中国独自規格「CBHD」でHD DVDが復活する……のか?:山谷剛史の「アジアン・アイティー」(3/3 ページ)
東芝がBDドライブ搭載ノートPCを発表した2009年秋に、HD DVDをベースに開発したCBHDプレーヤーが中国で登場。国慶節に速攻で購入して“しまった”そうな。
中国特殊事情が中国独自規格の首をしめる
CBHDで供給されるワーナー・ブラザーズのコンテンツは、お土産でついてきた15タイトルで終了ではない。中国のビデオショップや書店のビデオ販売のメイン商材は相変わらず海賊版がメインで、正規版もわずかな数のDVD-VideoとBD-Videoだけだが、Amazon中国(卓越亜馬遜)や淘宝網(TAOBAO)をはじめとするオンラインショッピングサイトでは、数多くのCBHDタイトルが購入できる。
その多くは日米においてHD DVDとしてリリースされていたものと同タイトルだが、「ライラの冒険 黄金の羅針盤」や「スラムドッグ$ミリオネア」などHD DVDで未発売の新しいタイトルも存在するので、外国で発売した過去のHD DVDタイトルのローカライズだけではないようだ。中国メディアでは、2010年に中国のコンテンツホルダーが1000タイトル程度のCBHDをリリースするという希望的観測が報じられている。
ただ、これでCBHDが成功するとはいえない。中国で流通するコンテンツの多くが海賊版であるのは今も変わっていない。そういう意味で、コンテンツ保護機能が強化されたほか、書き込みタイプや追記タイプのメディアが販売されていないため海賊版が登場しにくいCBHDプレーヤーは、中国で普及するのは難しいという、「道義的にこれでいいの?」というわけの分からない事情がハードルになる。
一方、CBHDと競合する(と中国関係者が一方的に考えている)Blu-ray Discを取り巻く事情をチェックすると、「パッケージはBlu-ray版のままで、中身がDVD-Videoに入れ替えた」タイトルが数多く中国で販売されているため、中国では“Blu-ray Disc”という単語は多くのユーザーに認知されつつある。なにより、BD-Videoタイトルの海賊版がじわじわと数を増やしてきている。そういう状況を反映してか、ソニーやパナソニックだけでなく、中国の家電メーカーで最大手のハイアールやPCメーカーのレノボがBle-ray Discプレーヤー(レコーダーじゃない)や、Ble-ray Discドライブ搭載のPCをリリースし始めている。さらには、中国では発売されていないプレイステーション 3も(あくまでも)個人レベルで中国に大量輸入されている。
このように、中国における“青色レーザー的”次世代光ディスク規格の競争において、ハードウェア的視点でもソフトウェア的視点でも、Blu-ray Discは優勢となっている。海賊版という援軍を得られない“中国独自開発”のCBHDを支えるのは、価格と“愛国の旗印”だけというのも、実に中国らしいといえなくもない。
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