月と地球を結ぶ260Mbps──「アルテミスII」を支える通信技術たち
NASAが4月1日(現地時間)に打ち上げた月探査ミッション「アルテミスII」の有人宇宙船「オリオン」。ミッションに必要な通信からライブ映像まで、地球との通信を2段階の無線ネットワークと、有人月探査ミッションとして史上初のレーザー光通信システムが支えている。
打ち上げから月遷移軌道への噴射前までの通信を担うのは「Near Space Network」(近宇宙ネットワーク)だ。NASAゴダード宇宙飛行センターが管理し、地球上のグラウンドステーションと中継衛星を組み合わせてオリオンと通信する。月遷移軌道投入噴射後は、ジェット推進研究所(JPL)が管理する「Deep Space Network」(深宇宙ネットワーク)に移行する。カリフォルニア州、スペイン、オーストラリアの3拠点に設けた大型パラボラアンテナ群が、数十万km先のオリオンとの接続をほぼ途切れなく維持するという。
これら無線ネットワークが使う電波通信は長距離ではデータ転送量に限界があるとされている。その制約に対応するためアルテミスIIには、MIT Lincoln LaboratoryとNASAゴダード宇宙飛行センターが共同開発したレーザー光通信システム「Orion Artemis II Optical Communications System」(O2O)を搭載した。有人の月探査ミッションでレーザー光通信を実証するのは初としている。
O2Oには「MAScOT」(Modular, Agile, Scalable Optical Terminal)と呼ばれる中核の端末がある。サイズは「猫ほど」としており、4インチ口径の光通信用望遠鏡(光アンテナ)を2軸ジンバルで支える構造を採用している。ジンバルが望遠鏡を地上局に向けて精密に指向制御することで、赤外線レーザービームを地球上の受信局に正確に届ける。
科学データ、手順書、画像、フライトプラン、乗員の音声通信などを最大260Mbpsで地上に伝送でき、月面からの4K高精細映像の送信にも対応するという。NASAはレーザー光通信システムの実証実験で、従来の無線と比べて100倍以上のデータ転送を確認したとする。
日本時間7日の早朝には、月の裏側を通過した際に約40分間の通信途絶(ブラックアウト)に遭遇している。これは電波が月に遮られるためで、アポロ計画から続く制約だ。オリオンが月の裏を通過すると、深宇宙ネットワークが信号を再取得し通信は無事復旧した。
これに対応するため、NASAは将来のアルテミスミッションに向け、月を周回する中継衛星「Lunar Communications Relay and Navigation Systems」(LCRNS)プロジェクトを進めている。民間事業者と連携する枠組みで、2024年にIntuitive Machinesを最初の商用サービス事業者として選定している。これにより、月の裏側でのブラックアウト解消を目指す。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
個人向けGeminiのモデル選択が厳格化 無料ユーザーが使えるのは「Flash-Lite」のみに
-
2
「Androidのマイナンバーカード」提供へ 20日から 物理カードなしでも本人確認など可能に
-
3
「OpenAIの文化は壊れている」──安全性報告書を統括した従業員が退社し、寄稿
-
4
タイムズカー漏えいで集団訴訟の動き、登録3000人弱 呼び掛けた弁護士に聞いた──「謝罪で済む案件ではない」
-
5
再び浮上した「クレカ表現規制問題」 クリスタやpixiv FANBOXの騒動からマンガ家が感じた不安と焦り
-
6
免許証の悪用防ぐ届出集中、CIC・JICCで手続き遅延 タイムズカー情報流出直後に
-
7
「アバハウス」全顧客の情報漏えいか 会員・受注DBに不正アクセス 「不審な返金メール届いた」報告で判明
-
8
第一生命に不正アクセス 従業員情報12万人分漏えいか 退職者も対象
-
9
「現場任せのAI活用」が失敗するこれだけの理由 経営層がすべき“頭の中”の言語化とは
-
10
ローソンのメールサーバが踏み台に、不審メール約70万件送信 件名「RE」など
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR