脳腫瘍から始まったデジタル終活ツール「まもーれe」:古田雄介のデステック探訪(3/3 ページ)
自分の身に何が起きてもデジタルの持ち物を託すべき人に託し、隠したいものは隠しきる。実体験からそのためのWindowsツール「まもーれe」を開発したMONET代表の前野泰章さんが重視したのは、徹底したローカル化だった。
ローカル性を強化する宝の地図サービスも投入
約2年近く経った2021年3月、前野さんは「まもーれe CoCo-Dayo」(マモーレ ココダヨ)という追加サービスもリリースした。PCやエンディングノート、遺言書などの置き場所を家族などに知らせるための“宝の地図”を作成する無料サービスだ。
「公開から1年経った頃に『じゃあ、家族用に作ったパスワードはどうやって渡すの?』『どのPCに入れているかどう伝えるの?』という質問をたくさん受けるようになりまして。せっかくだからエンディングノートや遺言書など、他の書類でも使えるようなサービスを作ろうと考えたんです」(前野さん)
公式ページでCoCo-Dayoを申し込むと、地図に書き込む情報を入力するフォーム画面が表示される。こちらに保管しているPCや書類、連絡してほしい相手などの情報を書き込んで、1枚の用紙にまとめる流れだ。
こちらは逆に作成までWebで作成が完結するため、OSを選ばずに利用できる。
作成したPDFを印刷、つまりはローカル化して家族に渡したり、預金通帳などの重要書類と一緒に保管したりすることで、緊急時に対応してほしい人を対応してほしいモノに誘導する動線ができあがる。
提供から4年経ち、Lite版の利用者は50代男性を中心にじわじわと伸び続けているという。Pro版の収益化も含めて長い目で見据えて提供していく構えだ。自宅や自部屋の中で終活を完結させるなら、試してみる価値はあるだろう。
関連記事
「デジタル遺言」の可能性――遺言書を作成できるアプリの開発元に聞く
チャットで質問に答えていくだけで、遺言書につづる文言が自動で作成されるアプリがある。世界的にデジタル×遺言の動きが進む中で、どんなニーズをつかんでいるのか。遺言書自動作成アプリ「らくつぐ」を開発した司法書士事務所を尋ねた。なぜ象印は20年前から見守りサービスを続けているのか
不測のデス(death)をテクノロジーで防ぐのもデステックだ。2001年から通信技術を使った見守りサービス「みまもりほっとライン」を提供している象印マホービンに、その狙いを尋ねた。20年以上続けるのはだてじゃない。シェアリングサービス企業がオンラインペット霊園「メモリアール」を運営する理由
亡くなったペットのメモリアルページを作れるSNS型サービス「メモリアール」のβ版を公開されてから、2年が経とうとしている。コミュニティーとして順調に育つ背景には何があるのだろうか。メガバンク提供の情報管理サービス「SMBCデジタルセーフティボックス」が解決する悩み事
今の時代は、IDやパスワードなどのもろもろを死後のことまで考えてメガバンクに預けることもできる。三井住友銀行が「SMBCデジタルセーフティボックス」の本格提供を始めて1年。どんな人にどのように生かされているのか。その実情をのぞいた。死後に困らない&困らせないアレコレをスマートに託せる「lastmessage」
自分が死んでしまった際にメッセージを発信したり、抹消したいIDを消したりといったことを託せるサービスが増えている。しかし、利用者との約束を果たさないまま姿を消すサービスも多い。2020年3月に提供を始めた「lastmessage」はどうなのだろうか?フリーソフト「死後の世界」が19年以上も現役であり続ける理由
前回のログインから一定時間が過ぎたら、あるいは期日指定で特定のフォルダーが削除できる「死後の世界」。Version 1.00が完成して以来、19年以上も提供を続けている。息の長いこのフリーソフトはどのように作られ、管理されてきたのだろうか。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.