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短いくせに強力だ! 「Radeon R9 Nano」の15センチな高性能を試す小さいけど可能性はでかい(3/3 ページ)

“Fiji”グラフィックスカードリファレンスデザイン「Radeon R9 Nano」は上位モデルのスペックとパフォーマンスでコンパクト化を実現。その実力を紹介しよう。

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明らかに違う消費電力

 Grand Theft Auto Vでは、まずグラフィックスメモリの使用量が4Gバイトを大きく上回る最高画質設定において、4Kクラスの解像度で大きくスコアを落とす傾向が確認できた。その上で、R9 NanoとR9 Furyの性能差があまり出なかったことにも注目したい。ドライバのバージョンが異なるため、最新ドライバを適用すればR9 Fury側のパフォーマンスが向上する可能性もあるが、あるいはGPU性能よりもメモリ帯域幅が影響しているのかもしれない。

Grand Theft Auto V:Qualityはすべて最高(8xMSAA)

 一段負荷を下げ、2xMSAAで高画質にとどめた設定では、R9 Furyよりもわずかに低いフレームレートとなった。これは負荷を下げてグラフィックスメモリの使用量も抑える設定だ。そのため逆にGPU性能の差が表面化したと考えられる。GeForce勢との比較では、1920×1080ピクセルで実用的なフレームレートが出ているものの、GeForce勢が高いフレームレートだった。一方、2560×1440ピクセルではFijiコア勢が逆転する。3840×2160ピクセルになると、Fiji勢が明らかに高いフレームレートとなる。最高画質とまではいかないが、グラフィックスメモリの容量を考慮した画質設定と高解像度という環境では、Fijiが優勢となるようだ。

Grand Theft Auto V:Qualityはすべて高(2xMSAA)

 Thiefもこれまでのテスト、特にGrand Theft Auto Vの2xAA設定に近い。低解像度ではGeForce勢が優位だ。Fijiの2製品は高解像度でスコアの落ち込みが少ない。その上で、Radeon R9 NanoとRadeon R9 Furyとの差は、2~3fpsだ。ほかのテストでも同様だったが、2~3fps程度なら、セグメントをまたぐような差とはいえない。同じハイエンドで同じアークテクチャの製品で多少クロックが違う程度の差でしかない。Radeon R9 Nanoは、厳密に見ればR9 Furyよりもスペックで下になるが、実際のゲーム動作においては、ほぼ同等のパフォーマンスを発揮するといってよいだろう。

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Thief(Quality:Ultra)

 消費電力では、アイドル状態でRadeon R9 Nanoは40ワット台半ばで、これはほかのGPUと同じ程度だ。一方、高負荷時は、Radeon R9 Furyと比べるとかなり大きな差がついた。Radeon R9 Furyが317.7ワットだったのに対し、Radeon R9 Nanoは234.4ワットと、実に83.3ワットの差がついた。この消費電力の抑制がクーラーユニットを含めた小型化を可能にした大きな要因だろう。

 高負荷時でRadeon R9 NanoとGTX 970がほぼ同じという点にも注目したい。フレームレートに関していえば、高解像度限定でR9 Nanoが高かったので、“ワットあたりのパフォーマンス”としても、GTX 970を上回ったといってもよさそうだ。

消費電力(電力設定:バランス)

価格は高いがコンパクトなハイエンドモデルは自作PCの可能性を広げる

 Radeon R9 Nanoのベンチマークテストのスコアは、Radeon R9 Furyに準ずるレベルだ。ハイエンドクラスの処理能力でありながらコンパクトなサイズに収めている。消費電力も、Radeon R9 Furyとは明らかに異なる値が確認できた。この点、コンパクトなゲーミングPCを構築したいユーザーには、強力にプッシュできる製品だろう。

 複数のメーカーから、コンパクトなR9 Nanoが登場する予定だ。これに独自のクーラーユニットを搭載するモデルも登場するだろう。一方、比較に用いたGTX970-DCMOC-4GD5は、ASUSTeKが長い時間をかけて培った設計技術で実現したモデルで、他社が追随しようにも一から設計する必要がある。このように、コンパクトサイズのハイエンドグラフィックスカードにおいては選択肢が少ない状況にあるが、Radeon R9 Nanoがうまく立ち上がれば、コンパクトなハイエンドグラフィックスカードというジャンルが活性化する可能性がある。

 ただし、不安要素としての歩留まりの問題がある。Radon R9 FuryとRadeon R9 Fury Xでは、店頭在庫が需要に対して不足している。Fiji採用製品として、需要を満たせるだけの製品を出荷できるのかという疑問がある。この状況は価格にも反映している。Radeon R9 Fury Xの実売価格は10万円超、Radeon R9 Furyは安値でも8万円台。R9 Nanoは出荷開始で価格が高いとしても10万円前後の見込みだ。割高感は否めない。GTX970-DCMOC-4GD5の2倍の価格となると、コストパフォーマンス勝負で負けてしまう。

 それでもなお、ギリギリのコンパクトケースで、可能な限り最大のパフォーマンスを得たいという「サイズあたりのパフォーマンス」という視点で評価すると、Radeon R9 Nanoは現在最高の製品だ。万人受けするというよりは、すでに目標が定まっていて、その方向で究極化したい場合に適した製品だろう。Mini-ITXフォームファクタに固執する必要はない。ATXでもシャドーベイを廃止して奥行きを詰めたコンパクトケースも登場しはじめている。そうしたPCケースでRadeon R9 NanoのCrossFireという構成も面白い。そういう意味で「コンパクトなグラフィックスカードには、大きな可能性が広がっている」のは確かといえるだろう。

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