AWS Summit Japan 2026
“開かずの基幹システム”、450人月→実質2カ月で解読 創業100年のカクヤス、生成AIで挑む「転生」(2/2 ページ)
「AIは魔法の杖ではない」4つの制御技術
生成AIの活用は、順風満帆ではなかったという。石井氏は「AIは何でも覚えているという前提で始めたが、全く無駄だった」と述べ、試行錯誤の末にたどり着いたAIを制御する技術として(1)忘れた内容を思い出させ続ける「記憶の補強」、(2)ルールを人ではなくAIが参照するファイルに置く「ルールの外部化」、(3)役割と経歴を与えて思考の土台を定める「人格の付与」、(4)コード生成のプロンプトをいきなり作らず「プロンプトを作るためのプロンプト」から組み立てる「2段階方式」──の4点を挙げた。
その上で「AIは丸投げでは動かない。記憶、ルール、人格、2段階設計というAIを制御する技術こそ、現場での最大の発見だった」と強調した。
雑な依頼を「5W2H」で翻訳
AI駆動開発の最大のボトルネックは、もはやコードではなく要件の整理だったという。指示が曖昧なら、AIは曖昧なまま動くものを作ってしまう。そこで、現場からの「経費精算を楽にしたい」といった雑な依頼を「5W2H」で構造化する型を作った。
誰が、何を、なぜ、いつ、どこで、どのように──ここまでは依頼文からある程度推測して埋められる。だが「予算はいくらか」「導入はいつまでか」という費用や期限を指す「HOW MUCH」は、依頼者が言い忘れやすい。この埋まらなかった項目こそ、依頼者に確認すべき質問になるという。
石井氏は「AIがコードを書く時代、品質と時間は『何を作るかを言語化する工程』に集中する。要件整理の質がそのまま成果物の質になる」と指摘。「システムエンジニアがビジネスエンジニアになる時代が来た」と語った。
「AIと考える組織」へ
プロジェクトは現在も進行中で、石井氏は「万事解決のハッピーストーリーではなく、道半ば」と話す。現場主導で業務フローを再構築しながら、新旧システムの比較による段階的な切り替えと、部門横断のデータ基盤の整理を進めている段階だ。
石井氏は「これからは物流データ自体が商品になる。AIを使う時代から『AIと考える組織』へ変わる」と展望を語り、「30年の因習をAIと業務の力で解体する。100年の老舗が生成AIと共に転生していく物語は、まだ終わっていない」と講演を締めくくった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
資さんうどん、従業員の退職理由などが外部から閲覧可能に 委託先の勤怠システムに設定不備
-
2
NEC、委託先の情報漏えいで謝罪 「セキュリティ事業を手掛ける企業として反省」
-
3
JALの予約システムに不正アクセス 約9万人分の予約情報が漏えい 一部ではパスポート番号も
-
4
VTuber「兎田ぺこら」グッズにSNSで風評被害→示談成立 「保護者同伴で謝罪などがあったため」
-
5
GMO、ランサム被害にあった顧客に新しいPC提供へ 犯行グループは1人の顧客情報公開か
-
6
NECのルータ「Aterm」、PHP脆弱性の影響なし 設定画面URLの「.php」は無関係
-
7
「対策を後回しにしたサーバが軒並み狙われている」 相次ぐ不正アクセスにラックCTOが警鐘
-
8
GMO不正アクセスの犯人サイト、ドメイン停止を確認
-
9
Anthropic、独自の“創薬活動”に着手 社員1人のバイオ企業を買収、小児難病の治療薬研究を進める
-
10
メアドを検索→AIで“その人専用フィッシングメール”を生成する手法、クリック率が約2.7倍に 7000人以上で実験
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR