「日本でもSurfaceを早く展開したい」――Windows 8の開発責任者は語る:Build 2012(2/2 ページ)
Windowsの開発者向け会議「Build 2012」が米Microsoftの本社で開催された。Windows 8とWindows Phone 8を立て続けにリリースした直後の開発者向け会議で何か語られるのか? 現地から本田雅一氏がリポートする。
Windows 8開発責任者が語る、スマートデバイスとは異なるPCの可能性
Buildの基調講演はこの後、Windows 8とWindows Phone 8の両用アプリケーション開発の実例や、3Dグラフィックスによるインタラクティブアプリケーション構築ツール、ライブラリセットのUnityを用い、両プラットフォームで共通に動くゲーム開発の実例などを紹介したが、別途、基調講演の中でWindows部門社長のスティーブン・シノフスキー氏からも興味深い話を聞くことができた。
Microsoftが発表した「Surface with Windows RT」のデモは、主に「iPadができないこと」にフォーカスしていた。スマートフォンやタブレット向けのアプリは、その多くが従来的なコンピューティングの複雑な手続きを「ラッピング」して、シンプルな操作に着地させている。「こうした手法に慣れ始めたコンシューマーやiPadしか知らない世代に、PCの複雑性は必要なのか?」と問うてみた。
シノフスキー氏は、「そもそも、この質問の前提条件に同意しない」と最初に話した。PCは複雑ではなく、複雑な手続きを簡素化するプログラムは、以前からたくさんあるからだ。PCは複雑な用途にも使えるが、決して難しくはないというのが同氏の前提となる主張だった。その回答は以下の通りだ。
「世界中で10億人が使いこなしているPCが、複雑すぎるということはない。自由度が高くパワフルなツールだ。いろいろな用途に使うことができ、どのように使えばどんなに役立つかといったコンセンサスもある」
「一方でコンピューティングをもっとシンプルにする方法はある。そこで難しくすることなく、PCのよさをもっと引き出すことは可能だ。グラフィカルなユーザーインタフェースが普及し、今日はモバイルコンピューティングが当たり前となり、外出先で常にネットワークに接続されている使い方も当たり前になってきた。人と人をつなぐコミュニケーションが中心で、それぞれのユーザーがコンピュータに多様性を求めている」
「ユーザーは何かを諦めることでシンプルになり、何かを諦めることで簡単に使おうというのではなく、充実したストアに登録されたアプリを使い、ネットワークサービスを活用することで、PCの持つパワフルさを失わずに、新しい時代のコンピューティングに対応できる」(シノフスキー氏)
そもそも“PCとタブレットが競合している”という意識も、シノフスキー氏には希薄なようだ。「歴史を振り返れば、新しいテクノロジーが生まれるとき、人々はそれまでにあった技術を古いものと見なしがちだ。しかし、かつてテレビが出てきたとき、ラジオがなくなるといわれたが、そうはならなかった。自家用車が普及したからといって、電車はなくならない。だからすべての仕事には意味があり、適した方法がある。PCが担ってきた役割は、古くなっていくのではない。スマートフォンやタブレットによって、よりネットとユーザーの距離が小さくなることで、PCは今よりも重要な製品になっていく」という。
ごく短時間話しただけだが、シノフスキー氏はPCが持つ、スマートフォンやタブレットとは異なる可能性について熱く語ってくれた。
「Surface with Windows RT」の日本展開はあるか?
ところで、日本が好きで、来日するときは自分で電車を予約して1人でホテルまでやってきて、帰国時も自由に秋葉原を散策してから帰るというシノフスキー氏。彼に日本メーカーからWindows RTマシンが(「LaVie Y」のような例外を除いて)登場しなかったことと、Surface with Windows RTが発売されなかったことについて話を聞いてみた。
「Microsoftの直販店であるMicrosoft StoreとSurface with Windows RTの戦略は、まさに始まったばかりだ。Surface with Windows RTは世界中、どこでも入手できるようにしたい。僕が日本に行くのを楽しみにしていることは、関係者なら誰もが知っていること。日本にも早く展開したいと考えている。日本メーカーのWindows RTも、私自身が見たい。それに日本のWindows 8発売イベントでは、12以上のユニークな製品が登場した。これでエキサイトしない人はいない。時期は明言できないが、日本の重要性は変わっていない」とのことだ。
Surface with Windows RT、あるいはその後継製品が日本でも登場する可能性は高そうだ。
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