慶應義塾大学SFC研究所が1年に1度、湘南藤沢キャンパスで行なわれている研究の成果を一般公開するイベント「慶應義塾大学SFC Open Research Forum 2007」が11月22、23日に開かれる。会場は昨年の丸の内から2年ぶりに六本木ヒルズに戻り、SFCの持つ多様な“極限”が凝縮されたスペースでじっくり見せるという。
11月22(木)、23日(金・祝)の両日、六本木アカデミーヒルズ40(六本木ヒルズ40階)を会場に、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)のSFC研究所が主催して「慶應義塾大学SFC Open Research Forum 2007(ORF2007)」が開催される。今回のテーマは“toward eXtremes ―未来創造塾の挑戦―”。ORFはSFCの研究成果を数々のセッションや展示を通じて公開し、SFCと共同で未来をめざすパートナーを探そうという狙いを持っている。
設立18年目となるSFCの役割を問い直すことから生まれたというテーマに込められた意味や、ORF2007の見所について、ORF2007実行委員長である國領二郎教授と副委員長の脇田玲准教授のお二人に伺った。
――“toward eXtremes”には大学であることの意味を問い直すということから決まったそうですね
脇田准教授 私は大学の役割は2つあると思っています。1つは知識を伝播する装置としての役割、もう1つは企業ではリスクが高すぎることをやる組織としての役割です。そして後者こそが今大学にもっとも求められていることです。そのようなことは常識を持ってやるのではなく、むしろ極限性を持ってやるべきことだと思います。そう考えると本来大学というのは非常にeXtremeな場所だということなのです。
SFCも設立18年目に入り、世の中と仲良くなって社会に浸透はしたが、ややトゲが取れた感があると思っています。そこで大学という組織でしかできないeXtremeというものを改めて探してみたい。メインストリームで何かを作るのではなく、むしろ周辺で物事はできてくるんだと思うんです。クロスオーバーした周辺が一点に向かうのではなく、むしろ発散・分散して多種多様に広がっていく、その極限を目指したいのです。現時点では周辺・極限であっても5年後10年後にはメインストリームになっていくものを作りだす、そんな意志表現みたいなものがあって、今回のテーマに繋がっています。
――2年ぶりに六本木ヒルズに戻る形ですが、以前とは違う見せ方になるということでしょうか
國領教授 ORF2007ではエントランスもキャンパスの入り口をイメージしたものになります。「知の創造の場」である大学の未来像、つまり我々がキャンパスを今後どう高度化するかについて考えている中から出てきたものを、今回六本木ヒルズでお見せしたいと考えています。
僕が会社に入った頃は社内のどの部屋も出入り自由という状況でしたが、今や企業はもちろん、大学でさえも鍵だらけです。こうした鍵だらけの組織・社会はどうしてもたこつぼ化していってしまいます。それをどう突破して有機的な知の空間にできるか、という非常に大きなテーマも持っています。
脇田准教授 その実験の場の1つとして今回「ブックカフェ」を設置します。そこには、SFCの研究者の著作を集めた本棚を置きます。訪れた人が本を手にとってソファに座って読んでいると、そこではより豊かな情報が得られるような空間をデザインしました。500冊くらいある書籍の1冊1冊にはICタグが付けられ、机にはセンサーが埋め込まれています。書籍をテーブルの上に置くと、前にあるディスプレイに関連する情報が表示されたり、その書籍の著者の関連展示ブースは何番ですよというような情報を得られるようにします。また、そうした技術だけではなく、ブックカフェにはブックマスターというリアルの人物――加藤文俊准教授(環境情報学部)が担当します――がいて、本にまつわるさまざまな話をそこで展開します。
ブックカフェで使われている技術自体は特に革新的なものではありませんが、技術的にアピールするということよりも、そうしたものの組み合わせによってどう問題を解決するかというところに力点を置いています。
國領教授 ORFを通じて積み上げてきた部品を凝縮させ、いままでばらばらに見せていたものが結合して具体的なコンセプト「知の製造空間」みたいなものとしてお見せできるのではないかと思っています。
――セッションや展示にはどのようなものがありますか
脇田准教授 外部ゲストを招いたり、内部でもユニークな研究を集めたセッションというのをメインセッションとして公開します。
メインセッションの1つ、「地球の科学技術を考える」では宇宙飛行士で日本科学未来館館長の毛利衛氏、慶應義塾大学グローバルセキュリティ研究所所長の竹中平蔵教授、慶應義塾常任理事村井純教授の3人で、世界の中で日本が果たすべき役割、21世紀の技術政策のビジョンについて多様な視点から語っていただきます。こういう組み合わせはめったに見られないのではないでしょうか。
國領教授 我々が常に心がけていることとして、単なる考える会ではなくてそこから先に何かが起こるきっかけになるようなことをやりたいというものがあります。
メインセッションの「FTA・EPAで磨く日本の国際競争力―東アジア経済共同体構築に向けて」では、三菱商事顧問の團野廣一氏、日本経済新聞社編集局次長の竹岡倫示氏ほか、オーストラリア公使や在日米国商工会議所会頭を招いて、「競争力強化」をEPA戦略でどう実現していくのか、「東アジア経済共同体」構築を念頭に大いに議論します。ここでの議論をそのまま政策として実現できるようなものになるのではと思っています。
脇田准教授 ほかにメインセッションとしてイー・モバイル代表取締役会長兼CEOの千本倖生氏を招いて組織設計の指針について議論する「日本に求められる組織設計のイノベーション」、SFCの3人の先端研究者がシステムバイオロジー、量子コンピューティング、極小昆虫の写真撮影について語る「微小世界の最先端」などがあります。
また展示は延べ130企画ほどあり、「ファイルが勝手に消える?!」ソフトウェアの紹介や、色が変えられるテキスタイルで作った服の公開など、SFCが行っている多種多様な研究をさまざまな角度から見ることができるようになっています。
それから、ORF2007との併催イベントとして、慶應義塾大学グローバルセキュリティ研究所(G-SEC)の第1回年次カンファレンス、今年で第7回目となりレベルも年々高まっているデジタルクリエイターコンペティション「Digital Art Awards 2007(DAA2007)」、「SFC アントレプレナーアワード」も開かれます。
國領教授 ORF2006では丸の内のオープンスペースで広域開催して、非常に多くの方々に少しだけSFCを見ていただけたのではないかと思います。今年はもう1回コンパクトな会場に凝縮して、じっくり見ていただけたらと思います。
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提供:慶應義塾大学SFC研究所
制作:ITmedia ニュース編集部/掲載内容有効期限:2007年11月30日