ついに日本で発売 Apple「HomePod」を試して分かった“競合との違い”:本田雅一のクロスオーバーデジタル(4/4 ページ)
Apple初のスマートスピーカー「HomePod」がこの夏、ついに日本で発売される。テクノロジー製品である一方、オーディオ製品という感性に基づく製品でもあるHomePodが向いている場面、ユーザー像とは? 日本モデルの実機を試してみた。
Appendix
(1)FLACの再生はできるのか
まだ確認できていない部分もあるが、恐らくは気になる方もいらっしゃるだろう。ということで、補記としてHomePodのFLAC対応についてお伝えしておきたい。
HomePodは発売当初よりロスレス圧縮コーデックのFLACに対応しているといわれていた。iOSそのものにFLACのコーデックが含まれているためだが、Apple MusicはFLACには対応していない。では、どうすればFLACを再生できるのか。
Appleに問い合わせたところ、AirPlay 2でFLACをHomePodに転送すると、そのまま再生できるとのことだ。ただしApple製の音楽プレーヤーでFLAC対応しているものがないため、この機能の動作確認は行えていない。
例えば、「mora player」にALACとFLACのハイレゾファイルを転送しておき、これをAirPlay 2でHomePodに送ったところ、正常に再生できたものの、それが本当にハイレゾなのかどうか確認する手段がないからだ。
普段、iOSデバイスで使っている音楽プレイヤー「KaiserTone」は再生ファイルのフォーマットだけでなく、出力先に応じたサンプリング周波数変換などを行い、どのフォーマットで出力するかを表示する機能がある。
しかしKaiserToneはAirPlay 2での動作が怪しく(恐らく非対応)、HomePodを最大サンプリングレート8kHzまでの機器と誤認してしまった。ただし、KaiserToneにはちょっとしたバグがあり、いったんデバイス本体でハイレゾファイルを再生後、出力先をHomePodに切り替えると、出力先の属性をチェックせずにそのままストリームし始める。
このときの音質は、恐らく何の変換も行われていないFLACのようだ。というのも次の曲に切り替わると、今度はなぜか44.1kHzに変換出力されるようになる(そして音質は明らかに変化する)。実際のところはストリーム内容を確認しなければ分からないが、この辺りの振る舞いが安定してくれることを望みたい。
(2)確実に向上しているApple Musicの音質
もっとも、HomePodのみであれば、Apple MusicのAAC 256Kbpsでも十分ではないかと思う。Appleは2012年から「Mastered for iTunes」として、iTunesでの配信を目的とした音質改善のプログラムを進めてきた。
これはmacOSのバージョンごとに行われてるコーデックのアップデートと、音楽制作ソフト「Logic Pro」で利用できるAACファイル出力のプラグインで構成されている。マスタリングエンジニアがマスタリング用プロジェクトファイルから、ダイレクトでAACを出力し、マスターと比較試聴しながらチューニングを行うことで、圧縮音源でも高音質を担保するというものだ。
このMastered for iTunesは8月8日に「Apple Digital Masters」という名称に変更されている。実質的な内容は変化していないが、改良は常に行われており、近年はマスターとの区別が付かないほどに進化してきた。筆者自身、マスタリングルームで音質を確認したことがあるが、とても圧縮音源とは思えないレベルにまで向上している。
ポイントは幾つかある。Apple Digital Mastersでは、AACエンコーダーに32bit浮動小数点精度の44.1kHz PCMデータを入力する。このときのサンプリングレートコンバーターを吟味し、プリエコーなどで音調が変化しないようにしていること。そしてディザ(規則的なノイズの一種)、あるいはそれに相当する処理で聴感上のS/Nを変える処理を“行わない”ことだ。
CD品質の16bitであればディザは有効だが、マスタリング時に使う録音トラックは24bit以上の精度がある。16bitに丸めることなく、そのままエンコーダーにかけるのであれば、ディザを入れない方がS/Nは良く、また余分な情報が加えられないためエンコード効率も高まる。
無償で利用できるこのエンコーダーでは、ソース素材との比較が行えるABテストも可能になっているので、Logic Proのユーザーは試していただくといいだろう。
結果として、ディザありの16bit・44.1kHzをエンコードしたものより高音質になるというわけだ。Appleによると、米チャートにおけるトップ100のうち75%、グローバルでは71%がApple Digital Mastersで配信されているとのことだ。
ご存じのように高音質ストリーミングのオプションをオンにしておけば、Apple Musicのストリーミング再生でも、この品質が担保される。
関連キーワード
スマートスピーカー | HomePod | Apple | スピーカー | Apple Music | AirPlay | HomeKit | 本田雅一のクロスオーバーデジタル
関連記事
「iTunes」がMacから消え去る理由 Windowsでは生き残る理由
米Appleの開発者向け会議「WWDC」が今年も開催。さまざまな話題が飛び出したが、本稿は「iTunesがなくなる」ことについて解説する(Mac Proの現地レポートも)。この夏、日本上陸 Appleのスマスピ「HomePod」はどんな人向け?
Appleのスマートスピーカー「HomePod」がいよいよ日本でも2019年夏に発売されます。AmazonやGoogleは既に日本でも複数のスマートスピーカー製品を投入していますが、後発のHomePodはどういったユーザー向けになるのでしょうか。Appleのスマートスピーカー「HomePod」、日本で今夏発売 3万2800円
Appleはスマートスピーカー「HomePod」を日本でこの夏に発売する。Siriを使った音楽再生、ニュースや天気予報の読み上げ、iPhoneのメッセージ送信、家電の操作などができる。価格は3万2800円(税別)。「Google Nest Hub」は画面付きスマスピで最高の完成度 気をつけるポイントは?
スマートスピーカーやその関連デバイスについて、試行錯誤を繰り返しつつ、機能をバリバリ使えるようになる(予定)までの過程を、時系列でお届けする本連載。Googleから発売された画面付きスマートスピーカー「Google Nest Hub」ならではの操作性を細かく見ていこう。Amazonのスマートスピーカー、最初に買うならどれ?
スマートスピーカーやその関連デバイスについて、試行錯誤を繰り返しつつ、機能をバリバリ使えるようになる(予定)までの過程を、時系列でお届けする本連載。今回はAmazon Echoシリーズを購入する場合、初めての1台としてどれを選ぶべきなのかを、さまざま切り口で見ていく。Appleは「iPhoneの価値」をさらに高められるか 新サービス発表の狙い
サンフランシスコで行われた米Appleの新サービス発表会を現地で取材。この発表が何を意味するのかについて考察する。Appleが「HomePod」を作った理由
AmazonやGoogleが先行するスマートスピーカー。Appleの「HomePod」は後発になりますが、違いはやはり音楽へのこだわりのようです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.