Lenovoは「AI」にどう取り組む? デバイス部門のダリル・クロマーCTOに聞く:独占インタビュー(3/3 ページ)
スマートフォンで先行していたNPU(ニューラルプロセッサ)搭載の動きが、PCにも広がりつつある。いわゆる「AI PC」が本格普及しようとする中、LenovoはPCやスマホのAIについてどのように考えているのだろうか。デバイス部門の責任者に話を聞いた。
AI PC時代の大和研究所の役割
―― 研究開発といえば、日本にはレノボ・ジャパンの大和研究所があります。AI PC時代に同研究所はどのような果たす役割を果たすのでしょうか。
クロマー氏 大和研究所はLenovoにおいて重要な研究開発拠点の1つで、長年に渡ってThinkPadシリーズの研究開発を担ってきました。私たちのAI PCの創造においても、大和研究所の貢献は大きなものです。
ビジネスPCにおけるAI利用も期待
―― Lenovoは「ThinkStation」や「ThinkPad Pシリーズ」のようなPCベースのワークステーションも販売しています。今後、ワークステーションにもNPUの搭載が進んでいくと思いますが、ワークステーションを含むビジネスPCは、コンシューマーPCとは異なるAIの使い方(使われ方)になるのでしょうか。
クロマー氏 違う部分は出てくると思っています。クラウドサービスにも「コンシューマー向け」と「ビジネス向け」がありますが、それぞれにサービス面での差分があるのと同様です。
コンシューマーであれば、ゲーミングや教育でもAIの利用が進むと見ています。また、パーソナルファウンデーションモデルが普及すれば、個々人の人生における重要な意思決定にもAIが使われるかもしれません。
ビジネスでは、生産性の向上、業務の効率化、(業務への)理解を深める用途でAIが使われるでしょう。クリエイティブでも、3Dモデリングの生成などでAIが活用が進むと思います。
「AIが話題になっている」という冒頭の話に戻りますが、そもそもなぜAIに多くの期待が集まるのかといえば、特に生成AIは“あなた”も“私”も使える新しい技術だからという面もあります。
自分の娯楽に使うこともあるでしょうが、その過程でクリエイティブな作業に参画することもあるでしょう。Copilotを使って(プログラムの)コーディングをすることや、ChatGPTを使って何かを質問することも含めて、非常にオープンかつインクルーシブ(包摂的)な形で(今までできなかったことに)参画できるということが重要なのです。
コンシューマーであれ、SMB(中小ビジネス)であれ、エンタープライズ(大規模ビジネス)であれ、文教分野であれ、製品にAIを始めとする新しい機能を搭載することで、私たちの製品をより便利に使っていただきたいと考えています。
LenovoはAIでどんな世界を目指す?
―― Lenovoとして、AIを使ってどのような世界を構築していきたいのか、考えがあれば教えてください。
クロマー氏 私個人は1987年、当時のIBMが「PS/2(Personal System/2、※1)」をリリースした頃からPCビジネスに携わっています。「PCの体験をユーザーにとってより良くしよう、改善しよう」という思いで仕事をしてきました。
今後、(NPUを備えるデバイスによって)新たな体験を提供していくことになりますが、「みんながデバイスを理解する」のではなくて「デバイスがみんなを理解する」ということが重要なのだと思います。より使いやすくなって、より楽しくなって、そして生産性も向上する――そんなPCやタブレット、スマホを提供していくことが、私たちの使命ですし、そのような機会を提供できることを光栄に思っています。
(※1)日本では、基本的にハードウェア(ごく一部のモデルはソフトウェア)で日本語表示/入力機能を追加した「PS/55(パーソナルシステム/55)」として販売された。ちなみに、現在も一部のPC(マザーボード)で使われているPS/2端子は、その名の通りPS/2シリーズで初めて使われたものである
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