悪ければ悪いほどインテルは元気になる──吉田社長、2008年を総括する
インテルは12月9日に定例の記者会見を行い、同社代表取締役社長の吉田和正氏が新製品の発表が相次いだ2008年を振り返った。
インテルは2008年で創業から40年になる。吉田氏は、インテルが活動してきた長い期間において、最初は生産性の向上を求められてきたが、現在ではエンターテイメントに利用されるなど生活に身近な存在となってきたPCの役割の変化について触れ、これからも「インテルが持つ最高水準の技術と生産設備、そして技術に対する投資で将来に向かって力強く進んでいく」と述べた。
インテルは、2008年に45ナノメートルプロセスルールを採用したCPUをサーバから、デスクトップPC、ノートPC、Netbook/MID(Mobile Internet Device)といったすべてのセグメントで展開している。「2008年のインテル10大ニュース」として示されたリストにも(数字あわせのためにリストアップされた項目もあるようだが)、「Atom搭載のNetbookの普及」「Core i7発表」「Xeon7400番台発表」「Centrino 2 発表」「Atom 発表」と45ナノプロセスルールを採用したCPUが関係する出来事が並ぶ。この中で、吉田氏はNetbookの普及について「大きく展開を始めている。2台目3台目の需要以外に、このところ販売台数が落ち込んでいる携帯電話ユーザーにも期待を持たせている」という認識を示した。
新しいアーキテクチャを採用して登場したCore i7に関しては、多くの参加者で盛り上がった深夜販売イベントを紹介し、「性能に対して期待するユーザーに、さらなる性能の実現や、マルチタスクにおける性能、強力な電力管理機能といった新しいアーキテクチャの付加価値を伝えていかなければならない」と、強力なCPUがユーザーに必要とされていることを訴求していた。
モバイルコンピューティングについては、Centrino 2とAtomの登場によって2008年にデスクトップPCとノートPCの出荷台数が全世界で肩を並べたことを示すとともに、米国で運営企業の苦戦が伝えられているWiMAXについても、UQコミュニケーションズによる国内試験サービスが2009年2月に開始され、商用サービスも2009年の夏に始まるスケジュールについて、「予定は変わっていない」と強い口調で予告している。
2008年のコンシューマーPC市場に最も大きなインパクトを与えたAtomについては、「これまでのインテル製品を知っている人には分かると思いますが」と前置きしてから、2008年に登場したAtomは第1世代で、「今後、さらに小さく、さらに省電力が実現する。次世代のAtomプラットフォームでは、システムボードがクレジットカードの3分の2のサイズになる」と紹介。さらに、Atomを搭載する製品はデジタル家電や車載システムなどの組み込み機器にも展開するなど、既存製品に搭載されているCPUのリプレースではなく、新しいカテゴリーを創造していくという考えを示した。
ほかにも、「TOUGHBOOK CF-H1」という具体的な成果が披露されたデジタルヘルスの取り組みや、内田洋行と共同で進めている教育現場への支援、そして、2007年に活発だったシニア世代への支援といった、新しい市場を創造する活動を紹介したのちに、吉田氏はインテルが考えている2009年の事業展開について紹介した。
そこで示された図には、インテルアーキテクチャを中心に2つの円が描かれており、内側の円にはデスクトップPCやノートPC、サーバといったこれまでもインテルがCPUを提供してきたカテゴリーが示されているが、外側の円にはNettop/Netbook、MID、NAND(SSD)という製品とともに、WiMAXやデジタル家電、医療機器、組み込み製品、ビジュアルコンピューティングといった、現在開発を進めているCPUやプラットフォームで、新たに進出を考えているカテゴリーが並んでいた。吉田氏も「内側にあるインテルが知られている3つの分野だけでなく、そのほかの外側にある領域でも製品を出していきたい」と2009年の展望を語っている。
2008年の後半から急激に悪化した世界経済の状況は、インテルといえど無縁ではないはずだ。しかし、吉田氏はこの状況でも「新しい技術の進化はスローダウンしない」と言い切り、「(経済の状況が)悪ければ悪いほど、インテルは元気になる」という言葉で、2008年のスピーチを結んだ。
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