リモートワークによる業務のオンライン化が進んだことで、“電子署名”にスポットライトが当たっている。電子署名はその名の通り、PDFなどの文書に署名を加え、当事者以外の第三者から改ざんされていないことを保証するものだ。電子署名による文書のやりとりといえば、社外取引先との契約書などが真っ先に思い浮かぶかもしれない。しかし活躍する場所は社外だけでなく、実は社内で流通する書類などにも有効だ。
従来は書類を担当部門や上司に持ち回ってハンコを押印してもらう風景が当たり前だった。しかし、リモートワークが中心となった今はオフィスに人がいない。「紙にハンコを押す」というやり方を続けていると、社内稟議に高いハードルができてしまう。案の定、コロナ禍ではハンコを押すためだけに出社する“ハンコ出社”という言葉も生まれた。
多くの企業で問題になっている“ハンコ出社”──実は、電子署名サービス「みんなの電子署名」を提供するベクター自身も同様の問題を社内に抱えていた。現在は自社でも同サービスを利用することで改善したというが、実際にどのようなフローで課題の認識から解決に至ったのか。同社の斉藤雅志氏(代表取締役副社長)に経緯を聞いてみた。
「みんなの電子署名」はクラウド型の電子署名/電子契約サービスだ。月額固定料金は0円で、文書の作成や送信に関わる費用も0円なのが大きな特長だ。導入して1年以上経過した際の文書保管については有料となるが、電子署名の基本的な機能はいつまでも無料で使える。
そんな画期的なサービスを開発したベクターだが、実は同社も多くの企業と同じく「基本的な社内の決裁フローが電子化されていませんでした」と斉藤氏。
稟議はさまざまなプロセスで押印を必要とすることから、承認者が不在だと進行が止まってしまう。もともとの稟議フローでさえ決定の判断に相当な時間がかかっていた上に、コロナ禍で出社は週1回程度に減少。出社日に合わせて稟議が回ってくればいいが、それを外すと1週間も進行が止まってしまうこともある。
さらに承認者や署名者の行き違いが起きるといったミスが起きると、より進行が滞ってしまう。これらの問題を改善するために、ベクターは社内で自社サービスの導入を決定、2021年春には導入を完了していた。「テレワークが前提では電子署名の導入が必然でした」(斉藤氏)
特に稟議書は導入のメリットが大きかった。「みんなの電子署名」の中に用意されたテンプレートなどが使えるワークフローの機能が充実しているため、稟議を出す担当者はそれにのっとって事前に用意すれば、その後のフローをスムーズに進められる。
「稟議のスピードがコロナ禍以前よりも早くなりました。承認の基準が緩くなっているわけではなく、紙の書類では後回しになりがちな押印作業を電子化することで『早く対応しなくては』という意識に変わっているようです」(斉藤氏)
電子化によってワークフローが可視化されるようになったため、書類がどこで止まっているのかがすぐに分かるようになり、稟議書類をため込んでしまって対応を忘れたというミスも改善された。
ベクターでは電子署名を社内の稟議書だけでなく、取締役会の議事録といった用途でも活用している。取締役会で討議された内容は議事録として残すことが法令で定められているが、その中には取締役全員分の押印が必要となる。
社内にいる取締役であればすぐに回せるが、社外取締役の場合は書類を郵送して押印してもらい、返送してもらうというフローが発生する。しかし、議事録に修正が発生した場合は改めて送る必要が出てくることや、社外取締役に書類を返送してもらうことも、かなりの負担となっていた。
これらを電子署名の活用で電子化することで、こうした手間を省くことができるようになった。取締役からも「もっと早くからやれば良かった」という声が挙がっている。
電子署名には「みんなの電子署名」が採用している「立会人署名型」の他、「当事者署名型」がある。
当事者署名型ではユーザー個別に電子証明書を用意する必要がある。事前に身元確認されているため、信頼性は非常に高いが維持管理コストが大きい。
「1人当たり年間数万円以上のコストがかかる他、管理する環境を作り上げるのも大変で、トータルで月に10万円以上かかるイメージです」と斉藤氏。これを取締役会の議事録を例に当てはめてみると、取締役全員の電子証明書を用意する必要が発生し、その個別の電子証明書を維持管理しつつ、電子署名を行う環境も用意しなくてはいけなくなる。かなりのコストが必要になるわけだ。
「みんなの電子署名」は立会人署名型の電子署名のため、個別に電子証明書を用意する必要がない。作成名義人となる事業者が署名する人のメールアドレス宛にメールを送信し、そのメールを受信した人からの依頼により電子署名を事業者が行うことになる。
このため個別に電子証明書を維持管理する必要がなく、コストを削減できる。しかも「みんなの電子署名」はその運用コストが0円なので、気軽に導入できるのがいいところだ。「文書の保管についても、保管期間が1年経過した文書なら1文書あたり1カ月10円で使えます」(斉藤氏)。
上に挙げた取締役会の議事録や稟議といったものだけではなく、ほかにも活用の場面は幅広い。それは「電子帳簿保護法」への対応だ。
「みんなの電子署名」では「認定タイムスタンプの付与」「補助情報を含む検索機能」「保管庫機能の提供」が使えるため、電子取引についてのガイドラインを満たしている。(参考:電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】)。紙の原本を保存する必要がなく、全ての文書をPDFで保管できるようになるため、コスト削減につながる。ちなみに商業登記や法人登記のオンライン申請で、添付書面に使用する電子証明書としても機能する。
なお、「みんなの電子署名」では、ユーザーが意識しなくても細かくタイムスタンプが記録されており、文書の改ざんについてもしっかりと対策されているため、コーポレートガバナンスの確保という視点でも役立つだろう。
このように、ベクター自身が自社のサービスを社内で活用している。実際に使うことで分かる改善すべき事柄も積極的に取り入れることで常にサービスを改善している動きもある。
「細かいところは公表していませんが、ほぼ毎週何らかの改良アップデートを行っています。社内からの要望は具体的かつ詳細に話を聞けるので、改善に効果的です。社内からの要望は対外的にも重なる部分が多いため、社外のユーザーにもメリットが大きいと感じています」(斉藤氏)
こうした要望を受けて改善した一例が、管理者向け権限の改良だ。従来は文書の秘匿性を重視するため、ワークフロー中は当事者以外が文書の状態を確認できない仕様だった。しかしアカウント管理者がどんな文書が回っているのか確認できないという不満となっていた。現在はアカウント管理者が社内のフロー中に文書の状態を確認できるようにしたことで、管理性を高められた。
アプリやサービスというものはどうしても開発のしやすさを重視し、作る側の希望を優先しがちになることも多い。このようにユーザーの要望に寄り添ってサービスの完成度を高めていく気概が同社にはある。
電子署名を導入することは、既にある社内のワークフローへ手を入れることになるため、それが管理部門への負担となり、ハードルを高く感じる場合も多いだろう。しかし斉藤氏は「電子署名を導入することで、自分たちが思っている以上にメリットを感じられます。導入費用や初期費用がかからず、本格導入したものと同じ内容で1年間運用できますので、使ってみると実感していただけると思います」とアピールしている。
こうしたツールの社内導入においては、担当者が試用版や機能制限版を使って試すことも多いだろう。しかし全機能を使うためにはもちろん費用が必要となり、他の機能を追加した際には、その分の料金が発生することもある。これらが“まずは試す”ことの障壁になる。
「みんなの電子署名」の場合、1年間は無料で使える他、その後の文書管理費用も1文書あたり10円とリーズナブルだ。社内でも「1年無料はやり過ぎだ」という声もあったそうだが、ユーザーからの期待を受け、その選択は間違いではなかったと斉藤氏は語る。
「既存の承認プロセスを変えるのは、精神的な部分を含めてかなりのコストがかかります。しかし電子化はそれに見合うだけのメリットがあります。今後入社してくる、電子化されていない時期を知らない人に、『そんな面倒なことをやっていたんですか』といわれるのは間違いない。数年後の姿を信じて導入していただければと思います」(斉藤氏)
コストゼロで導入できる「みんなの電子署名」、あなたも気軽に試してみてはいかがだろうか。
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