第2回 「802.11ac」の特に優れたポイント──「電波干渉対策」:特集「ついにやってくるギガビット無線LAN」(2/2 ページ)
国内でも販売されるようになった次世代無線LAN規格「IEEE802.11ac」。これまでのWi-Fiとは何が違うか、なぜ高速か、どこにメリットがあるか。第2回めはこれまでの2.4GHz帯Wi-Fiで問題になりがちだった“干渉問題”の対策、そして第2世代にはどんな機能が備わるかを解説する。
「Wave 2」でさらに進化する802.11ac
ここまで、主に「Wave 1」と呼ばれる第1世代で採用される技術の説明を行った。続く「Wave 2」と呼ばれる第2世代では、Wave 1は80MHz幅止まりだったチャネル幅が160MHz幅まで拡大される予定(理論値最大3.47Gbpsまで最大速度が向上)であるほか、「MU-MIMO」と呼ぶ新しいMIMO技術も導入される予定となっている。
MIMOはすでに802.11nでも採用されている技術のため、耳にしたことのある読者も多いだろう。簡単に述べると電波を多重化/束ねて通信速度を向上させる技術で、最大の特徴は同じ周波数を使って異なるデータを同時に送受信できることだ。
送信側/受信側ともに複数のアンテナを用い、送信側はそれぞれのアンテナから異なるデータの電波を送出、受信側は同じく複数のアンテナで合成された電波を受信する。送信側/受信側それぞれのアンテナの位置や到達時間などのずれから発生する電波の歪みを補正・計算する非常に複雑な演算処理を行い、合成波からオリジナルのデータを復元する。こちらは電波が到達する経路の違いや壁の反射などを利用するので「空間多重」とも呼ばれる。
MIMO技術を用いた最大通信速度は、送受信側それぞれで処理可能なストリーム数が反映される。個人向けシステムの場合、一般にクライアント側(PCやスマートフォンなど)の方が設置スペースが限られる分複数のアンテナを配置することが困難と想定され、基本はクライアント側の処理能力が通信速度に影響する。例えば2ストリーム(2×2 MIMO)しか処理できないクライアントに対しては、アクセスポイント(親機)側に4ストリーム送信する能力があっても、残り2ストリーム分の送信能力は余剰(使わない)ということになる。
それならば、余っているもう1組ぶん(異なるもう1つの2ストリーム対応クライアント)にも送信処理をすればいいではないか。これが「MU-MIMO(Multi User-MIMO)」の概念だ。MU-MIMOは、基本、2ストリームしか処理できないクライアントには2ストリーム分の電波だけが届くように「電波の指向性を制御」する機能である。ここで述べるMulti Userとは、1台のアクセスポイントと複数台のクライアントが「完全に同時に通信可能になること」を意味している。
MU-MIMO技術により、アクセスポイント側のスループットが大きく向上する。これは結果的にクライアント側でも他のクライアントとの競合に対する待ち時間が少なくなり、当然ながら平均通信速度が向上することにもなる。
ここまでで触れたように「802.11ac」は802.11nをベースにしつつ、高速化はもちろん、限られた電波の効率利用もしっかり配慮した次世代の高速無線LAN規格である。802.11ac対応製品の導入により、アクセスポイント同士の干渉に強く、快適な次世代無線LAN環境を「比較的簡単に」実現してくれるのが大きなポイントである。
(続く)
次回より「ならば、実際にどのくらい高速か」──。802.11ac(Draft)対応機器の実機レビューを行う予定です。
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