AI導入で仕事の効率向上は理解 しかし必要なインフラを用意できていない――AMDが企業の「AI×IT環境」を調査
AMDが米国、イギリス、ドイツ、フランス、日本の各国のITリーダー500人ずつに行った調査の結果を公表した。日本に絞って見てみると、AI技術導入そのものを楽観視する傾向は他国とさほど変わらないが、予算の確保や技術の導入面などに課題を抱えていることが浮き彫りになった。
AMDは8月15日(米国太平洋夏時間)、日本を含む5カ国で実施した調査レポート「AIの展望:IT部門はAI時代の到来に備えているか」を公表した。調査によると、企業のITリーダー(情報システム部門の責任者)の多くAI(人工知能)を業務に取り入れることのメリットを十分に承知している一方で、そのために必要なインフラを導入できていないケースが少なからず存在するという。
- →発表に関するニュースリリース(英語)
同社の日本法人である日本AMDは9月12日、本レポートを含めたAIに関する取り組みを記者向けに説明した。日本のITリーダーたちは、AI技術についてどのように考えているのだろうか。
同じく説明会に登壇した、AMDのジャスティン・ガルトン氏。コマーシャルクライアントビジネス ワールドワイドMNCセグメントのリーダーとして、法人向けクライアント製品(Ryzen PROシリーズなど)を担当している
AIへの受け止めは「楽観的」だが普及に課題も
今回の調査は、米国、イギリス、ドイツ、フランス、日本の各国のITリーダー500人ずつ(計2500人)を対象に行われた。
それによると、5カ国のITリーダーの約4分の3は「AIがもたらす潜在的なメリット」を楽観的に捉えているという。日本に絞ると約3分の2と比率が少しだけ下がるものの、おおむねAI技術の導入には楽観的な傾向にあるようだ。
日本のITリーダーの半数は従業員の作業効率の改善にAI技術が役立つと認識しており、既にAI技術を取り入れている企業の73%はその効果を実感しているという。
一方で、課題もある。AMDによると、日本では5カ国平均、あるいは他の4カ国と比較した際に以下の傾向が見られたそうだ。
- AI技術の導入(拡大)に向けた予算確保をしている企業が61%と、5カ国全体(約3分の2)よりもやや低め
- ドイツは79%、フランスは76%と高めだった
- 自然言語処理アプリ(ChatGPTなど)を利用したことがない企業が55%と高め
- 5カ国平均では52%で、一番高かったのはイギリスの59%だった
- プロセス自動化アプリを利用したことない企業が50%と、他国よりも比率が高い
- 51%の企業がAIの完全整備に1~5年かかると回答
- 5カ国全体では44%だった
- 自社でAIを導入する準備ができていない企業が56%と、他国と比べて多い
- 5カ国全体では46%だった
- AI処理をするためのITインフラを持っていない企業が64%と、他国と比べて多い
- 5カ国全体では52%だった
- 日本は技術スタックの整備状況もワースト(対応できているとの回答が47%)
ただ、程度の差こそあるものの、日本を含む5カ国においてAIの「潜在的なセキュリティリスク」「インフラ整備の遅れ(投資不足)」「人的トレーニングの遅れ」に関する懸念は共通しているという。
これらの課題を解決すべく、AMDはオープンソースコミュニティや大手ソフトウェアベンダー(Microsoftなど)と強力しつつ、AIに関するソリューションを広範に開発している。
とりわけ、ビジネス向けノートPC用APU「Ryzen PRO 7040シリーズ」は、コンシューマー向けの「Ryzen 7040シリーズ」と並んで、一部のモデルを除きAIプロセッサ「Ryzen AI」を搭載している。
AIプロセッサを搭載しているx86アーキテクチャのCPU(APU)は、現時点ではAMDにしかない(競合は2023年末に登場予定)。同社は「少しでも早く、幅広くAIを使うならAMD」とアピールしたいようである。
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