検索
ニュース

経理だけの問題じゃないインボイス制度の影響 混乱は事業部門にも? いまチェックしたい注意点(2/3 ページ)

2023年10月から始まるインボイス制度に向けて、各社の準備が始まりつつある。しかし、インボイス制度対応は経営にインパクトのある全社課題であり、現場の一人ひとりまで影響があることは、意外と知られていない。

Share
Tweet
LINE
Hatena

取引先ごとの交渉スタンス

 こうして取引先が適格事業者かどうかを把握したら、次からが事業部サイドのアクションになる。適格事業者に対しては特段のアクションはいらないが、丁寧な対応が求められるのが適格事業者ではない取引先だ。事業部側が取引先に対して採り得るアクションは次の3つとなる。

  1. 適格事業者へ切り替えを依頼する
  2. 非適格事業者のままなので、値下げ交渉を行う
  3. 非適格事業者だが、替えが効かない取引先であり許容する

 この際、全社一律方針を打ち出すのはNGだという点が、現場としては問題となるだろう。「数が多いと一括連絡をしたくなりがちだが、それはよろしくない。『一律にウチはこの方針だ』という伝え方はまずくて、個別に交渉した結果として選択しなくてはならない」(松岡氏)

 公正取引委員会は、取引先の免税事業者に対し課税事業者になるよう要請すること自体は、独占禁止法上問題ではないとしている。一方で、

課税事業者にならなければ、取引価格を引き下げるとか、それにも応じなければ取引を打ち切ることにするなどと一方的に通告することは、独占禁止法上又は下請法上、問題となるおそれがあります。

免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A

 としており、取引先ごとに丁寧な対応が必要となる。

 現時点で取引先が適格事業者でない場合、適格事業者の登録申請をまだ出していないだけなら待てばいいだろう。問題は免税事業者に対して課税事業者への転換を求める場合だ。免税事業者が、自主的に適格事業者に切り替えてくれれば話は簡単だ。しかし取引先にとっては免税から課税に変わるわけで、税引き後の収益が減少することになる。そんなに簡単に切り替えるところばかりではない。

 そのため、仕入税額控除が制限される分について、免税事業者の仕入れや諸経費の支払いにかかわる消費税の負担も考慮した上で、価格についても双方納得の上で合意する必要があると松岡氏はみる。

 同様に、取引先が課税事業者に替えることを拒否した場合、今度は発注側に仕入消費税税額控除が行えなくなるという損失が発生する。そこで(2)では値下げ交渉となるわけだ。こちらも双方が負担し合う中間が落とし所となるだろう。

 そして(3)は、消費税税額控除が行えず負担が増えるものの、特別な取引先であるためそれを許容するというものだ。

 こうした選択肢の中、事業部は個別に取引先と交渉するわけだ。この際の交渉も難しい。「言い方によっては下請法、独占禁止法違反になる場合がある。注意喚起はしようと考えている」(松岡氏)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る