ワコムの新開発ペンはWindowsタブの救世主? 絵師目線で「FMV LOOX」をレビュー:ある日のペン・ボード・ガジェット(5/6 ページ)
イラストレーター refeiaさんの連載第2弾は、Windows搭載タブレットの新モデル「FMV LOOX」です。富士通クライアントコンピューティング(FCCL)が、約11年ぶりに発売したFMV LOOXシリーズの出来栄えは?
イラスト作業での使用感をチェック
というわけで、今回は実作業をするにはつらい問題があるので、作業っぽい操作をシミュレーションしながら、(座標ズレがない状態での)イラスト制作での使用感を見て行こうと思います。
ますはラフから行きます。軽い筆圧が自然に使えるため、鉛筆風のブラシで強弱を使ってサクサクと案を練っていきやすいです。また、Apple Pencilよりも少し当たりが柔らかいのも好みです。
線画は正確さが大事なので、筆圧をかけたときのペン先の滑りやすさがポイントになります。本機は摩擦が小さく、軽い筆圧でスルスル描きたい人は気に入るでしょう。逆に、筆圧で摩擦を増して線を安定させたり、大きな強弱をつけたりしたい人には、あまり好きになれない描き心地かもしれません。対してiPad Proは、画面の皮脂を拭いておけばしっかりした摩擦が得られます。
ホバー機能も快適に動作して、ブラシカーソルを見ながらペン先を下ろすことができます。また、従来の静電気センサー式でありがちだった、画面に触れた瞬間にカーソルが飛んで意図しない描画位置になってしまう現象も、本機は問題ありませんでした。
やはり発熱は厳しい
今回は、彩色で本体温度についてチェックをすることにしました。室温26度ぐらいで、自分が普段使用している設定に近いブラシで1時間、集中して作業した場合を想定して休まず塗り続けます。その結果、CPUに近い特に熱い部分は約46度、中央近辺は約40度になっていました。
手袋をしないで作業したときの実感としては、左側の熱い部分は触ったらすぐ離したくなり、中央あたりは作業できなくもないけど快適とは言いがたいと感じました。ボディーの裏側もアルミなので触ると熱を感じやすく、左手で支えたりしたくありません。
熱を別にすれば、塗っている間の挙動は期待よりも良かったです。イラスト作業は(ユーザーがサボっていなければ)継続的な負荷なので、散発的な負荷が多い一般用途と比べてCPUが休んだ後の瞬発力を発揮する機会は少ないです。
そのため、先に感じたほどのサクサク感はありませんでしたが、本体が熱いからといって低速化することもなく、比較的手の込んだイラストでも集中し続けられるレスポンスを維持していました。フルHDという、欲張らない解像度も功を奏していると思います。
筆圧はやはり好感触
筆圧の感触はやはり良いです。ワコムの「Cintiq Pro」で作業している際と比べて、あまり感覚を変えなくても思ったように濃淡やグラデーションを作ることができるので、だんだんうれしくなってきました。
全体としては、Apple PencilやGalaxy TabのSペンのような優れたペンと比べても競えるレベルにあると感じました。座標ズレと発熱の問題がなければ、もっと使い込んでみたいと思える使用感ですね。
バッテリー持続時間は素晴らしくないものの、熱の問題は緩和
バッテリー駆動状態でしばらくイラスト作業をしてみたところ、4時間程度でバッテリーの残量がゼロになるペースで減りました。CPUの動作などが控えめになるのか、表面の熱さは上に書いたよりは穏やかで、電源に接続しているよりは快適に作業できました。
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