IPオンリーでネット配信に革新をもたらす スポーツライブ配信のrtvが描くビジョン

» 2024年05月28日 10時00分 公開
[小寺信良PR/ITmedia]
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 多くの人がスポーツ中継と聞いて思い浮かべるのは、テレビ局が放送する野球やサッカー、ゴルフ、駅伝といったメジャーな競技だろう。しかし今では、さまざまな競技をネット配信で視聴できるようになった。そのようなスポーツライブ配信を数多く手掛けるのが、大阪を拠点に活動するrtvだ。同社の業務はライブ配信プロデュースの他、動画配信コンサルティングや配信メディアの運営、人材育成など多岐にわたる。

 rtvは2023年、パナソニック コネクトのIPプロダクションスイッチャー「KAIROS」を中心としたリモートプロダクション用のサブ(サブ・コントロール・ルーム)を本社(大阪市)に構築した。加えて、映像伝送規格SMPTE ST 2110(以下、ST 2110)の接続機能を強化するために、NETGEARのフルマネージスイッチ「M4350-16V4C」を導入した。

 rtvの須澤壮太さん(代表取締役)に、NETGEAR製品のメリットやネットライブ配信における「AV over IP」の現状と未来のビジョンについて聞いた。

多くのプロトコルが混在する中でrtvが目指す姿

――rtvの業務内容を教えてください。

rtv 須澤壮太さん(代表取締役)

須澤氏(以下、敬称略): 当社は、アメリカンフットボールやラクロスの専門配信サービスを各連盟や協会と一緒に運営しています。

 それ以外にも、地上波では放送されないスポーツの配信メディアやバスフィッシングのライブ配信サービスを運営しています。

 これらの業務を通じて当社が目指すのは、ライブ配信の技術とアイデアを融合させてマイナースポーツやローカルスポーツの新しいファンを生み出すことです。

――rtvのシステムは、AV over IPの良さをコンパクトに引き出している印象を受けます。こだわりや工夫した点はありますか。

須澤: スマートプロダクションとリモートプロダクションに分けて取り組んでいます。スマートプロダクションは、Vizrt(旧NewTek)の「TriCaster」やBlackMagic Designの機材を使用しています。放送機材に比べると安価ですが、それらを使ってクオリティーの高い映像を作れることが当社の強みです。

 2023年にはリモートプロダクションの体制も整えました。システムインテグレーターのアスヒラクに依頼して、KAIROSを中心としたサブを構築しました。

さまざまなニーズに対応できる体制を構築(提供:rtv)

 目的は2つあります。一つは配信数を増やすための受け皿を構築するためです。マイナースポーツやローカルスポーツの配信は、テレビ放送のように一つ一つを高いクオリティーで制作するよりも、ある程度のクオリティーを担保しつつできるだけ安価により多く配信した方がユーザビリティは高くなると感じています。

 もう一つはニーズの変化です。従来のライブ配信サービスは「取りあえず『YouTube』で流しておこう」といったものが多かったのですが、収益化の要望が増えてきました。その中で、配信の安定性やトラブル対応まで一極集中できるシステムが必要になってきました。これらを考慮してサブを構築しました。

配信の安定性などを考慮して構築したrtvのサブ(提供:rtv)

――現場に行くプロダクションではなく、リモートプロダクション独特のメリットがある、ということでしょうか。

須澤: 例えば、ゴルフ配信はコストがかなりかかります。アマチュアゴルフや小中学生のゴルフ大会などはそこまで観客はいませんが、それでもコンテンツ化しておきたいというニーズは一定数あります。そのニーズに対応するため、当社は通常のテレビ中継のおよそ5分の1の金額で、さまざまな“飛び道具”を使ってコンテンツ化しているのです。

 IP化の一番のメリットは、サブ内にシステムの拡張性を持てる点です。近年は、ダークファイバーを使わなくても既存のインターネット回線で高品質な映像を送れるようになりました。安価なエンコーダーなどを駆使して、それらをリモート制作できる仕組みを構築したかったのです。

――多くの伝送プロトコルを扱う中で、今回はNETGEARのスイッチでST 2110接続を強化されました。ST 2110を使うメリットをどのように考えていますか。

須澤: rtvはKAIROSを2台導入しています。現場の要件に応じてインプットやアウトプット数を増やさないといけないときに、ST 2110経由であればSDI分配器を使わずマルチキャストで行けるため、ルーティングや分配がしやすいのです。いずれは音声システムも含めてST 2110で入る仕組みを構築したいと思っています。

――現状はネットワーク側からさまざまなフォーマットでデータが届いていると思いますが、KAIROS側で一度受け止めるということですか。

須澤: その前段で、Haivisionのフォーマットコンバーターをかませています。そこからSRTやNDI、RTP、ST 2110といったフォーマットで出力しています。

――フォーマットはどのような基準で選択していますか。

須澤: KAIROSで受けるときには、ST 2110やSRTで受けています。モニターで監視するだけの場合はNDIで出したり、直接現地から受けてきたものを監視だけしてストリーミングサービスに出す場合はRTPにしたりと、ケース・バイ・ケースで使い分けています。

必然だった、M4350-16V4Cという選択

――NETGEARのST 2110対応モデルとして最新型のM4350-16V4Cを導入した理由は何ですか。

須澤: 配信のシステムからSDIをなくしたかったのです。オフィスの広さも限られていますし、設備の機材を減らしたいと考えていました。複数の機材に対してルーティングをする際に、ビデオルーターではなくネットワークのスイッチだけで対応するなど、シンプルにしたいと思っていました。

 ST 2110対応製品は今までとても高額でした。当社が目指すクオリティーとコストのバランスを考えると、M4350-16V4Cはコストパフォーマンスが良いと感じました。

M4350-16V4C ST 2110対応フルマネージスイッチ(VSM4320C)

 もともとrtvでは、NETGEARのスイッチを持っていました。そのUIも非常に分かりやすいです。ネットワークエンジニアがいないと設定できない機器もありますが、NETGEAR製品はプリセットも含めて簡単に操作できる状態が作られています。映像業界とインターネット業界の微妙な境界線にいる当社にとっては非常に助かっています。

 当社にとって大手ネットワーク機器メーカーの製品はオーバースペックだと感じていました。中小規模に適した設備を構築するときに、NETGEAR製品は性能とコストのバランスが良いと思います。

――rtvにとって「価格を抑えつつさまざまな場面で使えるシステム」が1番の注力点なのですね。

須澤: そういう意味ではNETGEARのスイッチが良かったのです。やりたいことがあるときに、設定変更に時間をかけず思い付いたらすぐ実行に移せるのです。

リモートプロダクションを突き詰めていくには

――リモートプロダクションシステムは、今後どう進化すると思いますか。

須澤: 現状のリモートプロダクションは、出先のカメラを遠隔で動かしているというイメージです。これからは拠点に依存しない映像制作やライブ配信、中継映像制作が主流になっていくはずです。今後は、サブを地方に作ったりさまざまな事業者と横連携したりすることも考えられます。通常は中継車で現場に行く必要がありますが、IPでつながれば各現場の多様な案件を同時に受け渡すこともできるはずです。

 将来的には、実況アナウンサーや解説者も自宅から出演できるでしょう。このような新しい働き方も推進したいと思っています。

――そうした横連携は欧州などでは盛んに進められていますが、日本では具体的なメリットが見えてこなかった部分があります。その点はどう思いますか。

須澤: 放送局や制作会社などが規模の大きい中継をする場合、現場に出向いた方が安心という考えはあると思います。しかし当社の注力領域は規模の小さいものを映像コンテンツ化することです。

 それくらいの規模であれば、自宅からPCで映像を送って、ディレクターにスイッチングをお願いして戻してもらうこともできるはずです。それが実現すれば、よりコストパフォーマンスの高い映像制作が可能になります。そのような環境を実現するためのトライアルを進めているところです。

 将来的には、「スローはこの拠点で」「CGはそっちで」というように、リモートプロダクションのサブも拠点を分割したいと思っています。実は、当社はコメンタリーを別の拠点で手掛けています。東京オフィスでコメンタリーを収録し、大阪オフィスでスイッチングやテロップ付けをしています。

――作業拠点が別々になると、映像技術者がネットワーク設定を調整する必要が出てきますよね。自分たちの知識の範囲でできるかどうかがポイントになりそうですね。

須澤: まさにそう思います。拠点を分ける場合の機器選びは、機能面はもちろん標準設定のプリセットをメーカーがしっかり検証しているかどうかが重要です。NETGEARのProAVシリーズやST 2110のスイッチもそうですが、分かりやすさや“とっつきやすさ”が重要だと思います。それがあれば、新しいシステムやサービスを展開しやすくなるはずです。

rtvで使用しているNETGEARのST 2110対応モデル「M4350-16V4C」

――最後にrtvとしてのビジョンをお聞かせください。

須澤: 繰り返しになりますが、当社が目指す姿は、スポットが当たらなかったものを世の中に発信し、動画配信のビジネスとなってファンの人たちに価値を感じてもらうことです。それはスポーツに限らず、一般企業や自治体と共に取り組む案件など全てに当てはまります。

 ビジョンを実現するためには、ライブ配信制作をよりシンプルで効率の良いものにする必要があります。技術的にも、拠点に頼らない方法を模索しながら、よりワクワクする映像を作り出す方法を確立したいと思います。

――ありがとうございました。

 筆者自身、NETGEARのスイッチは「UIが優れている」「設定が簡単」とよく耳にしていたが、それらはシステムインテグレーターにとってのメリットだと思っていた。須澤さんの話を伺って、映像コンテンツの現場では映像技術者でもネットワーク技術を扱えることが次のアイデアや展開につながるのだと感じた。

 お互いのリソースを持ち寄ってインターネットでつなぎ、一つの大きなシステムを作る方法は欧州の放送局ではすでに実用レベルにある。一方、ネット中継が伸びつつある日本では、中小規模の事業者同士が連携できる仕組みのニーズが高い。現実問題として、ネットワーク技術者が今から映像技術を学ぶのは時間がかかり過ぎるため、映像技術者がネットワーク技術を学んだ方が早いはずだ。

 映像技術者が簡易システムを組む場合に、システムインテグレーターにセットアップを依頼するのは非現実的だ。自分で組んでも、トラブルが発生したら映像技術者だけでは解決が難しい。そんな中で、検証済みのプリセットが多数用意されているスイッチがあるのは心強い。

 AV over IPの世界では、ネットワークスイッチは「足回り」であり、決して目立つところではない。しかし、そこがしっかりしていないと仕事にならない。リモートプロダクションの拡がりとともに、NETGEARのスイッチは“定番機器”の扱いになっていくのではないか。そして今後は、IP映像機器もNETGEARで検証されているかどうかが選択基準になることも十分あり得るだろう。

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提供:ネットギアジャパン合同会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia NEWS編集部/掲載内容有効期限:2024年6月20日