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» 2020年06月10日 10時00分 公開

「不安が自信に変わった」 クラウド初心者が挑んだ3カ月間 ヤマハ発動機のデータ分析基盤ができるまで

[PR/ITmedia]
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 「クラウドは作ったことがなく、サーバのことも詳しくは知らない。製造のことを聞かれれば答えられますが、クラウドに関しては初心者でした。そんな私たちが世界中のオートバイのデータを1カ所に集めて分析し、最終的に世界中の拠点の担当者が参照できる仕組みを作れるかどうか、プロジェクトの発足当初は不安でした」

 ヤマハ発動機株式会社の山本剛氏(生産本部 生産戦略統括部デマンドチェーン革新部 情報戦略グループ 主事)はそう打ち明ける。山本氏らはクラウドサービス「Microsoft Azure」上に新たにデータウェアハウス(DWH)基盤を構築し、世界中の拠点が運営する各種システムから自動的にデータを収集・集計できる仕組みを整えている。

photo 左からヤマハ発動機の横山研一郎氏(生産本部 生産戦略統括部 デマンドチェーン革新部 情報戦略グループ 主務)、山本剛氏(生産本部 生産戦略統括部デマンドチェーン革新部 情報戦略グループ 主事)

 人手を介していてはデータが手元に集まるまでに長期間を要するため、市場やユーザーの動向にタイムリーに応えることは難しい。

 こうした課題を解消するため、山本氏らはデータ分析基盤を構築した。第1弾として、トライアル拠点の販売・在庫情報を集計するところからスタート。ゆくゆくは対象を各国の拠点に広げた上で、生産計画の立案のためだけでなく、社内の誰もが参照できる全社共通の情報基盤に進化させる考えだ。クラウド初心者だった山本氏の挑戦を追った。

(前編)世界中から集まるデータ、生産計画に生かせ ヤマハ発動機の革命劇

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 全世界の販売拠点から販売状況などのデータを受け取り、日本ですぐに生産計画・供給計画に反映させる──そんな理想を描くヤマハ発動機。しかし、同社の横山研一郎氏は「最新の売れ行きや在庫状況を知りたくても、人手を介していたため工数と時間を要していました」と打ち明ける。

 世界中の拠点からデータを自動的に収集し、分析できる情報基盤を構築するため、プロジェクトメンバーは奮闘した。


ノンコーディングの「Azure Data Factory」が決め手に

 開発プロジェクトが本格始動したのは、2019年8月のことだった。プロジェクトには、株式会社ジールが協力。BIやデータ活用の分野で、長年に渡り多くの企業にソリューションを提供してきたSIベンダーだ。このジールの技術者とヤマハ発動機の担当者が膝を突き合わせ、新たに構築する情報基盤に求められる要件を洗い出すための要件定義の作業を進めていった。

 このプロジェクトには、通常の開発要件には見られない特殊な事情があった。企業の業務システムの開発を進める際には、その企業のIT部門が主体となってプロジェクトを運営するのが一般的だ。しかし今回の取り組みでは導入スピードや将来的な保守運用を鑑み、システムのオーナーである生産部門(デマンドチェーン革新部)の担当者が自ら開発を進めることになった。

 しかも生産部門の担当者は、生産管理業務に関してはプロ中のプロではあるものの、業務システムの開発経験は皆無だった。不安だらけのスタートだったが、勝算も確かにあったという。プロジェクト責任者を務めた山本氏は次のように述べる。

 「Microsoft Azureのデータ統合サービス『Azure Data Factory』を使えば、ノンコーディングでデータを加工できます。これなら私たちのようなシステム開発の素人でも、データベースを構築できるに違いないと思いました。この点がMicrosoft Azureを選んだ最大の決め手でした」

photo ヤマハ発動機の山本剛氏

 各拠点からデータをクラウド上に吸い上げられる簡便なツールが整っていることは、山本氏にとって選定の大きなポイントだった。その他のクラウドベンダーのサービスとも比較・検討したが、山本氏は「(他社製品は)専門用語の羅列で正直置いてけぼりを食らった印象もありました」と話す。その点、Microsoft Azureの分かりやすさが目立ったという。

 ヤマハ発動機の社内で既にBIツール「Power BI」を導入・活用していたことも、Microsoft Azure採用の決め手の1つになった。Power BIはMicrosoft Azureと同じく日本マイクロソフトが提供しているため、製品同士の親和性が優れているに違いないと判断したのだ。

3カ月間で「不安が自信に変わっていった」

 とはいえ、いくらMicrosoft Azureのサービス群がユーザーフレンドリーだとしても、システム開発の経験がない者がいきなり使いこなせるとは限らない。中には登場して間もないサービスもあり、日本語の技術情報が十分に提供されていないものもあった。

 設計・開発をサポートしたジールの永田亮磨氏(SIサービス第三本部 ビジネスアナリティクスプラットフォーム事業部 シニアコンサルタント)は、プロジェクト開始当初の様子を次のように振り返る。

 「プロジェクトの最終的なゴールは、ヤマハ発動機の方々が直接データベースを開発するとともに、運用開始後も私たちの手を借りることなく、自分たちで直接データベースを運用できるようになることでした。そこで、Azure Data Factoryをはじめとする各種PaaSをヤマハ発動機の方々が使いこなせるようにするため、オンサイトで使い方をレクチャーする機会(スキルトランスファー)を設けました」

 こうした機会では、簡易なサンプルデータを用いて開発手順をレクチャーしていくのが一般的だ。しかし参加者がシステム開発に慣れていない場合、普段実務で扱っている実データとは掛け離れた形式のサンプルデータでは、ひょっとすると作業のイメージが明確に伝わらない恐れもある。

 そこで永田氏らは、ヤマハ発動機が普段使用している実データをわざわざ取り寄せ、これを基に一からレクチャー用のカリキュラムを組み立てた。丸一日をかけて行うカリキュラムを、2019年9月と10月に2回実施。このおかげで、ジールからヤマハ発動機に対するスキルトランスファーがスムーズに運んだという。

photo ジールの永田亮磨氏(SIサービス第三本部 ビジネスアナリティクスプラットフォーム事業部 シニアコンサルタント)

 2回のレクチャーを終えた後は、山本氏が自力でデータベース構築の作業に当たったが、不明な点が出てきた際には都度ジールのサポートを仰いだ。ここで大いに役立ったのが、日本マイクロソフトが提供するコラボレーションプラットフォーム「Microsoft Teams」だった。

 「Microsoft Teamsの画面共有機能やビデオチャット機能を使えば、ツールの操作方法などを、資料ではなく実際の画面を共有しながら事細かに説明できますから、正確かつタイムリーな技術サポートを提供できました」(ジールの永田氏)

 ヤマハ発動機の山本氏は「画面を共有しながらサポートをしてもらったことで、『ここでこういう記述をすると、思い描いた通りにデータを加工・分析できる』というイメージをつかめました。スキルトランスファーやTeamsでのフォローを受け、不安が自信に変わっていくのを感じました」と振り返る。

 「9〜10月のスキルトランスファーが終わってからは、毎日1人で作業を進めていく期間でしたが、分からない箇所はすぐに回答を得られたので『こんな簡単に作れるのか』と思えました。その積み重ねが自信に変わっていったのだと思います」(山本氏)

「社内でスキルトランスファーできる立場に」

 こうして作り上げたデータ分析基盤の全体構成は次の通りだ。

photo システム構成のイメージ

 まず、ヤマハ発動機の各拠点で運用している販売管理システムから小売りや在庫に関するデータを、Microsoftが提供する「AzCopy」というユーリティリティプログラムを使って、オブジェクトストレージサービス「Blob Storage」にアップロードする。このデータに対し、Data Factoryを使って加工を施した上で、リレーショナルデータベース「SQL Database」に格納。ユーザーはこのデータベースにPower BIを通じてアクセスし、さまざまな切り口からデータの集計や分析を行える。

 これらMicrosoft Azureの各種PaaSを組み合わせたシステム全体の設計や構築は「極めて短期間のうちに完了した」と永田氏は話す。

 「これらのPaaSにそれぞれ適切な設定を施すだけでシステム全体を構成できますから、作業自体はわずか2〜3週間で済ませることができました。実際にオンサイトでレクチャーする中で、ヤマハ発動機の山本さんに実際のデータベースの構築やデータのロードなどの作業を行っていただきました」(永田氏)

 ここで一工夫が必要だった。ヤマハ発動機の社内環境とMicrosoft Azureのクラウド環境を結ぶネットワークの設定が「一番課題になった」(永田氏)という。社内環境からクラウド上のSQL Databaseに直接接続するにはネットワーク設定を大幅に変更する必要があり、デフォルト状態のままではうまくつながらなかったのだ。永田氏らは知恵を絞り、SQL Databaseに直接アクセスする代わりに、Power BIの「データフロー」という機能を間に挟むことで、間接的にアクセスできるようにした。

 こうした細かい調整を挟むことで、大きなトラブルを回避。結果的には開発作業を開始してから3カ月後にはデータベースの構築を終え、本番運用可能な状態までたどり着いた。2020年5月時点では、まだ一部の拠点のデータのみを収集している段階だが、これから徐々に適用範囲を広げていくとともに、今後はヤマハ発動機の各海外拠点を横断する全社共通の情報基盤へとパワーアップさせる予定だ。2019年には全社の統合基盤を作り上げる取り組みも始まっている。今回デマンドチェーン革新部で構築したDWH基盤も最終的にはこの統合基盤に合流していく計画だ。

 山本氏は「達成感がありました」と笑顔を見せる。「クラウドサービスを利用してレクチャーを受ければ、知識がなかった私でも仕組みを構築できました。Power BIという見せる道具もそろっていて、あっという間に可視化も可能です。やりたいことがあれば、すぐに取り組める環境が整いました」と話す。

 今後は、他のメンバーにノウハウをレクチャーし、属人化を防ぐ取り組みを進めているそうだ。山本氏は「以前ジールの永田さんからいただいた資料に覚えたことを書き込んで、知識を蓄積・整理しています。これらを社内でスキルトランスファーができる立場になりたいです」と意気込んでいる。

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