ラオスIT界で成功しつつある中国の逆襲:山谷剛史の「アジアン・アイティー」(2/2 ページ)
ラオスのやや裕福な家にはタワー型PCがあり、かなり裕福の家にはノートPCがある。そして、若者はインターネットカフェを使う。おや、どこかで見聞きした話だ。
すみ分けしたいのにすみ分けできないラオスIT流通事情
ラオスでも携帯電話は広く普及し、ショッピングセンターから市場、幹線沿いの商店街などなど、あらゆるところで売られている。店頭での品ぞろえが多いノキアであるが、一般には高嶺の花で、多くのラオス人は中国人経営のショップで携帯電話を購入する。そこでは、中国で“大ヒット中”の「山寨機」(中国語でシャンジャイジと発音する)も売られているが、最近ではラオス人んが経営するショップで扱っていて、タイの地方都市でも“大ヒット中”という「i-mobile」などが人気を集めている。
中国人経営のショップでは携帯電話だけを販売しているが、ラオス人のショップでは、かばんや財布や靴などと一緒に携帯電話を並べている。ラオス人にとって携帯電話は通信機器である以上に、雑貨屋における腕時計のような、ファッションアイテムとして認識されている。
ここで「i-mobileも結局は中国製じゃないか」とラオスの人に突っ込んではいけない。中国人とは“すみ分け”したいラオス人としては、中国製であることよりタイ向けであることが大事なようだ。
とはいえ、ラオスの家電やデジタルガジェット市場には中国資本が“ガッツリ”と進出している。ただ、これは製品そのものではなく、中国のデジタルテレビ規格「DTMB」(Digital Television Terrestrial Multimedia Broadcasting)の採用という、ある意味、製品よりも大きな影響を与える話だ。日米欧それぞれのデジタルテレビ規格が発表された後に、中国が第4のデジタルテレビ規格として「DTMB」を公開したが、このライセンスコストが日米欧の規格より格段に安いことと、中国から多額の援助金があったことなどから、ラオス政府が採用を決定した。
裕福なラオスの世帯では、テレビの脇にDTMBに対応した中国製地デジチューナーが置かれている。ビエンチャンにある外国人向けのホテルやレストラン、カフェなどでも同様だ。そんなカフェで地デジチューナーのチャンネルを変えてみると、隣接する雲南省の放送局が次々と表示される。
ラオス政府に対する中国政府の「DTMBセールス成功」は、「在ラオス中国人の生活向上」や「中国の文化をラオスに伝えることができる」こと以上に、「ブルーレイ対抗馬の次世代光ディスク規格」のEVDやCBHDなど、“まだ、あきらめていなかった!”中国独自の新規格に、普及への光明を与えた」という成果を残したことが大きいだろう。
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