アルゴリズム検索はもう限界か
インターネットの進化を振り返ると、その発展の過程はニューヨークのマンハッタン島の歴史とよく似ている。どちらも最初に住所システムが作られた。片や碁盤目状のストリート(東西方向)とアベニュー(南北方向)、片や8ビットの数字で表されるツリー構造のIPネットとサブネットだ。この2つの体系的な住所システムは、どちらも後に、名前による場所の表記が組み合わされた。前者では地下鉄の駅名、後者ではDNSディレクトリだ。
だが現状では、この豊かで多様などちらの空間でも、そこに詳しい人以外が一般に目にするものは、そのリソースのごく一部に限られてしまっている。よそからニューヨークを訪れる人は観光ガイドに相談するし、一般のインターネットユーザーは、Googleが検索結果の最初のページに表示するものしか見ないからだ(4月26日の記事参照)。どちらの場合も、見えない力が選択肢を狭め、ほとんどのユーザーは排除された選択肢の存在を知るよしもなく、ましてやそれらの選択肢を実際に利用することはない。
人々は実世界では、サイバースペースで偏ったアドバイスを受ける場合と比べて、他人の利害に影響されることにずっと敏感だ。あなたはタクシードライバーから特定のレストランを熱心に勧められたら、そのドライバーはそこに顧客を連れて行くことで、紹介料を受け取っているのではないかと疑うだろう。
検索エンジンが行う処理は、一見合理的なものに思えるが、Googleのページランクアルゴリズムのようなものに基づいて操作が加えられており、検索エンジン企業、そしてほかの誰かの利益になるバイアスがかかりがちだ。だが、そのバイアスの性質やメカニズムは、ほとんどのユーザーにはまるで見えない。
「search engine optimization(検索エンジン最適化)」という言葉でググると、6500万件近くヒットする。これらのヒットしたサイトでは、インターネットの機能のルールを故意に悪用してユーザーを狙った場所に誘導することの理論的な可能性や、そのことへの倫理的な反発が語られているわけではない。それを効果的に実行する方法と手段が語られているのである。
私はGoogleのボイコットを勧めているわけではない。まったく逆だ。例えば以前、地元の交響楽団の幹部会でPRの方法についてのブレーンストーミングをしたとき、私はポスターや広告に交響楽団の面倒なURLを載せるのはやめて、代わりに「『Beach Cities Symphony』とググってください!」とメッセージを掲載することを提案した。その方が覚えやすいし、交響楽団がアピールしたい層にとって分かりやすいからだ。
しかし、5月にGoogleのアルゴリズム変更(1月に行われた同社のいわゆるBig Daddy(新しいデータセンター)への移行に伴う技術刷新)の副作用をめぐって大騒ぎがあったことは、Webでのプレゼンスを確保するために、あるいは十分な情報に基づいて素早くWebのリソースにアクセスするために、Googleを利用している人にとって警告となるだろう。インデックスと検索結果の完全性と一貫性や、さらには検索処理の最低限の正確性(特定の単語を並べて検索するだけで、フレーズ検索が行われるといったような)までもが、保たれなくなる恐れがあるのは明らかだ。
検索エンジンとゴミサイトのいたちごっこは、結局はゴミサイト側に分がありそうだ。サイトが爆発的に増加し、コンテンツの複雑さも増す中で、より優れたアルゴリズムを開発し、実用的なスピードで実行できる環境を運用していくには、人的リソースも資金も幾らあっても足りない。ゴミサイトは、広く共有されているツールや技術を使ってただ同然のコストで立ち上げることができる。
となると、専門の研究者にも役立つ無料の検索エンジンが使える幸せな時代がいずれ終わりを迎え、短い年月だったと振り返られることになるのは確かなようだ。学術分野などの専門家がタブロイド紙ではなく、掲載審査のある専門誌を頼りにするように、企業の専門家も、特定分野ごとに第一級の情報源の名刺を集めている「メタ情報源」とも言える人たちの価値を再発見するだろう。
Googleは5月に発表したGoogle Co-opなどにより、同社のブランド価値を、現在形成されつつある階層化された検索市場でも維持することを目指している。Google Co-opは、専門家から提供された情報を反映した検索結果を提供するものだ。
しかし企業は、アルゴリズム検索の限界への認識が広がっていることを利用して、自社のサイトを、顧客やパートナーが関心を持つ分野において、真っ先に参照される権威ある情報源として確立するとよいだろう。
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