時代は“脱ハンコ”へ コロナ禍で進む「電子契約/電子署名」の将来 慶応大の手塚教授に聞く

» 2021年08月17日 10時00分 公開
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 新型コロナウイルスのまん延に伴い、“ニューノーマル”な行動様式が求められている。企業活動においても、全員がオフィスに出社して仕事をするのではなく、リモートワーク/テレワークといったワーキングスタイルが浸透しつつある。

 こうした背景から、企業同士の契約についてもオンラインや電子署名による「電子契約」を利用する企業が出てきた。これを後押しするように、政府や各省庁も“脱ハンコ”を想定した各種ガイドラインを公開するなど、電子署名が普及する下地が作られている。

photo 手塚悟教授(慶應義塾大学環境情報学部)

 押印するために出社する──そんな非効率な仕事のやり方を取りやめ、業務効率化が期待される電子契約/電子署名だが、どうしても紙の書類や“ハンコ文化”という慣例を捨てきれず、本格導入に至っていない企業もあるだろう。しかし電子契約/電子署名を利用することは国際的には当たり前になりつつある。

 そこで本記事では、電子契約/電子署名の導入を検討している企業や担当者に向けて、そのメリットを紹介するとともに、普及によってビジネスに与える影響や将来性について、デジタルトラストサービスの専門家である手塚悟教授(慶應義塾大学環境情報学部)に話を聞いた。

電子契約/電子署名の機運が高まっている理由

 「こんなに状況が一変するとは、夢にも思わなかった」──手塚教授はそう切り出した。これまでも電子契約/電子署名を本格導入しようという流れは日本にもあったが、コロナ禍で後押しされ、状況がより一層進んでいる。企業だけでなく省庁についてもハンコ廃止の方向で動いている。

 日本に色濃く残るハンコ文化。手塚教授によれば、世界的に見てもかなりレアケースだという。国際的には署名、サインを用いるのが一般的だ。しかし日本では「実印」という制度もあり、ハンコが重要視されている。

 ご存じの通り、実際に使われているハンコには用途に違いがあり、「実印」「銀行印」「三文判」の3つを使い分けている。実印は法的な効力を持つハンコで、銀行印はその名の通り金融機関に登録するためのハンコだ。この3つはこれまでの商慣習上で使われてきたもので、制度も出来上がっている。

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 しかし、国際競争力の向上といった観点から、“書面”“対面”“押印”を求めてきた、いわゆる“岩盤規制”が規制改革の対象となった。紙の文化にDX(デジタルトランスフォーメーション)を起こすという意味から、「書面を電子化しなければ」という機運が盛り上がっているところに、さらにコロナ禍という事態に直面。こういった事情によって、やっと日本も契約の電子化へ本格的に舵を切りつつある。

電子データの改ざん防止にもメリットあり

 取り扱いが便利な電子契約だが、大きなデメリットもある。それはデータの改ざんだ。電子の世界であればあるほど、改ざんとなりすましの危険は高い。従来の紙で内容を改ざんするためには、物理的に手を加えるというハードルの高さがあった。

 「例えば、税務関連の書類は7年間保存する必要がありますが、税務調査に入った場合、7年前の印刷データを見るときには紙の劣化度合いも考慮するそうです。(改ざんの可能性が高い)新しい紙だと一発で分かる。しかし電子データは劣化しません。電子データを取り扱うには、タイムスタンプなどの機能がある電子署名が必要不可欠です」(手塚教授)

 電子署名が付加されていれば、いつ誰がそのデータを作ったのかが明確で、1ビットでも改ざんされれば、すぐに判明する。

 さらに電子契約の信頼性を高める1つの仕組みとして「eシール」と呼ばれる仕組みの利用が検討されている。契約に関わる電子文書の発行元や内容の真偽を証明するために“発行元署名”として付与するものだ。

 本人の意思を伝えるのが電子署名や電子契約であるのに対し、どの企業/組織から(その文書が)出たのかを明らかにするもので、総務省はいわゆる「角印」に相当すると定義づけている。

 このeシールは、EU加盟国で電子商取引における信ぴょう性とセキュリティを保護するための法規制「eIDAS」(イーアイダス)で規定されたもの。国際連合国際商取引法委員会(UNCITRAL)でも国際的なレベルでの議論が行われており、今後は電子署名をつけたデータのやりとりにおいて、eシール同様の国際標準が作られていくだろう。

 このeシールの活用について手塚教授は、「今後は電子文書の改ざんに対応するために、サーバを通じて発行される文書などには全て付与してもいいくらいのものだと考えています」と期待を寄せる。

電子署名普及への問題点

 多くのメリットがある電子契約/電子署名だが、なぜこれまで日本で普及しなかったのか。その原因は「一極集中にある」と手塚教授は解説する。

 「日本では電車で1時間も乗れば取引先に行けますが、米国では東海岸と西海岸で時差が3時間もある。これでは実際に会うことは非常に大変です。こういった事情で電子化が当たり前のように進みました」(手塚教授)

 特に日本は「原本として用意するのは紙」という制度が強く残っており、「いくら電子化が進んだとしても、最後は紙が必要なのであれば最初から紙でいい」という声が根強かった。企業が法的に保存しなければいけない書類も紙が必要になるなど、電子化につながらなかったのが現状だ。

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 さらに手塚教授は、日本の場合は当事者同士で契約するという方法と、立会人(電子契約/電子署名のサービスを提供する事業者)が当事者に代わって署名を行う方式などが混在し、混乱を招いているのではと危惧する。

 特に立会人方式は、その立会人(事業者)が信頼できるかをしっかり見定める必要がある。「大きな金額が伴う契約では、その信頼性を疑うこともあるかもしれない。今後は政府としてもトラストサービスを整備、認定する仕組みが必要になるでしょう」(手塚教授)

 そもそも電子契約/電子署名は、ここ最近になって登場した最新技術というわけではない。2000年ごろにはすでに法律的な整備もなされていた。しかし普及しなかったのはソフトウェアの設定やユーザーインタフェースの使い勝手が良くなかったことも原因の一つだという。電子署名は「コストがかさんで面倒」だと考える企業も多く、市場も広がらないという負のスパイラルに陥っていた。

 手塚教授は、仮に政府が音頭を取ってトラストサービスの認定制度など整備するとしても、アプリケーションレベルでの認定は競争がそがれるので好ましくないと話す。「ITは次々と新しいものが生まれていくべきものです。(サービス事業者の)活力をそぐような規制は避けるべきでしょう」(手塚教授)

 電子契約/電子署名サービスの発展に向けて、トラストサービスを提供する事業者側の柔軟性が高い状況は好ましい。一方で、企業の運営に関わるような重要な契約はどのサービスを使うべきなのか。利用する側はリスク管理を含めて電子署名サービスを慎重に検討する必要があるだろうと手塚教授は呼びかけている。

信頼できるサービスの選択を

 このように、今後普及が確実なものになりつつある電子契約で重要な電子署名サービスを利用する場合、どの事業者を選択すべきか迷うだろう。さらにコストも考慮する必要がある。

 そこで選択肢の一つとして注目すべきサービスが、ベクターが提供する「みんなの電子署名」だ。このサービスは、国際的な電子商取引認証局監査プログラム「WebTrust for CA」を取得したグローバルサインを認証局とする立会人型電子署名サービスで、電子署名にかかる料金が無料に設定されているのも大きな特徴だ。

 WebTrust for CAとは、米国公認会計士協会(AICPA)とカナダ勅許会計士協会(CICA)による電子認証局の証明書発行審査基準および運用基準などを定めた監査規格で、この認証を得ているサービスは国際的な電子商取引の基準に基づいて適切な運用が行われていると判断できる。

 「みんなの電子署名」は公的な監査規格に適合し、信頼性をしっかりと確保しながら、利用を始めた初年度は完全無料、次年度以降のコストも「みんなの電子署名」に保管している電子ファイル1つにつき月額10円のみという破格のサービスになっている。

 電子署名の料金が無料だからといって、他のサービスに比べて機能が劣っているということもない。文書の保管の他にも、承認ワークフローやデータベースといった必要な機能がフルで使えるのも強みだ。この運用コストの低さは、企業はもちろんフリーランスや個人事業主にも心強いものとなるだろう。

 電子署名/電子契約を利用するメリットは今後ますます増えていくだろう。導入を検討しているなら、運用コストの利点と信頼性を兼ね備えた「みんなの電子署名」を選択肢の一つに加えてみてはいかがだろうか。

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia NEWS編集部/掲載内容有効期限:2021年9月22日