「Windows 10X」中止が与える影響と「Surface Neo」の今後:Windowsフロントライン(1/3 ページ)
Microsoftが開発を進めていた新機軸のOS「Windows 10X」が開発中止となったようだ。これまでの流れと今後についてまとめた。
MicrosoftやWindowsの最新事情に詳しいブラッド・サムス氏がPetriで5月7日(米国時間)に報じたところによれば、Microsoftは2021年中のリリースを計画していた「Windows 10X」の提供を中止し、少なくとも直近でのリリースは未定になっているという。
Windows 10Xで先行してお披露目されるとみられていた「Sun Valley」などの要素技術は、Windows 10の次期大型アップデート(機能アップデート)へと引き継がれることになるが、いわゆる「Santorini」や「Windows Lite」の名称で呼ばれていた“軽量版”Windowsの開発計画は事実上凍結され、Windows 10の開発本ラインへと引き戻された形になったと考える。
今回は、Windows 10X凍結後の「Windowsの今後」「Surface Neoはどうなるか」「Microsoftは何を考えているのか」という部分について考えてみたい。
“妥協しない”こと
Sams氏が記事中でも触れているように、Windows 10Xでの実装が予定されていた技術は既にWindows 10(の次期バージョン)で段階的に取り入れられており、技術そのものが放棄された訳ではない点に注意したい。
ただし、Windows 10Xの本当の“コア”であった「軽量版Windowsを作る」「2画面デバイスなどフォームファクターごとに最適なOSを提供する」という目標は今回の決定で潰えたとみられ、この点が非常に残念なところだ。
思えば、MicrosoftがWindowsそのものに変更を加えて「“モダン”なOSを作る」という目標を掲げてから10年以上の月日が経過している。2000年代には「Tablet PC Edition」という形で「ペン操作」を前提にした“コンバーチブル”なタブレットを市場に投入し、いわゆる「タブレットPCを流行らせよう」として、Microsoftはこの分野に先鞭(せんべん)をつけていたことが知られている。しかし、価格や耐久性、そして操作性そのものの問題もあり、残念ながらほとんど市場で受け入れられることがなかった。
ここでいう“タブレット”のコンセプトとは少々異なるものの、電子書籍や手帳のようなツールとして活用可能な2画面デバイス「Courier(クーリエ)」の開発を進めていたのもこの頃だ。コンセプト動画こそ紹介されたものの、なかなか日の目を見ることのなかったCourier。
2009年に入ると「Appleがタブレット(当時はSlateと呼ばれていた)製品を開発している」とのうわさが出るようになり、Microsoftはそれに先行する形で2010年1月初頭に開催されたCESにおいて「Windows 7を搭載したHP製のタブレット」のデモンストレーションを行っており、Amazon Kindleのアプリケーションを起動しながら「電子書籍リーダーとしてのタブレット」をアピールしていた。
多くが知るように、その月末にはAppleから「iPad」が正式発表され、(動作は不安定ながらも)豊富なコンテンツや操作性の面でライバルらを大きく引き離すデモンストレーションを披露しており、「タブレットとはこういうものだ」という方向性を明確にした。
今日においてもなお、コンシューマー市場におけるタブレット製品の盟主はiPadだといって問題ないだろう。後述するが、「Compromise(妥協する)」という点において、MicrosoftはあくまでPCとタブレットの融合を目指したのに対し、Appleは独立した製品カテゴリーとして操作性や製品体験の面で両者を明確に区別した。
“妥協しなかった”Microsoftと“妥協した”Appleという対立構図だが、筆者の個人的意見でいえば、現時点において後者のアプローチの方が「Better」だったのではないかと考えている。
もちろん、Microsoftなりに懸命の努力は行った。
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