ITで仕事は“効率化”したのに、忙しさが減らないのはなぜか考えた:NEWS Weekly Top10
先週、世界850万台のWindows端末をブルースクリーン化したおそろしい障害が起きた。IT化やDX化により、1つのシステムやツールで大量の情報をさばけるよう効率化したことで、それが攻撃を受けると全ての情報が被害にあう。効率の良さと被害の大きさは裏表だ。
ITmedia NEWS Weekly AccessTop10
7月13〜19日先週のアクセストップは、世界850万台のWindows端末をブルースクリーン化したおそろしい障害だった。修正するためには、対象PCのリカバリー作業を手作業で行うしかなく、“情シス的にだいぶ恐怖”な状況に陥った。
原因は、米CrowdStrikeが提供している、エンドポイント検知・対応型セキュリティツール(EDR)「CrowdStrike Falcon」の更新データにロジックエラーが含まれていたこと。EDRを導入するほどセキュリティ意識の高い企業が被害にあった今回の問題。ITツールやデータを“守る”難しさを感じさせる事件だった。
IT化すれど、我が仕事楽にならず
ここ最近、IT関連の大きなインシデントが続いている。KADOKAWAグループのランサムウェア被害、多くの自治体から通知書などの印刷業務を受託していたイセトー(京都市)のランサムウェア被害、東京ガス子会社への不正アクセスによる大規模な流出の可能性――。
IT化やDX化により、1つのシステムやツールで大量の情報をさばけるよう「効率化」したことで、そのツールが攻撃を受けると全ての情報が被害にあってしまう。効率の良さと被害の大きさは裏表だ。
かといってデータを切り離して管理すると効率が下がるし、セキュリティツールを入れると今度はそのツールの障害でシステムがダウンする可能性もある。効率か安全か。安全に倒しすぎると仕事が進まなくなり、アナログ時代に逆戻りしてしまう。
ここ10年ほどで急速にIT化・DX化が進み、1人の人や企業がさばける仕事の総量は激増した。だがその分、過程や結果の責任を取らなくてはならない仕事の量も激増した。働く一人一人に余裕ができたかというと、どうも、逆のような気がする。
AIで仕事「効率化」してみているけれど
筆者は最近AIを使って仕事を「効率化」しようと試みている。
調べ物やテープ起こしなどは、以前より短時間でできるようになり、効率化した気がする。とはいえ、AIをみんなが使うようになれば、AIを使った仕事のスピードが当たり前になる。その速度でこなせる仕事量を前提に世の中は回り始め、1人がかかえる仕事の量は増えていくだろう。
(関連記事:Google検索も不要に? 検索AI「Perplexity」がスゴすぎてちょっと怖い)
ITを使うことで仕事を効率化し、別の何か……より生産的な活動なり余暇なりを楽しもう、というのが、IT化の理想・建前だったような気がするけれど、効率化によって生産量を増やしても、労働者の仕事の密度がより高まっていくだけで、余裕が増えたりすることはない。
……という考え方はあまりにネガティブすぎるだろうか。
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