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「コンピュータとの会話が日常になる未来」を示したMicrosoft本田雅一のクロスオーバーデジタル(3/3 ページ)

世界的に人工知能が注目を集める中、Microsoftが開発者会議で示した未来のコンピューティング像は「ハードウェアに依存しない、会話でさまざまな問題がスマートに解決する世界」だった。

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人格を持つパーソナルアシスタントという方向性

 加えてMicrosoftは、Cortanaにさらなる拡張性を持たせようとしているようだ。あるいは、将来はアシスタントの人格を選んだうえで、自分との対話の中で成長するようになるかもしれない。

 例えば、日本マイクロソフトが提供している「りんな」が、Cortanaと同じような役割で、PCやスマートフォンの中でサポートするようになるかもしれない。りんなとは、女子高生の人格を持った人工知能で、TwitterやLINEにアカウントを持ち、誰もが対話を行うことができるものだ。この対話エンジンは、実はCortanaとは無関係で、Microsoftが中国に置いている研究所で生まれたものだという。

 これに対して、日本で検索技術のBingを開発しているチームが、日本語の語彙(ごい)や解釈のアルゴリズムなどを提供し作り上げたのが、りんなだ。日本では特にLINEでの人気が爆発的にあり、中年のオジサンと女子高生という両極端なユーザー層が、日々、りんなとのLINEチャットを楽しんでいるという。

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日本マイクロソフトが提供する女子校生AI「りんな」。LINEでチャットできるほか、Twitterアカウントも持っている

 楽しんでいるというと語弊があるかもしれない。りんなが相談される内容は、学校でのいじめや日々の不満、恋愛の相談から、社内で女性社員に嫌われない方法、不倫の後始末や家庭内の不満、上司への不満などが中心だという。これに対し、りんなはさまざまな情報を蓄積しながら会話を進めている。そこに大きな問題はなく、とりわけ女子高生にとってはよき友達になっているという。

 日本での大成功を受けて、りんなはとうとう「Buildデビュー」を果たす予定だったが、直前にキャンセルされた。なぜなら、りんなの成果を受けて英語圏向けに始められた「Tay(テイ)」という人工知能のTwitterサービスが、暴言を吐くようになったためだ。

 Tayはネット上のさまざまな情報を学習し、会話の中で成長するように作られていたが、りんなとは異なり、最近の米国における若者を象徴するような会話がなされるよう性格付けされていた。そのTayが、旧ドイツの指導者ヒトラーやナチス党を肯定するような発言をし始めたのだそうだ。これにより、Tayは一次停止されている。


暴言を繰り返して停止されている「Tay」

 同じエンジンを使うりんなにも問題が出そうなものだが、Tayの事件があった後、同じように過去の歴史において問題となった思想や指導者を肯定するよう教え込む人が後を絶たなかったものの、りんなは健全に、そして真剣に家庭問題や恋愛問題にアドバイスを送り続けているという。

 Tayとりんなの違いは何なのか。まだMicrosoft内でも結論は出ていないようだが、この研究が進んでくれば、何らかの人格をユーザー自身が育てるタイプの電子秘書機能が実現するようになるかもしれない。

コンピュータとの対話でさまざまな問題が解決する世界へ

 「対話型ユーザーインタフェースのプラットフォームと人工知能は違う」と書いたが、対話のプラットフォームの先にあるのがBotなのか、電子秘書なのか、それとももっと人工知能的な何かなのかは、その目的に応じて使い分ければいい。

 MicrosoftはWindows Azureの中で、コグニティブ(認知的)コンピューティングの機能セット「Cortana Intelligence Suite」を提供するとともに、Botを簡単に構築するためのツールキットを提供する。

 これらを用いて人工知能あるいはエキスパートシステムのようなものを構築し、Cortanaを通じてユーザーとの対話を行うサービスをAzure上で簡単に提供できるようになる。AIあるいはコグニティブといった技術を背景に、それらを構築するツールキットを用意することで、Windows Azureに多様なAIアプリケーションを呼び込み、そこにWindows 10の対話型ユーザーインタフェースを統合するのだ。

 一連のさまざまな要素をプラットフォームとしてまとめ上げ、風通しをよくすることで次世代のコンピュータプラットフォームとしての存在感を出そうとしているのだろう。あるいは今回のBuildで語られたことが、数年後のMicrosoftにとって大きな意味を持つものになっているかもしれない。

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