“創意の庭”で断面に触れる――SFCの「ORF 2009」、Twitterもフル活用

慶應SFCが年に1回、研究成果を発表するイベント「ORF」が今年も開かれる。庭を歩き回るようにして研究に触れながら、SFC 19年の歴史の断面を体験できる構成だ。Twitterもフル活用。イベント前から終了後まで盛り上がれるようにした。

» 2009年11月11日 10時00分 公開
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 慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)の研究成果を一般公開する「慶應義塾大学 SFC Open Research Forum 2009(ORF2009)」(SFC研究所主催)が、11月23日(月・祝)、24日(火)に、六本木アカデミーヒルズ40(六本木ヒルズ森タワー40階)で開かれる。

 テーマは「Gardens for Ingenuity−断面の触感−」。まるで庭を歩くように研究に触れながら、SFCが始まって以来19年の歴史で培ってきた“断層”を感じ、来年の開設20年につなげていく構成で、昨年、一昨年のテーマ「eXtremes」(極限)とは異なる切り口で研究成果を展示する。

 Twitterをフル活用し、イベント前から終了後まで盛り上がれる仕組みも構築。教授や学生が手作りしたさまざまな仕掛けも用意し、来場者はただ見るだけではなく、体験し、参加しながら楽しめるようになっている。

 ORFに込めた思いや見所を、ORF2009実行委員長の小川克彦 環境情報学部教授と、加藤文俊 環境情報学部准教授、田中浩也 環境情報学部准教授、中澤仁 環境情報学部専任講師、筧康明 環境情報学部専任講師に聞いた。

教授陣が“庭師”に “iPod touchの庭”で断面を切り取る

画像 加藤 准教授

 メインテーマのGardens for Ingenuityは、「創意の庭」という意味。個々の研究をばらばらに並べるのではなく、研究同士の関係やつながりが見えるよう、似たテーマの研究をまとめて1つの庭に見立て、教授陣が“庭師”となって設計した。

 庭を通る道には、「ユビキタスアベニュー」「ラーニングな街角」「ソーシャルストリート」「インターフェイス通り」など研究テーマを反映した名前を付け、街を歩くような感覚で回遊できる。

 「見る人の見方によっても庭の姿は変わる。庭師の意図の通りに見てもらうこともできるし、気ままに歩き回ってもらい、移ろう風景を楽しんでもらえれば」と、加藤 准教授は話す。

 サブタイトルの「断面の触感」には、ORFの会場を断面として切り取り、展示に触れてもらうおうという意味と、来年開設20年を迎えるSFCの歴史を断面として振り返り、積み上げてきた知識の層の手触りを感じようという意味がこもっている。


画像 中澤 専任講師

 全体の展示を俯瞰できる“ORF Navi"を用意。「広い会場では展示が埋没してしまうこともある。日本庭園のように、縮図を作りたい。」(中澤 専任講師)と考えて作ったものだ。

 5x5メートルほどのスペースを使い、展示のストリートごとに円いベースを用意。展示ブースの数だけベースに棒を生やし、その先端にiPod touchを取り付けて、ブースの紹介や、ブースごとのハッシュタグがついたTwitterのつぶやきを表示する。来場者が情報の樹に触れながら散策できる箱庭のような仕掛けだ。


触れる展示 シャボン玉ディスプレイや電気自動車、手作り新聞も

 触感という言葉が示す通り、手で触れられる展示も多い。例えば、触れると割れるシャボン玉製ディスプレイ。「プロジェクターやモニターではなく、発光デバイスでもない。シャボン玉が“にょこにょこ”動くことで情報を出し、触ったり割ったりできる」(筧 専任講師)というものだ。

 「コ・モビリティ社会の創成」では、清水浩教授が1人乗りの電気自動車、小川教授が専用路線の模型を展示。小型電気自動車は、行き先を設定すれば自動運転してくれる自動車で、過疎地域などでも高齢者や子どもが安心して利用できる移動手段として研究を進めているものだ。その電気自動車を走らせる専用道路として活用の提案をしているが、廃線になった鉄道路線。この路線を含んだ街の様子の模型を展示する。

画像 田中 准教授

 木製のエントランスアーチや手製の新聞など、手作りの作品にも触れられる。アーチは、工作機械で切り出した木をパーツ状にしたものを組み立てた、「木の匂いがする」(田中 准教授)ものだ。新聞は、ORF会場で取材し、その場で発行し、号外のように配る。会期中に4回ほど出す予定だ。

 最近は、手触りを重視した研究が増えていると、加藤 准教授は話す。「ここ10年ぐらいでインターネットが当たり前になり、世で言う情報化は終わった。身近にデバイスが入ってくる中で、冷たいディスプレイの中だけではない、手触り感覚が来ている。ただ安直に後ろに戻るのではなく、新しい肌感覚や温かさを表現したい」


セッションで知る「断層」 豪華な顔ぶれ

 セッションでは、世界を“庭”とみなし、地域的な深さや国際的な広がりにフォーカス。地域行政からIT、医療までジャンルは幅広く、顔ぶれは豪華だ。

 元三重県知事の北川正恭氏などを招き、地域行政について議論するセッション、参議院議員の鈴木寛さんや金子郁容教授などが、ITとヘルスケアを組み合わせた「eケア」について意見交換するセッション、Google日本法人の辻野晃一郎社長やSFC卒業生でクックパッド佐野陽光社長などが、ネット社会について議論するセッション、政権交代を果たした日本の政治のゆくえについて、上山信一教授と曽根泰教教授が民主党議員と議論するセッション、SFCの国際戦略や日本研究のあり方について議論するセッションなどを用意した。また、「SFC魂は健在か?」をテーマに、各界で活躍するSFCの卒業生を迎えて議論するセッションも。SFCが19年培ってきた断層に触れ、未来を展望する。

 会場では、SFC卒業生の起業家についても紹介。カヤックなどネットベンチャーから、湘南でブランド豚「みやじ豚」を展開し、農業を明るく楽しい産業にしようと取り組んでいる2代目社長など、SFCを卒業していろいろなやり方で社会で活躍する卒業生を紹介する。「SFCには起業家精神がある人が多い。ORFでも、卒業生起業家の輪を作ることに取り組んでいきたい」と、小川教授は狙いを語る。


Twitterで「断面」切り取る

画像 ORF公式サイトトップページ

 「Twitterコミュニティーで、事前から事後まで盛り上げたい」(田中 准教授)――Twitterもフル活用し、ORF開催前から終了後までをリポート。専用のTwitterアカウント「@sfc_orf」で、ORFスタート前から開催中、終了後まで、さまざまな内容をつぶやく。ハッシュタグ「#orf2009」も使い、参加している研究室や教員、学生のつぶやき、来場者の感想などを集める。

 ORF公式サイトに載せたメインビジュアルには、Twitterと連動した大がかりな仕掛けを用意した。#orf2009入りのつぶやきが増えるほど、ビジュアルが変化していくのだ。

 惑星をイメージした緑色の円の表面に、ブースごとの“土地”を用意。「#orf2009」+「ブース番号」のハッシュタグ入りつぶやきが投稿されると、その土地に草が生える。どのブースについてのつぶやきが盛り上がっているかがひと目で分かり、準備状況を垣間見られる。


画像 筧 専任講師

 ORF開催中は会場とリアルタイムに連動する予定。会場のいろいろな場所にマイクを置き、ざわざわと盛り上がっているブースの“庭”は「草がゆらゆら揺れる」(筧 専任講師)など、サイトから会場の様子をビジュアルで確認できるようにする。

 緑色の円は、ORFの“断層”も示している。円の表面を拡大すると、14年間のORFのコンセプトを書いたテキストが地層となって現れ、ORFの歴史を振り返ることができる。

 セッションでもTwitterを活用。100人規模の小さなセッション「インタラクティブセッション」では、Twitterを使って意見や感想などのつぶやきをリアルタイムで会場に表示し、来場者を巻き込めるセッションを行う予定。ORFの最後には、「@sfc_orf」のフォロワーを集めたセッションも開き、集まったつぶやきを来年にどう生かすか議論する。「来場者の方々も積極的に参加していただき、いろんな見方や切り口でORFを“切って”いただきたい」と、田中 准教授は話す。


20年に向けた一歩を

画像 小川教授

 今年のORFは、参加する側も見る側も楽しめ、事前から事後まで盛り上げ続ける、手作りで双方向なイベントを目指している。「今まで、出展者ではない観客や学生はORFに参加する方法があまりなかったが、それを拡大しようと取り組んだ」(田中 准教授)結果だ。

 ロゴデザインやWebサイト、ポスターなどもすべて教員や学生が担当し、すべてが研究成果となる。専門の業者に委託をしない分、多少仕上がりが粗くなったり、納期に遅れが生じることもあるが、実行委員会の教員や学生たちも楽しみながら作っているという。「SFCは、学び合い、教え合う“半学半教”の福沢精神が最も生きている。ただ知識を詰め込むのではなく体験・経験が重要だ」と小川教授は話す。

 ORF2009は、来年のSFC開設20年に向けた一歩。ORFという2日間のイベントだけでなく、その後の研究までウォッチしてもらい、来年につなげていきたい考え。WebサイトやTwitterなどネットの力も活用しながら、“継続的で広がりのあるORF”にチャレンジしていく。

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