Windows 8と旧IEのサポート終了がもたらす影響とは?:鈴木淳也の「Windowsフロントライン」(2/2 ページ)
1月13日、Windows 8とIEの旧バージョンにおけるサポートが終了した。これらの意味するところと、実際の影響について考える。
Edgeに移行してもらいたいが……まだまだ続くIE利用
もう1つのテーマは、旧バージョンのInternet Explorer(IE)がサポート終了となったことだ。
MicrosoftはIEにおけるサポートポリシーを2014年8月に変更し、2016年1月13日以降は「当該のWindows OS上で利用可能な最新のIEと組み合わせた場合にのみサポートを提供する」ことにした。これにより、一般提供されている(現在サポート対象になっている)デスクトップOSに限れば、IE9またはIE11のみがサポート対象となり、それ以外のバージョンのIEは全てサポート対象外となる。
- Windows OSとIE最新バージョンの組み合わせ(2016年1月13日時点)
- Windows Vista(SP2):Internet Explorer 9
- Windows 7(SP1):Internet Explorer 11
- Windows 8.1:Internet Explorer 11
インターネット上の各種Webサービスは、こうした事態に備えて対応を進めており、旧バージョンのIEを必須とするサービスはかなり減少している。しかし、企業内のイントラネットなどでは旧IEの利用を前提としたWebアプリケーションが構築されているケースも多く、その救済策としてIE11には(IE8の動作を再現する)Enterprise Modeが提供されているわけだ。
これまでIEは、独自対応が必要になるとして、Webアプリケーションやサイトの管理者を悩ませてきた。しかし、昨今はWeb業界標準への対応という潮流もあり、過去の互換性を断ち切ってシステム刷新を図ったのが、Windows 10で採用された新しい標準Webブラウザ「Microsoft Edge」だ。
Windows 10で採用された新しい標準Webブラウザの「Microsoft Edge」。モダンなWeb技術に対応し、Webページの任意の場所へ手書きでコメント可能な「Webノート」、シンプルな画面で閲覧できる「リーディングリスト」、音声対応パーソナルアシスタント「Cortana」との連動など、IEにない新機能を持つ
MicrosoftはEdgeの利用を推奨しており、既存のIEユーザーのほか、他のWebブラウザを使っているユーザーにも積極的にEdgeを活用してほしい意向だが、必ずしも思惑通りにはいっていない。EdgeはWindows 10でのみ提供されているが、現在Windows 10においてもEdgeではなくIEを使っているユーザーは、サイトへのアクセスにIEを要求されるためだとみられる。前述のEnterprise Modeを必要とするケースのほか、実際にEdgeでの利用を推奨していないサービスも存在するのが現状だ。
また、Windows 10のシェアに対してEdgeの利用シェアが非常に低く、恐らくはヘビーユーザーほどChromeなど他のブラウザを活用しているとみられる。前述のように、Net Market ShareとStatCounterともにWindows 10のデスクトップOSシェアは10%程度だが、Edgeのデータはグラフにさえ出現していない。
Net Market Shareが提供するデータの場合、Edgeのシェアは複数バージョン(12と13)を合わせても2~3%程度にとどまっており、サポートが終了するIE10よりも低い水準だ。Net Market ShareはIEのシェアが、StatCounterはChromeのシェアが高く出やすい傾向があると知られているが(前者は台数シェア、後者は実利用シェアを反映していると言われる)、それを考慮すればStatCounterではさらに低いシェアになるだろう。
「レガシーサポートを必要とするユーザーはIE、それ以外のヘビーユーザーはChromeなどのWebブラウザ」という傾向はまだしばらく続くとみられ、2016年後半以降にEdgeが本気を出すまでは低空飛行が続くと予想している。
旧IEサポート終了の影響は?
実際のところ、Windows 8より影響が深刻だと思われるのが旧バージョンIEのサポート終了だ。過去の連載記事でも何度か触れているが、Windows XPにしろWindows 8にしろ、サポート終了における問題の多くは「IEの存在」に帰結する。従来型のデスクトップアプリケーションやハードウェアのサポートもさることながら、「特定バージョンのIEに依存した企業内Webアプリケーション」の存在が新環境への移行を阻害しているのだ。
- Internet Explorer 11の新機能にみる「Windows 2020年問題」とは?
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Microsoftとしては、レガシーサポートはWindows 10にも搭載されているIE11にいったん集約して、これをWindows 7の延長サポートが終了する2020年までに段階的に縮小していくというシナリオを描いているとみられる。
今回、IE11とIE9のみがサポート対象として残ったが、IE9は事実上Windows Vistaのみが対象であるため、現状のVistaのシェア(1~2%)を考えても、同OSの延長サポートが終了する2017年を待たずして、ほぼ終了させられると考えているだろう。つまり、IE11のみを残してIEのサポートは全て終了させ、今後5年間で残ったIE11のユーザーを少しずつ減少させていくわけだ。
ただ、このシナリオは予想以上に困難だというのが筆者の推測だ。まずIE9だが、StatCounterのデータではIE9とVistaのシェアが拮抗しているため、恐らくIE9を使い続けているユーザーの多くはVistaに偏っていると予想される。
一方で、Net Market ShareのデータではIE9の6.67%のシェアに対し、Vistaは1.62%と開きがある。これをイコールで結んでいいのかは微妙だが、Net Market Shareのデータでは旧バージョンのIE依存の傾向が強いと言える。
またStatCounterとNet Market Shareともに、今回でサポート対象外となるIE8とIE10のシェアがそれなりに大きい点も気になる。旧バージョンのIEを利用する理由が「企業内のレガシーなWebアプリケーションへのアクセス」であるならば、仮にサポートが終了してバグ修正やセキュリティパッチの適用が行われなくなっても、IEのセキュリティ設定で外部サイトへのアクセスを禁止することで、ある程度は対策が可能だ。
しかし、やはり万全とはいえず、IE11への対応や、さらに言えば、よりモダンな業界標準のWeb技術へと早期の移行が必要だと考えられる。
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