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新「MacBook Air」を試して分かった真の実力 2020年の“標準Mac”が誕生本田雅一のクロスオーバーデジタル(2/4 ページ)

2020年3月18日に発表された新型「MacBook Air」の実機を速攻でレビュー。旧モデルや「13インチMacBook Pro」と比較しながら、新たに採用した第10世代Coreの性能やMagic Keyboardの使い勝手をチェックしていく。

熱設計の最適化で最大限の性能を引き出している?

 昨今のパソコン用マイクロプロセッサは、単純にプロセッサメーカーのスペック通りに動かすだけでのものではなくなってきている。同じプロセッサを採用していても、製品の熱設計によって性能は異なる。

 これはAmber Lake搭載の前モデルから感じていたことだが、Appleはプロセッサをスペック通りに使うのではなく、動作状況に応じてそのシステムの性能を引き出すようチューニングしているのかもしれない。

 例えば本来の動作周波数よりも低いところで使って発熱を抑えたり、あるいは熱設計上の余剰分を使ってより高い動作周波数で動かすといった調整は、設計時に行えるようになっており、どのメーカーも取り組んでいるが、それを徹底的に行って性能を引き出しているではないだろうか。

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 というのも、シングルスレッドやGPUでの演算成績は良かった新型MacBook Airだが、一方でマルチスレッドでのテストは振るわず2600前後だったからだ。13インチMacBook Pro (2018)では3900前後となり、同じクアッドコアにもかかわらず(搭載スマートキャッシュも同容量)処理性能は逆転する。

 もっと多くのテストが必要だろうが「あらかじめ大きめのエンジンを載せて余裕の瞬発力を引き出し、実際にどこまでパワーを使えるかは状況次第で制御」としているのではないだろうか。

 例によってAppleは採用するIntelのプロセッサが、どのモデルであるのか詳細について言及していないが、例えば本機にオプションで用意されるCore i7は、ベースの動作周波数1.2GHzで、Turbo Boost時に3.8GHz。ところが、Intelはこのスペックにぴったり当てはまるプロセッサをアナウンスしていない(ベース1.3GHz・最大3.9GHzのSKUはある)。

 持続的な高負荷処理でも性能を最大限に引き出したいならば、エアフローを大きく取ったMacBook Pro、日常的な作業の中でのスムーズな動きや瞬発力で十分ならば、まるでファンレス設計のようなたたずまいのMacBook Airと、設計の最適化の方向を変えているのだろうと感じた。

 実際にはテストをしていないが、Core i5を搭載するテスト機よりもコア数(およびGPUの実行ユニット数)が少ないCore i3のローエンドモデルでも、テスト機と同等のシングルスレッドの性能が出ると予想される。

搭載キーボードは「16インチMacBook Pro 16」と同じに

 実はこの記事は新型MacBook Airで執筆している。搭載しているキーボードは「Magic Keyboard」と呼称されているが、これは2019年発売の「16インチMacBook Pro」に搭載されたものと全く同じものだ。バタフライ構造と同等の安定性を持つキートップ、薄く仕上げられたシザー構造、それに的確なタッチをもたらすラバードームなど、キーコンポーネントは共通している。


一新されたキーボード。右下の矢印キーは新たに逆T字型配列になった

 実際のタッチとなると、搭載するシャシーの剛性や組み込まれる位置と周囲にある部品との関係などで微妙に変化するものだが、感覚的には同じと言っていい。シザー構造でキーストローク1mmのキーボードは、タイピングがとても静かで、シャープな感覚や適度なストローク感を伝えながらも、底を突くときの感触は柔らかだ。

左が新しいキーボード。右の旧モデルに比べてキーストロークに余裕があるのが分かる

 Windows搭載機も含めると話はややこしくなってくるが、ここ数年、使われてきたバタフライ構造よりもトータルの体験はよく、また以前の1.5mm程度のキーストロークを持っていた当時のキーボードよりも省エネで軽く入力できる。

 この辺りは好みもあるだろうが、旧モデルのキーボードは、ストロークが短すぎるためゴミの混入でキー入力が不正確になったり、ちょっとした経年変化でチャタリング(多重入力)が発生したりといった症状が現れる場合があった。その対応として、該当するキーボードを搭載する全製品が無償交換対象となっていることを考えると、安心感があることも確かだ。

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