QualcommがPC向けハイエンドSoC「Snapdragon X Elite」を発表 CPUもGPUもNPUも高速なのに省電力:搭載モデルは2024年中盤に登場
Qualcommが、ノートPC向けの新型SoCを発表した。従来モデルから大幅にパフォーマンスを引き上げ、x86ベースのノートPC向けCPUにも劣らないどころか上回るパフォーマンスを手に入れたという。
Qualcommは10月24日(ハワイ時間)、PC向けの新型SoC(System-on-a-Chip)「Snapdragon X Elite」を発表した。搭載製品は2024年中盤から順次登場する見通しだ。
Snapdragon X Eliteの概要
Snapdragon X Eliteは「Performance Reborn(パフォーマンスの復活)」を標榜し、CPUコア、GPUコアやNPU(AIプロセッサ)コアなどを強化することで、x86アーキテクチャのSoC(CPU/APU)を上回るパフォーマンスを発揮しつつ、高い省電力性を確保したという。製造プロセスは4nmとなっている。
CPUコアは「Qualcomm Oryon」を12基搭載している。最大3.8GHzで稼働するが、1~2コアに限り稼働クロックを最大4.3GHzまで引き上げられる「ブーストアップ機能」も備えている。
従来のPC向けSnapdragonではパフォーマンス重視のCPUコアと省電力(高効率)重視のCPUコアを混載する「big.LITTLEアーキテクチャ」を取っていたが、本SoCではパフォーマンス重視コア(=Oryon)のみを搭載している。しかし、それでも競合のノートPC向けCPU(SoC)と比べて省電力であることが特徴だという。
同社による自社計測値だが、「Geekbench 6.2.1」におけるシングルコアスコアは、Intelの「Core i9-13980HX」やAppleの「M2 Maxチップ」を上回りつつも、消費電力を前者に対しては最大70%、後者に対しては最大30%削減できるという。マルチコアスコアについても、「Core i7-1355U」や「Core i7-1360P」と比較して最大で60%高速で、かつ消費電力を最大65%削減できているという。
GPUコアは「Qualcomm Adreno」を搭載する。Adrenoには複数の型番(モデル)が存在するが、Snapdargon X Eliteに搭載されるものについては型番が記載されていない。スペック的には、APIは「DirectX 12」に対応し、ピーク時の浮動小数点演算能力は4.6TFLOPSだ。H.264(MP4)/H.265(HEVC)形式の動画のエンコーダー/デコーダーも統合されている。
映像は内蔵ディスプレイに対して最大4K(3840×2160ピクセル)/120Hz、外部ディスプレイ(DisplayPort 1.4)に対して最大4K/60Hzで出力可能で、いずれもHDR10規格のHDR信号を付与できる。外部映像出力は、最大で3画面まで同時に行える。
同社によると、AdrenoのパフォーマンスはIntelの「Core i7-13800H」の内蔵GPU(Iris Xe Graphics)と比べて最大2倍で、ピーク時の消費電力は最大74%削減できるという。また、AMDの「Ryzen 9 7940HS」の内蔵グラフィックス(Radeon 780M)と比べてもパフォーマンスは最大1.8倍、消費電力を最大80%削減できるという。
NPUコアは「Qualcomm Hexagon」で、ピーク時の処理性能は4.5TOPSだ。
その他、主要なスペックは以下の通りとなる。
- メインメモリ:LPDDR5-8533規格(最大64GB)
- 対応ストレージ:SD 3.0、SSD(PCI Express 4.0 x4)、UFS 4.0
- ISP(イメージ処理プロセッサ):内蔵(Qualcomm Spectra)
- セルラー(モバイル通信)機能:対応(Snapdragon X65 5G)
- 最大通信速度(5G NRの理論値):最大10Gbps(下り)/3.5Gbps(上り)
- 無線通信:対応(Qualcomm FastConnect 7800
- 無線LAN:Wi-Fi 7(IEEE 802.11be)/Wi-Fi 6E(IEEE 802.11ax)対応(※1)
- Bluetooth:Bluetooth 5.4対応
- 外部インタフェース(※2):USB4(最大3ポート)、USB 3.2 Gen 2(最大2ポート)
(※2)内蔵機器向けのUSB 2.0ポートも1基備えている
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