銃を使った犯罪が後を絶たない米国で、また痛ましい事件が起きた。テキサス州の警官が、自宅で甥の面倒を見ていた28歳の女性を誤って射殺した事件。警察が詳しい経緯の公表を渋る中で、justiceを求める声が強まっている。
「justice」は正義、公正、司法、裁きなどの意味がある。裁判所に飾ってある正義の女神のテミス像は、英語でいうと「Lady Justice」。目隠しをして天秤と剣を持つ姿は、犯した罪に相応する公平な裁きを与えるという象徴らしい。
テキサス州の事件では、署名サイトに「Justice For Atatiana Jefferson, Police Reform NOW!(アタティアナ・ジェファーソンさんのために公正な裁きを。今こそ警察改革を)」という嘆願ページが開設された。被害者のジェファソンさんを殺害した警官を殺人罪で起訴して真相を解明し、こうした事件が二度と起きないよう、警察の改革を求めている。
この嘆願のように、事件の犯人を見つけ出して公正な裁きを行うよう求めることを、「seek justice」「call for justice」「demand justice」などという。
そうした願いを託された警察や検察が、決意表明に使う常套句が「bring someone to justice」。事件発生を受けて検察や警察が発表する談話にお決まりの表現として出てくる。「必ず犯人を捕まえて法の裁きを受けさせる」という意味でjusticeを使うとカッコ良く決まるということなのだろう。
そして捜査が実ってついに犯人が捕まり、刑事事件として立件した時の発表では、「Justice is done」または「Justice has been done」という表現で「法の裁きが下された」と胸を張る。このjustice には「正義」のニュアンスがこもる。
ちなみに、英語の俗語や慣用句を皮肉や冗談混じりに解説するUrban Dictionaryでは、「Justice is done」を「オサマ・ビンラディン容疑者が殺害された時に人が言う言葉」と定義していた。
念のために補足しておくと、ビンラディン容疑者は2001年米同時多発テロの首謀者だったとされる人物。2011年に米軍の特殊部隊が殺害して、当時のオバマ大統領は「Justice has been done」と誇らしげに発表した。
国家の威信をかけた殺人を、justiceと形容して心酔するのは米国人の国民性か。一方、警官に殺害されたジェファーソンさんの姉はこうつぶやいた。「You know, you want to see justice, but justice don’t bring my sister back(公正な裁きを求めたい。でも裁きが下されても妹は戻ってこない)」
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