大解説! “Broadwell-Y”な「Core M」はここがすごい(後編):これはもうTickじゃない(2/2 ページ)
インテルが“軽量薄型”なデバイス向けに開発する次世代CPU概要が明らかになった。今回は、より“アグレッシブ”になったというCore Mの特徴を解説する。
アグレッシブになったTurbo Boost
Core Mでは、よりアグレッシブなTurbo Boostを行なうことで、低電圧CPUでも高いCPU演算能力を発揮できるようにするため、パワーマネジメントの拡張を施している。
CPUのベースクロックや消費電力は、持続的に負荷をかけた場合にSoCやシステムの温度によって決まるが、Turbo Boost Technologyでは、短時間であればそのリミットを超えた高クロックで動作することで、より高い処理能力を発揮するようにしている。
Core Mでは、ミリ秒単位のごく短時間であれば、バッテリー保護のための最大電力を限度に、さらに高いクロックでのオーバークロック動作を実現する。ただし、ジョルダン氏は「この機能を有効にするかどうかは、メーカー次第」として、どのメーカーの製品でもこの機能をサポートするわけではないことを示唆している。
Core Mでは、低負荷時にCPUコアやグラフィックスコアへの電力供給を一定間隔でOFFにすることで、リーク電流の増大を抑えつつ、省電力化を図っている。
これまでのパワーマネジメントでは、低負荷時には駆動電圧を下げて動作クロックをさらに低くすることで消費電力を抑えようとしてきたが、実際にはあまり変わらないレンジが存在する。そこで、こうしたレンジでは電源供給を定期的にOFFにして消費電力を低減する。ジョルダン氏は、特にグラフィックスコアの省電力化で効果が大きいと説明する。
以上の改善で、Haswell-Yに比べて優れた処理能力を半分以下のTDPで実現する。SoCのアイドル時の消費電力も60%低減し、より小さなバッテリー容量でも長時間駆動を可能にすることで、システムの薄型化に貢献する。
グラフィックスコアも画質同等で性能2倍
Broadwellでは、マイクロアーキテクチャにも改良を加えている。CPUコアに関しては、アウト・オブ・オーダースケジューラの拡張や、ストアからロードへの先渡しの高速化、L2 TLB(Translation Lookaside Buffer)を従来の1Kバイトから1.5K倍とエントリーに拡張するとともに、新たに1GバイトのページL2 TLB(16エントリー)をサポートする。
浮動小数点演算サイクルでは5クロックから3クロックに高速化するなどして、Haswellアーキテクチャと比較して、IPC(Insruction Per Cycle:サイクルあたりの処理性能)を5%以上向上させたとIntelは主張している。
また、グラフィックス機能については、EU(Execution Unit:実行ユニット)と呼ぶ演算コアを20%増やすとともに、ビデオ処理に使うサンプラーのスループットも50%向上した。これにより、ビデオ画質を保ったまま最大2倍の高速化を実現し、4Kディスプレイへや4Kビデオに対応する。
なお、Intelは、Broadwellアーキテクチャの詳細については、9月に予定している、開発者会議「Intel Developer Forum 2014 San Francisco」で明らかにする予定だ。
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