圧倒的ではないか――ベンチマークテストで見る「TS-639Pro」の実力:“真・最強NAS”活用術 第2回(2/2 ページ)
QNAPの「TS-639Pro」はハードウェア的に見るとほぼPCだ。Linuxベースで拡張性と自由度の高さが特徴だが、ベースはやはりNAS。NASの基本性能が劣るようであれば割高なNettopでしかない。第2回ではTS-639Proの性能を測定していく。
Intel NAS Performance Toolkit
Intel NAS Performance Toolkitを使ったテストでは、ファイル操作、動画操作、事務処理、バックアップ・リストアを想定したシナリオを実行した。
ファイル操作では1.4Gバイトのファイルコピーと2833ファイルを含んだディレクトリのコピーをシミュレートする。ディレクトリコピーは合計で247Mバイト、書き込みの平均サイズは41.4Kバイトだ。多くのファイルはサイズが小さく、52%がシーケンシャルアクセスとなる。
ファイルコピーは99.98%がシーケンシャルアクセスになるため、CrystalDiskMarkのシーケンシャル読み出し・書き込みと同様の結果が期待されるが、実際にはNASからのファイルコピーでCIFSがCrystalDiskMarkでのスループットを上回り、逆にiSCSIは下回るという結果になった。そのため、CIFSとiSCSIの差はさほど大きくない。むしろRAID 5ではCIFSがiSCSIを上回っている。逆にNASへのファイルコピーではRAID 5/RAID 6でのiSCSIの速度低下が見られるという意味ではCrystalDiskMarkの結果通りだが、それ以上にCIFSにも低下が見られた。
フォルダコピーでは総じてiSCSIに軍配が上がった。キャッシュなどの影響によると考えられるが、そもそも実装レイヤーに違いがあるiSCSIとCIFSであるだけに実際の用途では得手不得手が顕在化する傾向にあるようだ。
家庭内での個人用途を考えると、NASを動画用ストレージとして使用するというユーザーは多いだろう。実際、個人ユースで数Tバイト以上のストレージを必要とする局面のほとんどは動画だ。動画の再生・録画では、長時間にわたって一定以上の転送速度を保つ必要がある。直接NAS上に録画する場合には転送が間に合わなければ録画データ欠損が発生してしまうし、再生時に転送が追いつかないとコマ落ちが生じる。動画のためにNASを導入したものの、実際にはとても使用に耐えなかったために大容量をもてあましてしまう、ということは避けたいところだ。
動画再生テストでは10分間の720p HD MPEG2動画ファイル(1.3ギガバイト)を再生する。ユーザーレベルでは256Kバイト単位でのシーケンシャルアクセスとなる。RAID 5のCIFSの結果がややよい傾向にあるものの、CrystalDiskMarkのシーケンシャル読み込みテストとほぼ同様の傾向となった。シーケンシャルアクセスが99.72%を占めるテストであるだけに、当然の結果と言える。
一方、動画録画テストは約5分の720p HD MPEG2動画(1.6Gバイト)を録画するもので、CrystalDiskMarkのシーケンシャル書き込みテストとほぼ同様の傾向を示した。また、約500Mバイトの動画ファイルを読み出しながら、約400Mバイトの動画ファイルを書き込む動画録画中再生は、動画再生テストに比較的近い傾向となったが、iSCSIの高速性が目立ち、CIFSに比べて1.5倍〜2倍程度のスコアを出している。
動画編集テストはさまざまな素材のファイルを編集し、動画ファイルを出力することをシミュレートする。シーケンシャルアクセスが38.6%、読み出し11メガバイト書き込み136メガバイト、総アクセスファイル数98という、より実践的な内容だ。ランダムアクセスが増えるとCrystalDiskMarkでの結果のとおり、RAID5/RAID6でのiSCSIの落ち込みが目立ち始める。このあたりはやはりローカルディスクを使用して編集、そのバックアップをNASに取る、という運用とすべきだろう。
事務処理は一般的なオフィスでの業務をシミュレートしており、読み出し/書き込みとも約1.4Gバイト、トータルで2.8Gバイトのデータが転送される。そのうち79.66%はシーケンシャルアクセスで、12バイトから200Mバイト超までの616ファイルを使用する。ファイルサイズの中央値は読み出しで2.2Kバイト、書き込みで1.8Kバイトとなっている。RAID 0のiSCSI(バーチャルスペースアロケーション)の値が突出していることを除けばCIFSに比べてiSCSIが若干有利であり、差は小さいながらRAID 0、RAID 5、RAID 6の順で高速という順当な結果だ。
大容量NASの用途としてはバックアップも外せない。特に複数PCのバックアップ先として利用する場合、バックアップファイルそのものは共有する必要がないためにiSCSIで各PC用の領域を用意するという方法も考えられる。さらにこの場合はバーチャルスペースアロケーションを有効にしておくことでディスク容量を有効に活用できる。
例えば、同じHDD容量を持つPCを使っていても、使用容量が異なればバックアップに必要な容量は異なる。しかし、そのために各PCごとに異なる容量のバックアップ領域を割り当てることは難しく、不公平感にもつながりかねない。かといってすべてのユーザーに対して同じ容量を割り当てるとむだが多くなってしまう。そこでバーチャルスペースアロケーションを有効にし、各PCには同じ容量を割り当てておけば、NAS上では実際に利用した分だけが確保されるというわけだ。
さて、テストの結果を見ると、バックアップに関してはRAID 0の場合にiSCSIが突出しているほかはCIFSやや有利で、リストアではiSCSIが有利という結果となった。ただし、注意が必要なのはリストアだ。OSのシステムドライブのリストアは通常、バックアップソフトのブータブルCDから起動して行う。その際のOSはLinuxなどのそこからiSCSIイニシエータが有効になっているかはあらかじめ確認しておく必要がある。
RAID 0と相性のよいiSCSI、コンスタントに性能を発揮するCIFS
ベンチマークテストの結果を見ると、ブレの激しいiSCSIと、突出した成績にはならないものの均質なスコアのCIFS、といった印象を受ける。同じプロトコルでは基本的にRAID 0、RAID 5、RAID 6という順位だ。5台構成のRAID 5と6台構成のRAID 6では読み出し/書き込みともにほとんど差がなく、TS-639Proの処理能力の高さを証明した格好となった。まさに“最強NAS”の名にふさわしい製品だ。
次回はQNAPの製品を使って、NASサーバだけにとどまらない家庭内サーバとしての便利な活用方法を見ていく。
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