インタビュー

国内PCメーカーの5本指に――“新生”マウスコンピューターの未来予想図社長インタビュー(1/2 ページ)

急速な成長を続けるMCJが純粋持ち株会社へと移行し、基幹事業であるPC部門が2006年10月に分社化、マウスコンピューターとして独立した。その狙いを同社代表取締役社長の小松氏が語る。

MCJの軌跡

 欠けたチーズからしっぽが覗いたロゴでおなじみの直販PCブランド「マウスコンピューター」。その名前はPC USERの読者であれば、もちろん聞いたことがあるだろう。しかし、同社の沿革を見れば分かるとおり、この名前が広く浸透したのはマウスコンピュータージャパンの発足から数えてわずか10年に満たない間の出来事である。

 2003年にMCJへと商号を変更した同社は、翌年東証マザーズに上場、2005年には売り上げが100億円を突破し(平成17年3月期/単体)、2006年はiiyama(旧イーヤマ販売)秀和システムをはじめとする数々の企業を傘下におさめるなど、まさに破竹の勢いで拡大を続けている。

 そして2006年10月、MCJの純粋持ち株会社制移行にともない、その基幹事業であったPC製造販売部門を「マウスコンピューター」として分社化している。総合PCメーカーへと成長を遂げたマウスコンピューターの現在と未来を、同社代表取締役社長の小松永門氏に聞いた。

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「ITといえばMCJ」をめざす――拡大するMCJグループ

MCJグループでPC事業を担うマウスコンピューターの代表取締役社長 小松永門氏

――御社はここ数年で急速に事業を拡大していますが、逆に従来の“マウスコンピューター”を知っているユーザーから見ると全容が分かりにくくなっています。まずはじめにMCJグループ全体がめざしている方向性を教えてください。

小松氏 グループ全体での将来的な目標は、ITにおける企業複合体です。「ITといえばMCJ」といわれるように、ITにおけるハードウェア、そして今後はソフトウェアやサービスも含めて、複合的なソリューションを提供できる企業体になっていこうというのがグループ全体の目標です。

――そのための具体的な事業展開は?

小松氏 現在のコアになっているのはやはりPC事業です。ここ最近の変化では、昨年10月に独立・分社化したPC専業のマウスコンピューターを柱に、グループ傘下の企業が連携して競争力を高める体制を整えてきました。

 例えば、流通を担うシネックスやASUSTeKの正規代理店であるユニティをディストリビューターとしてグループに加え、PCの商材をより効率的に入手するための仕組み作りを行っていますし、同様にPCに必要なディスプレイの分野ではiiyama(旧イーヤマ販売)の買収も挙げられます。特にiiyamaの持つノウハウやブランドはディスプレイ専業メーカーとしてまだ大きな影響力がありますから、相乗効果を期待しています。

――ほかにはどうでしょう。昨年だけでも御社が買収した企業は多いですが。

小松氏 ええ。いま特に力を入れているのがサービスとサポートの強化なのですが、昨年ウェルコム(コールセンターの専門会社)をグループに加え、サポート業務を委託する形に変革しました。これで最低限、サポートの電話が繋がらないといった状況はほとんどなくなっています。もちろん、サポートには弊社のスタッフも常駐していますが、PCの知識を必要とする場面以外でのサポート品質、例えば応答率だけでなく電話の応対などですね、これも大幅に向上し、ユーザー様からの声が満足度の高いものへと変化しています。

 さらにサポート面では、ITの出版関係で大きなシェアを持つ秀和システムが加わったのも大きいですね。Windows Vistaの入門書をPCにバンドルして販売したり、IT専門用語を分かりやすい言葉に直した新しいマニュアルの監修なども行っています。

 ほかにも、アロシステム(同社とMCJはもともと“PC・JAPAN”というコンセプトでPCパーツの共同調達・共同企画を行っていた)を完全子会社化する契約を締結し、物量を上げてPC事業の拡大を図るなど、資本的な意味でも密接な協業体制を構築中です。

――PC以外では、iriver japan(旧アイリバー・ジャパン)で携帯音楽プレーヤー市場に参入するといった動きも見られます。この分野の開拓にはどういった意図があるのでしょうか。

小松氏 基本的には、PCとその関連機器という位置付けでの展開です。弊社はPCを使った音楽の質の向上を図るというコンセプトで、オンキヨー様とのコラボレーションPCを実現していますが、今度はPCから音楽を持ち出して楽しむための周辺機器も提供していく、そしていずれは何らかの形で通信系への参入なども視野に入れています。もっとも、基本的にはやはりITというくくりで、各社が協業して発展しあえるようなビジネススキームを常に意識しながら、グループ全体の拡大を考えています。

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