「根拠もなく規制対象を拡大」──都育成条例改正案、共産が撤回求める
都が再提出した青少年育成条例改正案について、共産党都議団が撤回を求めた。「都の青少年行政は、治安対策・取り締まり偏重から、青少年の人格形成を支援する原点に立ち返るべき」
東京都が再提出した都青少年育成条例の改正案に対し、共産党都議会議員団は12月1日、「議会で否決された案と実質的に同じものを繰り返し提出することは、都民と関係者、都議会に対する挑戦だ」として、石原慎太郎都知事に対し改正案の撤回を求めた。
声明では、都が再提出した修正案が6月議会で否決された改正案から条文の表現を変えているが、「なんら問題は解決されない」として、
(1)「非実在青少年」を削除したが、規制の対象となるキャラクターが全年齢に拡大されている
(2)規制対象を「刑罰法規に触れる」性行為の描写・表現と言い換えているが、「刑罰法規」には育成条例の淫行処罰規定が含まれることなどから、その範囲は不明確で恣意的に拡大されかねない
(3)民法によって法的婚姻が禁止されている者の間の性行為の描写・表現も規制の対象にしているが、多様な人間関係を描こうとする芸術作品や創造物にこのような規制をあてはめることは行き過ぎと言わざるを得ない
(4)再提出案は規制の対象とする性描写について「不当に賛美しまたは誇張するように」と言い換えたが、依然として恣意的な判定の危険が極めて大きいだけではなく、漫画・アニメは写実より誇張を方法としている点に特徴があり、強い萎縮効果をもたらしかねない
(5)改正案は漫画・アニメの性描写・表現が「青少年の性に関する健全な判断能力の形成を妨げる」とする論理に立っているが、この論理を裏付ける「学問的知見は見出せていない」ことは、既に前回改正案の質疑中、都の答弁によって明らかにされている
──と指摘。否決された改正案以上に規制対象を恣意的に拡大しかねず、「根拠もなく規制対象を広げて創作活動の萎縮をもたらすことは表現の自由・出版の自由という権利の重要性から許されない」とした。
また青少年のインターネット・携帯電話の利用についても、再提出案が、都による携帯電話とフィルタリングソフトの推奨制度、フィルタリングソフトを利用しない保護者に対する業者を通じての監視の強要などが残されており、容認できないとした。
その上で、青少年の育成には社会的合意と自主的努力が尊重されるべきだとし、都には青少年が性的自己決定能力や情報リテラシーを身につけるための総合的施策を具体化することが求められていると主張。「都の青少年行政は、治安対策・取り締まり偏重から、青少年の人格形成を支援する原点に立ち返るべき」としている。
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東京都は青少年育成条例改正案を修正した上で、11月30日開会予定の都議会に再提出。「非実在青少年」を削除した上で、刑法に触れる性行為や近親間の性行為などを「不当に賛美しまたは誇張」した表現を条例の対象にすると修正。
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