インタビュー

世紀のコラボによる注目のiPad電子書籍「太陽系 for iPad」マーカス・チャウン×タッチプレス×イトカワ×ビョーク(1/3 ページ)

「元素図鑑」で知られるタッチプレスの“新しい魔法”は広大な宇宙が舞台。「太陽系 for iPad」の著者であるマーカス・チャウン氏に、製作の背景や出版の未来、宇宙のこぼれ話を聞いた。

マーカス・チャウンの太陽系 for iPad

 iPad用電子書籍「元素図鑑」で世界の注目を集めたTouchPress(以下、タッチプレス)が、またしても魔法を見せてくれた。日本でも発売以来数週間にわたって有料アプリの10位以内の座を維持し続けた「マーカス・チャウンの太陽系 for iPad」は、アプリの内容や作りもさることながら、制作スタッフも超豪華だ。

 翻訳はあの「ハヤブサ」が着陸した小惑星「イトカワ」の名前の元になった糸川英夫氏の甥である、糸川洋氏。全編を飾る神秘的な音楽は世界に誇るアイスランドの歌姫、ビョーク。そしてタイトルにも入っている本の著者は、親しみやすい科学書を日本でもたくさん出版しているマーカス・チャウン氏だ。

 ロックバンド「クイーン」のブライン・メイが「イカシてる」と絶賛した英国の天文系ジャーナリストの彼が、シャーロック・ホームズの活動拠点であるロンドンのベイカーストリートで書き上げたアプリケーションなのだ。

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 今回、その著者であるマーカス・チャウン氏に、製作の背景や出版の未来、宇宙のこぼれ話などを聞いてみた(聞き手:林信行)。

よくある名字だと思っていた

―― この本で私はなんといっても「まえがき」に感動してしまいました。まずはそこの話からうかがえますか?

翻訳者の糸川洋氏は、小惑星イトカワの名前の由来になったロケット科学者の甥にあたる

チャウン 本当に驚く出来事でした。翻訳者のヒロシと、初めて一緒に仕事をしたのは12年前。「僕らは星のかけら」という本を出した時でした。原作の間違いを鋭く指摘してくれ、英語版の質の向上にも貢献してくれたうえに、非常に付き合いやすかったため親しみを感じていました。

 「マーカス・チャウンの太陽系」の日本語版を出すにあたって出版社から、誰か日本語の翻訳者を知っているかと聞かれて、私はまっさきにヒロシの名前をあげ、再び手を組むことにしました。

 その後、ヒロシからメールがあり、「小惑星イトカワが取り上げられていることに感動した」と書かれていました。なんと翻訳者の糸川洋というのは、小惑星イトカワの名前の由来になったロケット科学者、糸川英夫氏の甥だったのです。

 私は小惑星イトカワが日本のロケット科学者の名前に由来していたことは知っていましたが、きっと「糸川」というのは日本ではよくある名前なんだろうと思っていて、2つを頭の中でつないで考えていなかったのです。メールをもらった時は運命のようなものを感じました。

 ちなみに日本語版には「まえがき」が2つあります。1つはヒロシとの縁についての話ですが、その後、あの“3.11”があり、ヒロシから「震災を受けて何か追記することはないか」と提案を受けたのです。

 テレビで日本の震災や津波のニュースを見た私は大きなショックを受けました。また、ヒロシが震災の直後、電気が使えないために夫婦ともども電気の使えるホテルに避難し、アプリケーションの翻訳を続けてくれたことにも強く心を打たれました。

音楽を手がけたのはアイスランドの歌姫、ビョーク

―― 「太陽系」でもう1つ驚いたのは、世界的に有名なアイスランドの歌姫、ビョークが音楽を手掛けていたことです。お知り合いなんですか?

チャウン このアプリケーションを制作したのは、大ヒットアプリの「元素図鑑」を作った米国のタッチプレスです。「元素図鑑」のアプリケーションが、わずか半年で25万本売れて評判になったこともあり、多くの人がタッチプレスと関わりたいと思い始めていました。そんな中にビョークもいて、タッチプレスにコンタクトをしてきたのです。

 アプリケーションで使われているのは8月にリリースされた最新アルバム、「バイオフィリア」(国内盤:9月末リリース予定)の音楽です。実はビョークも宇宙が大好きらしく、そんなことからも今回の人選はピッタリだったと思います。

 大勢のアーティストがアプリケーションを出そうとしたり、タッチプレスと仕事をしたいと思っていますが、彼女自身が非常にテクノロジーが好きで、タ積極的に声をかけてきたために今回の話が実現しました。驚くことに、このアプリケーションは彼女にとっても初めて関わったアプリケーションとなりました。

 彼女が提供してくれた音楽は非常にムードがあって私自身も大満足しています。何度も聞いているうちに、次第に神秘的な雰囲気に包まれてきますね。実際、「太陽系」は、この楽曲提供のおかげで、大勢の音楽ファンからも注目を集めるようになりました。

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