無料で5Gバイトまで――縮小した「OneDrive」にどう対処すべきか:鈴木淳也の「Windowsフロントライン」(2/2 ページ)
有料で容量無制限から1Tバイトへ、無料で15Gバイト(写真も含めると30Gバイト)から5Gバイトへ――「OneDrive」のプラン変更は残念だが対応するしかない。
ユーザーの信頼を損ないかねないOneDrive容量縮小
Microsoftによれば、Office 365ユーザーに無制限のクラウドストレージサービスを提供し始めたものの、一部のユーザーにおいて、大量のPCのデータを丸ごとバックアップしたり、あるいは動画コレクションやレコーダーの録画データを全てクラウド側に保存するケースがみられたという。
そのため、通常のユーザーの1万4000倍にあたる75Tバイトの容量を1人で消費するケースもみられ、本来のOneDriveの目的である簡単なファイル保存やバックアップの目的を逸脱したことが無制限ストレージ廃止の理由で、「高価値の生産性エクスペリエンスと共同作業エクスペリエンスの提供に焦点を当てることが、大部分のOneDriveユーザーにとってメリットになると考えている」と同社は説明している。
しかし実際のところ、容量無制限のストレージを提供すれば「こうした使い方」をするユーザーが登場するのは自然なことで、本当にMicrosoftが当初からそれを想定していないのであれば、見通しが甘すぎる。
無償提供されている15Gバイトのストレージ容量を5Gバイトに縮小する判断も、サービス提供側としては悪手としか言いようがない。15Gバイト(あるいはフォトを含めて合計30Gバイト)を前提にユーザーがOneDriveを利用していた場合、5Gバイトへの縮小で容量が超過するのであれば、ファイルを抜き出して使用する容量を調節するか、Office 365の1Tバイトプランを利用するなど、有料サービスに移行するしかない。
もともと、縮小前の「15Gバイト」という数字は、Googleが「Gmail+Googleドライブ(現在はGoogleフォトも)」で提供している15Gバイトのストレージサービスに対抗すべく出してきたものだ。さらにOffice 365の1Tバイトプランや、それに続く無制限プランを打ち出してきたのも、ライバルのサービスからMicrosoftのサービスへと誘導する意図があったのだろう。ちなみに、Amazon.comの「Amazon Cloud Drive」は5Gバイト、Dropboxの「Dropbox」は2Gバイトを無料で利用できる。
クラウドサービスは使い込むほどに脱出が難しい面があり、特に大容量ストレージを組み合わせた場合、移行の手間を考えると、同じサービスに滞留しやすい傾向がある。カメラロールの15Gバイトストレージ特典にみられるように、「Microsoftのサービスならたっぷり写真を保存できますよ」とうたっておきながら、それを締め出したり、有料サービスへの誘導を強要するようなら、ユーザーの心象は悪くなる。仮に決定を後に覆したとしても、既に信頼を失っているサービスにユーザーが戻ってくるだろうか。
Office 365の契約状況が好調ということが背景にあるのかもしれないが、長期的にみれば、今回の件でMicrosoftが失ったユーザーの信頼は大きいだろう。クラウドサービスはユーザーに継続して利用してもらえることに意味があり、その意味でMicrosoftは「クラウドストレージ」という戦略上の重要なピースを失いかねない状況と言える。
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