Microsoft、「Windows Azure」の製品版を21カ国でリリース
Windows Azureがすべての国々で正式サービスに移行した。Microsoftは1500億ドル規模に拡大するといわれるクラウド市場に本格的に参入する。
クラウドコンピューティング分野への進出に向けてMicrosoftが投入した「Windows Azure」プラットフォームは、2月1日から世界21カ国で製品版が利用可能になった。今回の正式リリースに伴い、Microsoftは2月2日午前12時(グリニッジ標準時)からWindows Azureおよび「SQL Azure」に対する課金を開始し、これにより1月いっぱいまで無料サービスが提供されていたすべての国々で同時に正式サービスに移行した。
Windows Azureチームのブログには「本日から世界各国の顧客およびパートナーは、Windows AzureとSQL Azureを利用した商用アプリケーションおよびサービスを立ち上げ、総合的なサービス保証契約に基づくサポートが受けられるようになる」と記されている。「商用会員に登録したユーザーは、Windows AzureプラットフォームのAppFabric Service BusとAccess Controlを2010年4月まで無償で利用できる。また“Project Dallas”も、引き続きCTP(コミュニティー技術プレビュー)として無償で提供される」
ユーザーがWindows Azure CTPアカウントをアップグレードしない場合には、サービスが停止され、Windows Azureストレージはリードオンリーとなり、SQL Azure CTPのユーザーは新しいデータベースを作成できなくなる。アップグレードされなかったSQL Azure CTPアカウントとWindows Azure Storage CTPアカウントは、それぞれ3月1日および4月1日までに削除される。「製品版にアップグレードする予定がないのであれば、これらの期日までにデータをエクスポートすることが大切だ」
1月28日に行われたMicrosoftの収支報告で、同社のピーター・クラインCFO(最高財務責任者)はアナリストと報道関係者に対して、「開発者はAzureのツールとプロセスを利用することにより、クラウドにスムーズに移行できる。このプラットフォームは当社にとって2010年の最重要製品の1つだ」と語った。
Azureプラットフォームは3つの部分で構成され、それらが連係してWebアプリケーションとサービスを実現する。3つの構成要素とは、Windows Azure(サービスとしてのOS)、SQL Azure(クラウドベースのリレーショナルデータベース)、そしてセキュアな接続およびアプリケーションの連係アクセスコントロールを実現する.NETサービスだ。
Azureモデルの開発には、Microsoftの検索エンジンであるBingが大きな影響を与えたようだ。Bingのインフラは、データセンターの自動管理を可能にする「Autopilot」プラットフォーム上に構築されている。
「Autopilotは素晴らしいプロトタイプだが、汎用的に利用できるプラットフォームとして開発されたわけではない」――Microsoftのサーバ&ツール部門のボブ・マグリア社長は2009年11月17日、ロサンゼルスで開催の2009 Professional Developers Conferenceのキーノートスピーチでこのように説明した。「そこにAzureが登場したのだ。AzureはAutopilotのアイデアを、広範に利用できるアプリケーションプラットフォームという形で汎用化したものだ」
Azureは2009年末までCTPとして提供され、今年1月1日から本格的なサービスが開始された。MicrosoftはAzureの採用を開発者に促すために、2010年1月末まで同プラットフォームを無償で提供した。
Azureサービスでは、従量課金方式、サブスクリプション、ボリュームライセンスという3種類の支払い方式が用意されている。いずれの方式でも、ユーザーは受信データについては1Gバイトに付き10セント、送信データについては1Gバイトに付き15セントの料金を支払う。「Consumption」(従量課金)モデルでは、インフラ利用1時間に付き12セントが課金される。ストレージの価格は1Gバイトに付き15セント。SQL AzureデータベースのBusiness Editionの価格は99.99ドルとなっている。
Microsoftでは、GoogleやAmazon.comなどが提供するクラウド製品にAzureで対抗し、クラウド市場でシェア獲得を狙う考えだ。アナリストらによると、同市場は1500億ドルの規模に拡大する可能性があるという。Microsoftのそのほかのクラウド関連構想として、Windows Server 2008 R2ではハイパーバイザーのHyper-VがAzureでサポートされるほか、パートナーがアプリケーションを宣伝・販売できる「Microsoft Pinpoint Marketplace」が開設される予定だ。また、「Windows Identity Foundation」のRTM(製造工程向けリリース)版では、開発者はクラウド型アプリとオンプレミス型アプリの両方に簡単にアクセスする機能をユーザーに提供できる。
開発者を対象としたこれらの構想に加え、Microsoftではエンドユーザーエクスペリエンスの分野でもクラウドに進出すべく、自社のプロダクティビティアプリケーションの機能縮小版をWindows Live登録ユーザーに提供する予定だ。これらのアプリケーションには、OneNote、Excel、Word、PowerPointが含まれる。ただし、各アプリケーションの機能をすべて利用したいというユーザーは、6月にリリース予定のOffice 2010のフルバージョンを購入する必要がある。クラウド版のOfficeアプリケーションを無償で提供するという同社の作戦は、Google Appsなどのクラウドベースのプロダクティビティスイートからの脅威の増大に対抗するのが狙いであるようだ。
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