コラム

「Next GIGA」で学習用端末はどう変わる? 「教育DX推進フォーラム」で見たPC/周辺機器メーカーの戦略(3/4 ページ)

「GIGAスクール構想」で小中学校に導入された学習用端末のリプレースが2024年度から始まった。ピークは2025~2026年度にかけてやってくるが、調達方法が変更されたこともあり、PCメーカーは自社を採用してもらおうとアピールに余念がない。周辺機器メーカーと合わせて、「2024年度 教育DX推進フォーラム」の出展内容からその動向を探ってみよう。

「デジタルと紙の併用」を見据えたエプソン販売のソリューション

 プリンタやプロジェクターの販売を手掛けるエプソン販売は、複合機を含むプリンタ関連製品と超短焦点プロジェクターを中心に展示していた。


エプソン販売のブース

 同社の担当者によると、教育関係者からは「デジタルだけでなく、紙も併用することでより深く学べるような環境作りをしたいという声をいただいている」という。

 そこで小型プリンタを教室やフロアに設置し、児童/生徒が自分で印刷できる環境を構築することを提案しているとのことだ。販売価格は実売ベースで10万円以下だが、プリンタは文部科学省の教材整備指針からは外れる機器のため、あまり導入は多くはないという。1人1台の端末導入が進んだ状況を活用するための“教材”と考えて取り入れてみてはどうか、という発想だ。

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教室やフロアに小型プリンタや小型複合機の導入を提案しているという。写真の複合機「PX-M791FT」は、ChromeOS(Chromebook)からの印刷にも対応しているので、学習用端末との相性もバッチリだ

 また同社では、プリンタ/複合機のサブスクリプションサービス「スマートチャージ」に学校/教育機関向けに「アカデミックプラン」を用意している。本サービスではプリンタ/複合機の本体だけでなくインクもサブスクリプション対象となる。

 料金は印刷枚数をもとにした従量制だが、自治体(教育委員会)単位での契約とすることで、印刷枚数による学校間の経費格差も吸収しやすい。何より、インクやその他消耗品が少なくなったら自動的に送付されるため、教職員が発注や在庫管理をする必要もない。

 「先生方の働き方改革にもつながると評価いただいています」と担当者は語る。


エプソン販売のブースには、スマートチャージ対応の複合機「LX-10050MF」が持ち込まれていた。本機もアカデミックプランの対象だ

 一方、超短焦点プロジェクターは、主に教室の黒板(またはホワイトボード)に映像を投影する目的で引き合いが多いという。今回同社は電子黒板機能付きモデル「EB-1485FT」を持ち込んでデモンストレーションを実施していた。

 このモデルはフルHD(1920×1080ピクセル)対応で、設定次第で2画面同時投影も可能だ。「複数の教材を同時に表示したいという要望が多い」ことから機能実装したという。先述の通り、電子黒板機能も備えているので、電子ペンを使えば投影画面に書き込みをしつつ授業を進めることも可能だ。

 本製品の実売価格は40万円台だが、「各教室のプロジェクター設置は(文部科学省の)教材整備指針に含まれていることもあり、多くの学校に導入される動きが出てきている」とのことだ。


電子黒板機能付きの超短焦点プロジェクター「EB-1485FT」

電子ペンを使うと、投影している画像に直接書き込みを行い、反映させることができる

「校内ネットワークの高速化」を推進するバッファロー

 PC用周辺機器で知られるバッファローのブースでは、法人向けのWi-Fi(無線LA)Nアクセスポイントが展示されていた。同社が特に注力しているのは「マルチギガビット対応」モデルだ。


バッファローブースはWi-Fiアクセスポイントの展示がメインだった

 GIGAスクール構想というと学習用端末が注目を集めがちだが、実は学校のネットワーク環境も大きな課題の1つだったりする。これは文部科学省も認識しており、改善に向けた指針を示している。

 今後の学習指導要領の改訂に向けて、同省は「CBT(Computer Based Testing:端末を使った試験)」の導入を推進しており、2027年度までに「全国学力・学習状況調査」における紙テストを廃止する方針も示された(参考リンク)。「ネットワーク環境を改善せよ」と指示を出すのは、このような背景もある。

 外部ネットワークへの接続面では、学校に引き込むブロードバンド(バックボーン)回線の高速化も対策の1つとして上げられており、最近ではマルチギガビット(1Gbps超)の回線を導入するケースも見受けられる。

 当然、校内ネットワークも外部ネットワークの改修(変更)に合わせて改修される。その際に、有線ルーター/スイッチもマルチギガビット対応品にリプレースされることも多い。

 担当者は「(校内ネットワークが)マルチギガビット対応になった場合でも、アクセスポイントがマルチギガビット対応なら高速化したバックボーンネットワークやWi-Fi 6/6E(IEEE 802.11ax)のポテンシャルを生かせる」と語る。GIGA 2.0向けの学習用端末にWi-Fi 6/6E対応モデルが多いことを見越したアピールともいえる。


左がWi-Fi 6対応の「WAPM-AX8R」、右がWi-Fi 6E対応の「WAPM-AXETR」。どちらも有線区間において2.5GBASE-T(2.5GbE)に対応している

 法人向けのネットワーク機器は5年保証が基本だが、実際の使用期間は7~8年程度だという。バッファローの担当者は「GIGA 1.0に向けて整備された無線LANはWi-Fi 5(IEEE 802.11ac)対応が多いと思いますが、Next GIGAではWi-Fi 6が標準になっています。2027年頃が更新の目安(ピーク)になるのではないか」と予測する。

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