iPad向けHTML5ベースの動画配信技術、Brightcoveが提供:Flash不要の動画配信
New York TimesやTimeなどのiPad対応Webサイトは、「Brightcove Experience for HTML5」を利用して作成されている。
米Brightcoveは、HTML5標準をサポートすることによってAppleのiPad、iPhone、iPod touchなどFlashをサポートしていない人気デバイスに高品質の動画を配信する技術を開発した。
オンラインビデオプラットフォームを開発するBrightcoveは3月29日、HTML5対応デバイスに高品質・対話型・広告対応のWeb動画エクスペリエンスを提供するためのプラットフォーム「Brightcove Experience for HTML5」を発表した。この新しいプラットフォームソリューションは、42カ国の1000社以上のBrightcoveの顧客企業に無料で提供される。これにより全世界のメディア企業や広告業者は、Apple製品などの人気の高いコンシューマーデバイスにも容易にオンライン動画を配信することが可能になるという。
Brightcoveでマーケティングを担当するジェフ・ワットコット上級副社長は、この発表に関するブログ記事で次のように述べている。
Apple iPadの発売が近づくのに伴い、動画再生方式としてHTML5だけをサポートするこれらのデバイス上で素晴らしい動画エクスペリエンスを提供するには何が必要かというアドバイスを求める顧客からの問い合わせが増えてきた。これらの顧客はiPadの可能性に期待する一方で、この環境で素晴らしい動画エクスペリエンスを提供するには何が必要なのだろうかという不安も抱いている。どんなトレードオフや落とし穴が潜んでいるのか、そしてこの新しい状況を探索するのを支援するためにわれわれがどんな取り組みをしているのかを彼らは知りたがっている。
Flashの開発元である米Adobe Systemsの元幹部だったワットコット氏は、さらに次のように続ける。
世間ではFlashバッシングが広がっているようだが、Brightcoveではそういった議論にくみするつもりはない。HTML5をサポートするためにわれわれがすべきことは、Flashを弱体化させることではなく、当社の顧客の問題を現実的に解決することだ。Flashは当社および当社の顧客にとって重要なプラットフォームであり、今後もそれは変わらない。今日、ほとんどのオンライン動画はFlashによって実現されており、当分この状況が続くだろう。当社は非常に強固な戦略的提携をAdobeと結んでおり、Flash Platformを中心としたイノベーションの最先端に立つことが当社ならびに当社の顧客の利益になると確信している。HTML5に対するわれわれの取り組みは、Flashへの取り組みと並行して進められており、これを排除するものではない。
「Brightcove Experience for HTML5は、インテリジェントなデバイス検出、プレイリストのレンダリング、H.264でエンコードされたビデオコンテンツの再生をサポートする」とBrightcoveの発表文は述べている。「顧客は現在、iPadに対応したWebサイトを構築するためにBrightcove Experience for HTML5を使っている。Brightcoveでは今年中にBrightcove Experience for HTML5を拡張し、プレーヤー環境のカスタマイズとブランディング、広告、分析、ソーシャル共有など、ほかのプラットフォーム向けのBrightcoveエクスペリエンスソリューションが現在提供している機能をフルサポートする予定だ」
さらに発表文は次のように続ける。
Brightcoveの顧客は既にBrightcove Experience for HTML5ソリューションを利用して、New York TimesやTimeなどのiPad対応Webサイトを作成している。New York TimesはBrightcoveに出資している。
「当社の顧客は、Brightcoveプラットフォームに期待されるようになった動画の品質、インタラクティブ性、マネタイズ機能を犠牲にすることなく、すべての画面に動画コンテンツを配信できるようになるのを望んでいる」とBrightcoveのジェレミー・アレアー氏は発表文で述べている。「Brightcove Experience for HTML5は、新標準の現在の再生機能と、当社の顧客がオンライン動画ビジネスで成功するために必要な機能との間のギャップを埋めるものだ」
「Brightcoveは標準に基づいてイノベーションを進め、標準を推進することにコミットしている」とBrightcoveのボブ・メイソンCTO(最高技術責任者)は語る。「Brightcove Experience for HTML5は、当社がオンライン動画分野での成功を通じて獲得したすべての知識を、この新しいオープン標準に適用する機会をわれわれに提供するものだ」
ワトコット氏は、Brightcove Experienceがパブリッシャーにもたらす可能性について次のように述べている。
さまざまな技術を自前で寄せ集めることによってビデオエクスペリエンスを構築するのに慣れているパブリッシャーにとって、Flashで実現している機能に加えてHTML5をサポートしなければならないという要求は、Web開発のコストの増加と複雑さの増大という好ましくない状況を意味する。しかしAccelのリチャード・ウォン氏が指摘するように、“モバイル分野の分断は終わることがなく、それに対処しなければならない”のだ。オーディエンスを常に最大化したいと思うパブリッシャーにとって、それ以外に選択肢はない。Webクライアントの分断化は当分、避けられない現実だ。これはIE 6の死がもたらした負の遺産だ。自前主義のパブリッシャーは、自分たちの動画をこの状況に対応させるのに忙しくなるだろう。素晴らしい可能性を持った作品が締め出されてしまう恐れもある。
Brightcoveのオンラインビデオプラットフォームを利用しているパブリッシャーの場合、展望ははるかに明るい。われわれは、同等の機能を備えたFlashとHTML5の動画エクスペリエンスを大幅な追加作業なしで提供できるようにするための取り組みを進めている。Brightcove Experience for HTML 5の狙いもそこにある。再生環境のカスタマイズ、詳細な分析データの収集、マルチビットレート配信の管理、高度な宣伝機能による動画のマネタイズといった機能を犠牲にすることなくHTML5対応デバイスをターゲットにできるようにすることが、われわれの目指している方向だ。当社の顧客は、動画配信をオンライン戦略に組み込むためのコストと複雑さを軽減するという部分でわれわれに期待しており、われわれはその期待に応えるつもりだ。
同社の発表文は次のように締めくくっている。
Brightcove Experience for HTML5は、メディアパブリッシャーが高品質の動画をあらゆる画面に容易に配信できるようにするというBrightcoveのビジョンを実現する一連の製品イノベーションで最新となるものだ。先月には、Google Android、Symbian S60、Palm webOS、Windows Mobile、Research in Motion(RIM)のBlackBerryで動画をサポートするBrightcove Mobile Experience for Flash Player 10.1をリリースした。Brightcoveはそれ以前にも、Yahoo! TV Widgets、Boxee、Roku、VUDUなどのインターネット接続型TVプラットフォームやデバイス向けの動画配信機能を発表している。
Brightcove Experience for HTML5に関する詳細は同社のサイト(英語)にある。
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