GMO熊谷代表、涙の謝罪会見でも“熊谷節”さく裂──「31年間、もうけるという言葉は使ったことがない」(2/2 ページ)

 第2部「本件を通じて得た知見についてのご説明」での熊谷代表の全発言は以下の通り。

 改めまして、熊谷です。大変恐縮ですが、PC操作がございますので、このパートは座ってお話をさせてください。

 まず最初に、この事件における私たちの基本姿勢についてご説明をさせていただきます。お客さまに対する姿勢は、「誠実に」が基本姿勢です。私たちができることは、全て行いたいというふうに願っておりまして、少しでも信用回復につながるように全力で実行せよと指示を出しております。そして、この問題に関しては、全グループ8300人、真摯(しんし)に向き合い、解決をせよというふうに指示を出しております。

 私は現在63でございますが、この産業、95年のWindows 95から事業を開始しています。従って、事業者としては今年で31年間この産業に関わり、自分でこの産業を仲間と共に世の中のためになる素晴らしいツールとして残していきたいと、真摯に事業に向き合ってまいりました。

 私たちには、先ほど安田(GMOインターネットグループの安田昌史取締役グループ副社長)がご説明いたしました「GMOイズム」というもの社是・社訓がございます。その中で、全ての目標はお客さまの笑顔であり、その笑顔を見て私たちは誇りを持ち、その笑顔の循環で、目的ではなく、結果としての利益で株主さまも笑顔になると、31年間ずっと言い続けてきました。

 私は31年間、一度たりとも、もうかる、もうけるという言葉を使ったことはありません。8300人(のグループ社員)にご確認ください。お客さまに喜んでもらいなさいと、だから一番いいサービスを作りなさいと、そういったこと以外ございません。

 改めまして、私どものことをご存じない方も多数この中継をご覧になっていると思いますので。私どもはネット産業において最も古い会社の1つです。現在、上場企業12社を中心とした158社で構成されております。関わる社員さん、これは禁止用語なので、上下関係がある言葉は、私どもは禁止用語にしております。子会社は禁止用語です。グループ会社。世でよく買収とかM&Aという言葉がありますが、私たちはそれは「仲間作り」と呼んでおりまして、社内ではそのような上下の目線がある言葉は一切禁止しております。よって社員さんのことはパートナーと呼んでおります。パートナーは現在8300名です。

 ご覧のようなインフラ、金融事業も行っておりますが、ネット証券、仮想通貨交換所、ネット銀行など金融事業も行っておりますが、ネットのインフラ事業におきましては、ご覧のような商材で、皆さまがGoogle Japan、Yahoo! JAPANでご検索いただくと、その8割ぐらいのWebサイトには私どもの商材をお使いいただいてます。

 セキュリティ事業におきましては、サイバーセキュリティ事業は先ほど安田がご説明した通りです。しかしながら暗号化の事業、認証局という、皆さまのスマートフォン、PCからサーバまでを暗号化しているHTTPSの、その「S」の文字が付いております、暗号化に関しましては、03年から参入をしております。23年前でございます。

 23年前から、私は自分が作ってきたインターネットが、(涙ぐみながら)多くの方の笑顔に資する安心で安全なインターネットになってもらいたいと心の底から思っておりまして、事業として一度ももうかる、もうけるという言葉を使ったことがない。お客さまのために情報を守れと言い続けてまいりました。

 私が認識しているインターネットの現状と課題を、皆さまにご説明させてください。自分たちのことを棚に上げるために申し上げてるんではありません。皆さまお気付きの通り、情報漏えいが毎日です。イギリスの警察のデータでは、正直に情報漏えいを公表している会社は6%だそうです。これはイギリスの数ですけども。氷山の一角が、今の皆さまが報道されている情報漏えいということです。

 なぜこんなことが起こってるんでしょうか。皆さま、今回の私どもの件ではありません。これは言い訳をしているつもりは一切ないので、今回の件は私どもの、先ほどご説明した通りの内容です。でも毎日情報漏えいのニュースが流れているのは、これはAIの発展が原因であります。

 これは私の感じている、統計データに基づくものではありません。定量的ではなく、定性的に私が感じているこの業界の変化を、皆さまにご理解いただきやすくするためにグラフにいたしました。

 31年間ずっと2桁成長を、この業界はしてまいりました。ところが、22年の11月30日、サム・アルトマン氏率いるOpenAI社がChatGPTをリリースしてから、角度が変わったことを認識をいたしました。

 最初は、このわれわれの業界ははやり廃りが非常にあります。みんなが「あのサービスは伸びる」と言ったものが、そのうち消えたり、「あのサービスは全然駄目だよ」と言ったものが、来ない来ないと言っていた未来があっという間に来たりするのが、われわれの業界です。私はこれはどちらかなと当初思ってました。

 11月30日にリリースされ、1月に入り、2月に入り、私はとんでもないことが起こっているのではないかと思うようになってきました。年明けから全グループ、AIに真摯に取り組みなさいと、全軍AIに切り替えるんだというふうに、パートナーの皆さんにお話をし、さまざまな施策をしてまいりました。

 それが、スピードが二次曲線に変わり、今感じているスピードは曲線ではありません。垂直です。日進月歩ならぬ秒進分歩という、そういうようなイメージ感でおります。特にこの半年間、激しいスピードで変わっています。その理由は、AIがAIを開発しているからです。最初の27年間は、人間がコーディングをしていました。22年から3年間は、人+AIがコーディングしてました。今はAIが自らをコーディングし、エンジニアさんはそれを監督している立場に変わったわけです。

 これはこの先どうなるのかというと。私たち人間は食べなければいけない。寝なければいけない。1日24時間も、おそらく創造的な活動に費やせる時間は3分の1なんでしょう。AIは電気をつないでおけば24時間です。この段階で時間効率が3倍になっています。私たち人間はコピーができません。AIはコマンド1つでコピーができます。計算リソースさえあれば、サーバですね、生産リソースがあれば、無限大に増やすことができるんです。もはやスピードの障害になってるのは人間、という時代が訪れました。

 いつも皆さまのAIも、皆さまの指示を待ってるはずです。ここ最近はAIエージェントが出てきています。エージェントは一旦指示をすれば、皆さまが寝てる間も動き、優秀なパートナー、あるいは皆さまの優秀なプライベートな秘書さんのような役割をしています。

 このまま、この先、人類はこの垂直に向き合っていかなければならないという時代を迎えております。さらにAIは電気が通じている全てのものに組み込まれ、社会と生活の基盤になってまいります。つまり、企業も人も社会も、全てをこの垂直のスピードに合わせないといけない時代が訪れたという認識をしております。

 一番最初にこのスピードに合わせたのは犯罪者です。犯罪者たちがこの便利なツールを使い、皆さんの生活を、企業を、社会を、脅かしているんです。(語気を強めながら)だから、私たちは、一歩たりとも犯罪者に、お金を払うことはしないと。彼らの最大の目的はお金です。助長するようなことはしません。永久に支払わないと申し上げたのは、そういうことです。

 皆さま、このグラフィックレコードは韓国の銀行を襲った、あの手口・被害を1枚にまとめました。私どもも、金融庁さまの指導のもとに銀行業の免許をいただき、経営をしております。当然、社会の信用のベースですので、私どもの全グループ、150近いグループの中の銀行・証券・仮想通貨はセキュリティレベルが高いです。それはどの国も一緒です。

 その銀行が、16社10万件のデータ漏えいです。韓国の銀行ですよ。本丸の現金には到達できなかったようですが、銀行のお客さまの個人情報が10万件漏えいしています。

 なぜこんなことが起こっているのか、ご説明します。皆さま、ARTEX(アルテクス)という言葉をお聞きになられたことございますでしょうか。これは元はというと、脆弱性診断のためのツールでした。中国のエンジニアさんが開発し、平和利用のためのツールでした。これはそのコントロールパネルです。

 仕組みを簡単にご説明いたしますと、ARTEXは複数のAIを組み込むことが可能です。AIは、西側の3大AIと言われているような、いわゆるクローズ型のAIです。クローズ型というのは、AIの中身を触れないという。各社がAIを作っておりまして、中は私たちは使うだけ、というのがクローズ型です。GoogleさまのGemini、AnthropicさまのClaude、OpenAIのChatGPT。これが世界で今、われわれの業界では3大AIと言われてまして、クローズ型の代表例です。

 あとは、世界にはオープン型のAIというものもございます。オープン型というのは、計算リソースさえ持っていれば、自分でAIの中身を改造できるというのをオープン型と言っております。サーバがあれば、そのサーバの中にAIを自分でコピーして、自分向けのAIにすることができるということです。ARTEXは、AIを次々と切り替えることができるツールなんです。

 AIには回答しないルールがあります。例えば、人を傷つけるようなものを作りたい、どうやったらそういう悪いことができるんだという質問をすると、AIは、業界でガードレールと言っていますが、ガードレールに従って「そのようなご質問はお答えできません」、そういうふうに回答いたします。

 そういう使い方をしているアカウントは、繰り返し使えばアラートが上がって、アカウントBANというのが業界の常識です。ところがオープン型のAIは、ガードレールが緩い、あるいは自分で改変が可能です。

 そして、それらのAIを組み合わせて、クローズとオープンのAIを組み合わせて、攻撃するために、相手のサーバに入るために弱点を、AのAI、BのAI、CのAIと交互にオーケストレーションしているのが、このARTEXです。ガードレールにぶち当たったら、次のAI、次のAI、次のAIというように、相手の弱点・穴を探し続けるのが、このARTEXになります。

 韓国の銀行を襲ったのがこのARTEXだということが、われわれの調査でも分かっておりまして。このARTEXを作った人が、GitHubという、エンジニアさん、僕たちがソフトウェアを置いておくサービスがあります、そこから「悪者に使われてるから、もう削除する」と言って削除したんですが、時すでに遅し。1万2000亜種コピーされて、1万2000件も世界中に拡散し、本来は平和のためのツールだったのが、悪いことをするために改造されて、今やちょっと知識があれば高校生でも、下手すると中学生でも攻撃者、ハッカーに、犯罪者になることができるツールが、このARTEXです。それどころか、これを見本に同じようなツールが複数開発され、世界中を流通しているというのが今のインターネットです。

 皆さん、この、今年ではなくて、この垂直に変わった今年ではなくて、昨年度以前の数字です。犯罪者が侵入をしてから発覚するまでに1年強かかってます。侵入に気付いてから正直に公表するまでに2カ月というのが統計データです。つまり情報漏えいは、かつては14カ月開示にかかってました。夏以降、今年の夏以降、激増してます。これは主に、みんな上場企業ですよ。システム投資をしている上場企業です。皆さん、一般の会社よりも正直だ、上場企業だから当たり前ですね。正直だし、システム投資もしてるし、動きも早いです。それでこの情報漏えいの、毎日どこかの会社が、毎日情報漏えいです。私は今のこの社会的な混乱は、まだプロローグでしかないと、大変な危機感を強めております。

 締めで、今回の私の反省と結論を申し上げたいと思います。私どもは「サイバーセキュリティ」という言葉を自ら使い、お客さまにも説明をしていました。でも、私どもの業界ではゼロトラスト、何も信じないゼロトラスト、そしてセキュリティは10年以上前から、レジリエンスという言葉が使われてました。これは、侵入してから、侵入を防ぐことはできないが、いち早く食い止め、いち早く回復するという考え方でございます。

 私ども自身がレジリエンスに変わらなければいけなかったのに、これが遅れていたということが最大の問題点で、セキュリティ企業からレジリエンス企業、そして日本の企業の皆さまのお手本になれるようなレジリエンス企業にならなければならないというのが、私の今回の反省でございます。

 皆さま、犯罪者の攻撃は、以前は、ちょっと武器の名前を挙げるのは場にふさわしくないですが、分かりやすく使わせてください、以前は拳銃でした。今は機関銃です。戦争に例えると、以前はピンポイント爆撃でした。今は絨毯爆撃です。テロに例えるなら、今は無差別殺人ですよ。社会はこれに対応しなければなりません。人も企業も、そして政府も、このスピード、これに合わせられなければ、犯罪者の汚染でインターネットが使えなくなってしまいます。皆さんの武器のペンは、この事実をお書きいただき、(語気を強めながら)人や企業や、そして国家がこのスピードに合わせられるように変化を促していただきたいと願っております。

 自分の失敗をお客さんに迷惑をかけて、その話をすり替えるつもりは1ミリもありません。ただ、私が感じていることを、31年間、63歳の年で31年間、つまり人生の半分をこのインターネットにささげ、このインターネットを人々の、日本の、世界の宝物として、きれいにしてから死んでいきたいと思います。

 こんな犯罪者のツールになってるインターネットのまま、この業界から撤退し、「あとは任せたよ」なんて言えません。僕は命かけて、この産業を多くの方の笑顔のツールにしてから死ぬつもりです。

 以上です。

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