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Second Lifeに“電通島” 「バーチャル東京」オープン

» 2007年08月23日 17時40分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 電通は8月23日、米Linden Labが運営する3D仮想世界「Second Life」上に、東京の文化を発信する地域「バーチャル東京」を構築したと発表した。まずは「世界陸上大阪大会」と連動し、アバターで競技を楽しめるスタジアムを24日に公開。9月下旬には人気CG「スキージャンプ・ペア」と同様なジャンプが楽しめるジャンプ台を公開する予定だ。

 ゲームやイベントで集客しつつ、同社が確保した計 16のSIM(島)を企業に誘致し、オブジェクトの構築やSIM運営を請け負って収益化する計画。すでに金融機関などの参入が決まっており、今後1年で30社程度の利用を目指す。

 仮想社会の経済活動も研究する予定で、9月下旬に開設予定の慶応義塾大学仮想キャンパスで研究を行うほか、電通国際情報サービスが、フランチャイズシステムやポイントプログラムなどを検証していく。

スキージャンプ国際大会も

 バーチャル東京は「東京の持つエネルギーや文化などを世界に発信し、クリエイターが集まる拠点」を目指して構築を進めてきた。元セガのクリエイターで、キューエンターテインメントCCO(Chief Customer Officer)の水口哲也氏が総合プロデュースを担当している。

 世界陸上と連動したスタジアムは、東京放送(TBS)、プレゼントキャストと共同で構築。1 SIMを丸ごと使い、9月1日までアバターで100メートル走や400メートルリレー、砲丸投げなどが楽しめるほか、大型スクリーンで世界陸上関連動画を配信する。


画像 世界陸上のスタジアムでは砲丸投げなどが楽しめる
画像 スタジアムでマラソンするアバター。左のキャラ「おにぎりくん」は、何かに似ている……

 スキージャンプ・ペアのジャンプ台は、水口氏が手がけた第1弾企画。ユーザーアバターがスキーウェアなどに着替えて、アクロバティックなジャンプを楽しめる。「ユーザーに、自由にジャンプのスクリプトを組んでほしい」と水口氏は期待する。


画像 スキージャンプペアのジャンプ台
画像 アバター2人組で楽しむ

 2人でペアを組まないとジャンプできないため、ジャンプ台に集まったユーザー同士が仲良くなってくれるという狙いもある。「ジャンプ台で見知らぬ人と一緒に飛んでもらえれば」(スキージャンプ・ペア作者の真島理一郎氏)

 冬には「スキージャンプ・ペア国際大会」も開く予定。リアルのスキーイベントのように、スポンサーを募って収益を上げることも計画している。

慶応のバーチャルキャンパスも

画像 村井教授

 慶応義塾大学の仮想キャンパスも、バーチャル東京の一画に9月下旬にオープンする予定。慶応の授業を動画で公開するほか、仮想世界経済の研究などを行う。

 同大学の村井純環境情報学部教授は「ネットはいま、リアルな人間社会をどう写像するか、という段階に来ている。ネットを通じ、地球レベルで人類が対話できるようになるかもしれない。Second Lifeはそういった未来へのパイオニアとして期待している」などと話した。

フランチャイズやポイントプログラム研究

 仮想空間を使った経済実験も、電通国際情報サービスが行う。店舗のフランチャイズシステムを構築。店舗を持ちたいユーザーが、オブジェクトの仕入れや販売などを簡便に行えるようにしたり、ポイントシステムを構築して、買い物ごとにポイントがたまるようにする――といったモデルを計画している。

 ただ仮想空間上の経済活動は、税金などの問題がクリアになっていないため「問題が解決次第、実際の運営を始める」(電通国際情報サービス執行役員の渡邊信彦氏)としている。

参入は600万円程度から

 バーチャル東京では、スキージャンプ台などで集客をしながら企業参入を促し、仮想店舗構築・運営費用で収益を上げる。仮想世界ならではの広告モデルも実験していく計画だ。

 まずは電通が確保した16のSIMを誘致する計画で、参入費用は半年間で600万円程度から。金融機関などがすでに出店を決めており、今後1年で30社の参入を目指す。

 「広告市場を作るだけではもったいない。社会を構成する基本機能、インフラを持つ企業に参加してもらいたい」と電通メディア・コンテンツ計画局スーパーバイザーの粟飯原(あいはら)健氏は期待する。

 仮想美術館「東京ポップミュージアム」の構築も計画している。仮想美術館で寄付を募り、集まったお金でリアルな美術館を建てる――という構想だ。「現実とネットをつなぐ、半仮想空間にしたい」(粟飯原氏)

「今年は3Dネット元年」

 電通は7月に、デジタルハリウッド大学院と共同で「Second Life研究会」を発足。すでに100社以上の企業が会員として参加しているという。

 「2007年は3Dネット空間の元年というべき年になるだろう。現実空間ではテロや紛争、飢餓など多くの問題が起きている。仮想空間なら、言語や文化の壁を超えたコミュニケーションも期待できる。可能性に満ちたSecond Lifeを発展させていきたい」(粟飯原氏)

 ただSecond Lifeはユーザー不在とも指摘され、特に企業SIMには人が集まらない傾向がある(関連記事参照)。「日本語版が出てからまだ1カ月。今後ユーザーが増えていくだろう。ユーザーが何度も来たいと思えるような場を作っていきたい」(粟飯原氏)

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