Discord乗っ取り 担当者PCがマルウェア感染、管理者が全員BANに 現在は復旧
-
9
暑さ対策が熱い! 「猛暑対策展」で感じた、転んでもただでは起き上がらない日本人のエネルギー
-
10
スーパーに並んだ「ごちゃごちゃ生成AIポップ」が物議 “看板王”こと、きぬた歯科院長「これはアリ」
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR