書道の一筆に通じる迷いなく引かれた線――ソニー「VAIO Z」:矢野渉の「金属魂」的、ノートPC試用記(2/2 ページ)
PC USERのカメラマンとして活躍している矢野渉氏が、被写体への愛を120%語り尽くす連載「金属魂」。今回の番外編は、高級モバイルノートPC「VAIO Z」にフォーカスする。
VAIO Zで自作のロケ撮影セットを作ってみた
さてここからは、フォトグラファーという僕の仕事がらみでVAIO Zを見てみよう。
僕らの仕事はディスプレイがすべてといっていい。写真を正確に映し出してくれる液晶で、ドット数は多ければ多いほどいい。この点でZの13.1型フルHD(1920×1080ドット)液晶は合格だ。しかもAdobe RGBカバー率96%という広色域パネルだから、これをキャリブレーションして使えば、両手の上ですべての作業が済んでしまうことになる。
実際に僕がスタジオで簡易的な画像確認用に使っている旧「VAIO type F」と比較してみた。色域の広さがはっきりと確認できる。僕はいつもスタジオで撮影したRAWデータは、キャリブレーションしたディスプレイをつけたデスクトップPCに移して、そちらで現像作業を行っていたが、このVAIO Zならばその場で確認しながらの現像も可能だろう。
Core i7-M620のCPUは十分に速く、最大8Gバイトのメモリは、はっきりいって僕の使っているデスクトップPCをはるかにしのいでいる。まったく困った? 時代になったものである。クアッドSSDの威力もあるから、これまで処理が重たかった作業にかかる時間もかなり短縮されるはずだ。モデル撮影などで、多量の写真を一度にRAW現像するフォトグラファーなどには最適だろう。
もっといえば、動画の編集という分野でかなり活用され始める可能性もある。外出先など場所を選ぶことなく、ある程度リアルタイムのHD動画編集が可能になるからだ。
僕はロケに出かけるとき、必ず1キロ台の重さのモバイルPCを持参している。これは撮影結果を確認するというより、ストレージャー(写真のバックアップ)としての意味合いが強い。また、Web媒体だとその場で写真を納品することも多いので、その場でCD-Rに焼けるのが便利だからだ。
しかし、今持っているモバイルPCをこのVAIO Zに置き換えたとしたら? と考えると、さらに進んだ使い方ができることに気がついた。Adobe RGBを正確に映し出し、しかもかなり輝度のあるこの液晶を利用しない手はない。画面上に常にカメラのシューティングソフトを立ち上げておいて、写真をUSBでVAIO Z内蔵のSSDに転送すれば、リアルタイムで13.1型フルHD液晶で写真を確認できるのだ。カメラの背面の小さな液晶モニタでちまちまと写真を見るのがばかばかしくなるような環境が手に入るのである。
さっそく市販のアルミ板を使ってVAIO Z用の台を作り、三脚に固定してみた。カラビナとベルトを組み合わせれば簡単にできる。
この状態での撮影は、多分とても楽しいものだろう。撮影をして、瞬時にその写真を大画面で見ながらクライアントと意見交換ができる。しかも、撮影場所を選ばずに、だ。もし写真の量が膨大になったとしても、複数枚のDVDに素早く焼いたり、場合によっては記録型Blu-ray Discが使えるので、その場での納品には何の不安もない。
持ち運べる高性能マシンは、仕事の現場さえ変えていく力をもっているのだ。
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