Nehalemの機能をメインストリームで──Core i7-870とCore i5-750の“突発”性能を楽しむ:イマドキのイタモノ(4/4 ページ)
“Lynnfield”こと、Core i7-870と同860、Core i5-750が9月8日にインテルから発表された。上げ幅を増やしたIntel Turbo Boostのかっとび度はいかに?
Intel Turbo Boostは確実にスコアをBoostする
Intel Turbo Boostをオフにした条件でCore i7-940とCore i7-870を比較してみると、接戦はしているもののCore i7-940がやや優位だ。同じ動作クロックで同じ数のスレッドが動いているCPUだが、Sandra 2009 SP3のMemory Bandwidthテストで3Gバイト程度の差が出ているように、DDR3-1066のトリプルチャネルで動くCore i7-940とDDR3-1333のデュアルチャネルを利用するCore i7-870という、メモリ関連の仕様の違いが影響している。
一方、Intel Turbo Boostをオンにすると、Core i7-870がCore i7-940と同等か、Core i7-870がやや上回るケースが多くなる。Lynnfieldで5binまで用意されたIntel Turbo Boostは、テストによってメモリ帯域幅の不利を跳ね返すほどの効果を発揮するようだ。なお、実際にIntel Turbo Boostでクロックがどの程度引き上げられているのかを目測したところ、Core i7-870でシングルスレッド時に26倍(4bin相当で3.47GHz)、マルチスレッド時に23倍(1bin相当で3.06GHz)であった。
つぎにCore i7-920とCore i5-750とをIntel Turbo Boostオフ時で比較してみよう。この2つのCPUでは、メモリチャネル数とともにHTの対応に違いがある。例えば、SandraのCPUテストやCinebenchのマルチスレッドレンダリングで、4コア4スレッドのCore i5-750は4コア8スレッドのCore i7-920に大きく引き離されている。一方で、SYSMarkやPCMarkといったアプリケーションベンチマークでは、それほど差が開いていない。Core i5-750でIntel Turbo Boostをオンにすると、SYSMarkやPCMarkなどアプリケーションベンチで、ひとつ上のクラスのCore i7-940に迫るスコアを記録している。
同様に、Core 2 Quad Q9650とCore i5-750を比較すると、Core i5-750でIntel Turbo Boostをオンにすれば、ほぼ同等のスコアになっている。なお、Phenom II X4 965とCore i5-750を比較してみると、実アプリケーション系のベンチマークでPhenom II X4 965が優位に立っていることも分かった。
システム全体の消費電力測定では、プラットフォームがまったく異なるため厳密な比較とは言えないものの、ピーク時の消費電力、アイドル時の消費電力ともLynnfieldがBloomfieldより低い。TDP 130ワットと95ワットの差と考えていいだろう。特筆すべきはTDP 95ワットのCore 2 Quad 9650よりもLynnfieldプラットフォームが低い消費電力となったことだ。Lynnfieldでは、メモリコントローラとPCI Express x16コントローラがCPUに統合されたおかげで、これまでチップセットのTDPに含まれていたが分もCPUのTDPとして扱われる。そのCPUのTDPが95ワットに収まっているため、システム全体での消費電力も削減されたと考えられるだろう。
微妙なポジションながら、優れたコストパフォーマンスに注目
Intel Turbo Boostが効率的に機能することで、LynnfieldのCPUは、1つ上のクラスのCPUに相当する処理能力を発揮できる。トリプルチャネルのメモリや高いTDPといったBloomfieldの“取っつきにくさ”が解消されたことも評価できる。バリュークラスのシステムにグラフィックスカードを組み合わせることで、コストを重視しつつ高いパフォーマンスを実現したいユーザーに適したプラットフォームと評価できるだろう。
Core i7-870とCore i7-860はCore i7ブランドであるため、現行のBloomfieldとオーバーラップする価格帯で登場する。1000個ロットあたりの単価はCore i7-870で5万4560円、Core i7-860で2万7570円、Core i5 750は1万9030円が設定されている。Intel P55 Expressマザーボードも、SLI非対応のバリュークラスで1万2000円前後から登場する。Lynnfieldの登場によってコストが引き下げられることで、より多くのユーザーをNehalemに導くことになるだろう。
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