CES 2026
1人のBlackBerryファンが“キーボード付きスマホ”を作るまで――「Clicks Communicator」誕生の背景(1/2 ページ)
米Clicksが1月に発表した「Clicks Communicator」は、物理キーボードを搭載したAndroidスマートフォンだ。4.03インチのAMOLEDディスプレイの下部に、タッチ対応のQWERTYキーボードを配置する。シルエットが「Blackberry」を彷彿とさせるが、それもそのはず、出自はBlackBerryと色濃く関係している。
はじめにClicks Communicatorについてざっくり説明しておこう。Clicksによるとメッセージングに特化した「セカンダリースマホ」を掲げているが、Android 16を搭載し、5G通信(物理SIM+eSIM)できる立派なスマートフォンである。プロセッサは4nmのMediaTek製SoC(詳細非公開)、メモリ8GB、ストレージ256GB(+microSD)、5000万画素の背面カメラ、2400万画素の前面カメラに加え、今では珍しい3.5mmヘッドフォンジャックも内蔵する。
他にも、通知を色で知らせる「Signal LED」や、音声入力・録音に使える「Prompt Key」なども備えており、背面カバーは着脱可能。複数のカラーから選べるという。価格は499ドルで、2月27日までの早期予約では399ドル。2026年内に出荷予定だそうだ。
ClicksはもともとiPhone用のキーボード付きスマホケースなどを販売していた企業だったが、なぜキーボード付きスマホにチャレンジしたのか。米ラスベガスで開催された「CES」のサブイベント「ShowStoppers」にて、Clicksの創業者Kevin Michaluk氏に話を聞く機会を得た。
BlackBerryとの出会い
Michaluk氏がキーボード付きデバイスに情熱を傾ける理由は、彼の生い立ちと深く結びついている。
「私はカナダの小さな町で育ちました。冬は長く、周囲に人も少ない環境です。インターネット黎明期の話ですが、IRCやICQが登場したとき、私の世界は一変しました」とMichaluk氏は振り返る。「家の中にいながら、世界中の人々とつながれる。それが私の人生を変えたのです」
2005年、Michaluk氏は初めてのBlackBerryである7290を手にする。「手に持った感触、プッシュメールや『BlackBerry Messenger』(BBM)で人々と瞬時につながる能力に心を奪われました。BlackBerryは私をオフィスと机から解放してくれたのです」
この体験が、その後の彼のキャリアを決定づけることになる。
BlackBerryへの愛が止まないMichaluk氏は、手に入れた1年後にWebサイト「CrackBerry.com」を立ち上げる。「ニュースやレビューを書き、カメラを持ってBlackBerryの担当者にインタビューしていました。私は熱狂的なユーザーであり、メディア側でもありました」
CrackBerry.comは成功を収め、あらゆるスマートフォンを網羅した、数百万人のメンバーを抱える巨大コミュニティに成長していったという。
しかし、スマートフォンの勢力図が変化し、BlackBerryが衰退していく中で、Michaluk氏は大きな喪失感を味わうことになる。「私が世界で最も愛していたものを失いました。ニックネームが『CrackBerry Kevin』なのに、BlackBerryがないなんて、アイデンティティーを失ったようなものです」
19年、Michaluk氏は自身が築いた会社を売却する。そして22年から23年にかけて、新たなプロジェクトのアイデアが形になり始めた。それがキーボード付きスマホケースの「Clicks Keyboard case」だ。しかし、彼の目標は常にスマートフォン本体を作ることにあったという。
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