ソニーの考える、「PlayMemories」の今とこれから(2/2 ページ)
写真や動画の「どこでも閲覧」「かんたん編集」「すぐにシェア」をうたう、ソニーの「Playmemories」が本格稼働した。同社製品の大半を関与させるという壮大な構想は何を目指すのか。
敷田氏: 「Playmemories」という言葉へ込めているのは、写真や映像といったコンテンツを死蔵せず、大切な思い出として保存・活用して欲しいという、いわば「深化」です。カメラメーカーならではという画質や音質のクオリティを保った上で、写真と映像を活用してもらうのがPlaymemoriesの目的ですが、まだ足りない要素があるとは認識しています。
――足りない要素としてまず気になるのが、PS VitaやPSPのブラウザでPlaymemories Onlineにアップロードした画像が閲覧できない、HDD/BDレコーダーに保存したハンディカムの映像をPlaymemories Onlineにアップロードする手段がないなど、「ソニー製品ならばすべて対応」とは言えない状態にあることです。大々的なアナウンスに対して、対応がいびつであるようにも感じます。
敷田氏: 開発のリソースは限られているので、優先順を考えながら対応を進めているのが現状です。接触時間の長さからして、モバイル関連分野の優先順位が高いと考えていますので、まずはそこから対処していきます。
レコーダーやテレビがPlaymemoriesに対応しないと言うことはありませんし、テレビについては2011年以降発売のモデルがPlaymemories Onlineにアップロードされた画像の閲覧に対応しています。理想はすべての撮影・録画・閲覧機器がPlaymemoriesという枠で連携していくことなのですが、対応デバイスの増加がユーザー体験の拡張とイコールになるともいえませんので、そこはバランスを取りながら推進していきます。
――Playmemoriesで提供されるさまざまな連携は、顧客の囲い込みを意図しますか。また、Playmemoriesの各種ソフトやサービスは現在、PS3用ソフトの「Playmemories Studio」を除くと無料ですが、ビジネスモデルはどう構築されるのでしょう。
敷田氏: Playmemories HomeからFacebook、Picasaなどへの投稿ができるよう、他社提供のサービスとの連携は拒むものではありません。カメラを軸とした顧客体験の増大が目的ですから、ネットワークサービスベンダーはその意味で競合ではありません。ソニーのカメラを買った人に対して、どれだけの楽しみを提供できるか、そのために「閉じない」サービスを提供していく方向性です。
Playmemories OnlineについてはSEN(Sony Entertainment Network)IDのほか、「Video Unlimited」「Music Unlimited」のIDでもログインできます。ですが、目的は体験の増大であってユーザー数の増大ではありませんので、他社サービスIDとの連携統合などは慎重に検討していきたいです。
ビジネスについて、サービスで利益を出していくという考えはありません。ですが、カメラを売るための仕掛け、顧客サービスだけとも言えません。PS3用ソフトのPlaymemories Studioは1500円で販売していますが、体験版も提供していますし、お金を払ってくれるのはその価値を認めてくれた人ということになります。このように、価値を認めてもらって、お金を払ってもらうという状況を作りたいのです。
構想としては理解でき、実際にPlaymemories HomeやPlaymemories Studioを使ってみると良くできたソフトだと感じる。特にPlaymemories Studioの高速処理は目を見張るものがあり、重い印象のあるAVCHDの動画をとても軽快に編集できる。ただ、敷田氏も認めるよう、現時点ではPlaymemories全体としては「足りない」。
何が足りないかといえば、それは「ソニーならでは」という独自色だろう。個々のソフトやサービスは決して悪いものではないが、画像や動画の管理編集ソフトは無数にあるし、閲覧やアップロードはパソコンやスマートフォンのWebブラウザでも可能。画像と映像が利用できるクラウドサービスも無数に存在する。
Playmemoriesという冠をつけたソフトとサービスを複数用意する以上、共通の操作感、UX以外にもシリーズとして何らかの統一感を利用者は期待するだろうし、Playmemoriesを使うにあたってのソニー製品購入者へのインセンティブがないもの不満点に挙げられるだろう。PMBがPlaymemories Homeに、Personal SpaceがPlaymemories Onlineに、FilmyがPlaymemories Studioにバージョンアップして名称変更し、スマホ用アプリが追加された状態とも感じられる。
4月に新社長となった平井一夫氏はデジタルイメージング、ゲーム、モバイルの3領域をコア事業に位置付け、「世界中をあっといわせるような魅力的でイノベイティブな商品・サービスを市場に投入する」としている。ハードだけではなくソフトとサービスも有機的に結合して魅力を高めていくという方針はPlaymemoriesにも通じるが、Playmemoriesはまだ統一感に乏しく、対応ハードやソフト、サービスが上手にかみ合わず、ちぐはぐな状態にある感じが否めない。
ただ、敷田氏は「あっと言わせるような何かを考えている」ともしており、Playmemoriesはいまが最終形ではなく、まだ大きく進化する何かがあることを伺わせる。ソニーはデジタルイメージング/ゲーム/モバイルの3領域へ、ハードとソフト、サービスを提供する世界でも類を見ない企業だけに、それらを上手に結合して利用者へ「体験」というカタチで届けることに相当な苦労があることは想像に難くないのだが、Playmemoriesという軸でそれらが上手にまとまっていくことを期待したい。
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