レピュテーション技術で最高クラスの保護を実現――「ノートン 360 バージョン4.0」:iPhone向けデータ共有アプリも
シマンテックは2月23日、同社製セキュリティスイートの最新版「ノートン 360 バージョン4.0」を発表した。レピュテーション技術の導入や、オンラインバックアップ機能の強化が見どころだ。
レピュテーション技術を導入、オンラインストレージはiPhoneで共有可能に
ノートン 360は、マルウェア対策やファイアウォールといった一般的なセキュリティ機能に加えて、システムチューンアップやバックアップ機能なども網羅した統合型セキュリティスイートだ。同日行われた製品発表会では、シマンテックコンシューマー事業部門シニアマネージャの風間彩氏が登壇し、最新版の特徴を説明した。
ノートン 360 バージョン4.0の主な強化点は大きく分けて3つ。まず1つが保護機能の強化だ。具体的には「ノートン2010」で実装されたレピュテーション技術がノートン 360にも導入された。「Quorum」の名で呼ばれるこの独自技術は、数千万のノートンユーザー(ノートンコミュニティウォッチ)から収集した膨大なデータベースを背景に、プログラムやファイルの安全性を統計的に評価するもので、定義ファイルベースの保護では間に合わない新しい脅威に迅速に対応できる。事実、2009年12月に実施された第三者機関による検証では、同技術を導入したシマンテック製品が他社製品に比べてより高い保護性能を証明したという。
また、このレピュテーション技術により、検索エンジンの結果に表示されたWebサイトの安全評価を行う「ノートンセーフウェブ」も強化された。シマンテックによるとWebサイトの約27%が有害サイトであり、検索する単語によっては検索結果で表示される上位をほぼ占めることもある。検索結果の安全評価を行う機能は他社製品にも存在しているが、AVGの「LinkScanner」や、トレンドマイクロの「TrendProtect」、McAfeeの「Site Advisor」といった競合機能に比べて、ノートンセーフウェブはより検知率が高いとしている。
2つめのポイントは、システムへの負荷軽減だ。ノートン2010でも“世界最速・最軽量”をうたっているが、同様にノートン 360でも統合型セキュリティスイートとして最速のパフォーマンスを特徴としてあげている。CPUの使用状態に応じてプログラムを段階的に起動する起動マネージャが強化され、PCの起動速度が高速化したほか、スキャン時間やメモリ使用量もより抑えられている。
そして3つめがオンラインストレージ機能の強化だ。ノートン 360では、標準で2Gバイト、プレミア エディションで25Gバイトのセキュアオンラインストレージが利用できるが、このストレージ領域にWebベースでアクセスできるようになった。
これまでノートンオンラインバックアップのユーザーは、単にセキュアなデータ保管場所してオンラインストレージを使っていたが、これによりEメールリンクなどの形で、ノートンユーザーではない家族や友人とファイルの安全な共有が行えるようになった(保存時256ビット、送受信時128ビットで暗号化)。さらに今回、AndroidやiPhone向けのデータ共有アプリもβ版(英語版のみ)として公開された。発表会では、実際にiPhoneからオンラインストレージに3Gで接続し、ファイルをダウンロードしたり閲覧するデモが行われ、ただのバックアップ用ストレージではなく、どこでもメディアコンテンツの閲覧が可能な点をアピールしていた。なお、3月下旬発売とされているiPad向けのアプリケーションもリリース予定とのことで、こちらはiPhone向けとは違うビルドで開発され、iPadの広い画面に合わせた別のユーザーインタフェースになるようだ。これらのアプリはそれぞれApp StoreとAndroid Marketで無料で入手できる。
価格は標準パッケージが8480円、プレミアエディションが9980円、5台までインストールできるスモールビジネスエディション 5PCが1万6480円、同10PCが3万1480円(いずれもシマンテックストア価格)。スモールビジネスエディション以外は最大3台のPCにインストールできる。なお、ダウンロード販売は同日より開始されているが、店頭向けパッケージは2月26日に発売される。
同発表会では、シマンテック アジアパシフィックおよびジャパンのコンシューマー担当バイスプレジデントであるデイビッド・フリーア氏と、インターネットにまつわる消費者問題に詳しい弁護士の紀藤正樹氏が登壇し、インターネット犯罪の現状と対策をそれぞれの立場から語った。
フリーア氏は、2008年に発生したマルウェアによる攻撃は1カ月あたり2億4500万で、このうち90%が個人情報を狙ったものだったとシマンテックの調査を紹介し、2010年には1分間に5つの新しい脅威が生まれると予測する。日本国内においてもオンライン犯罪は増加傾向にあり、2009年前半の検挙数は3870件と前年同期比で79%増加、また不正アクセス禁止法違反も1965件と前年に比べて12.5倍まで増加したという。また、同社が4700人の国内オンラインユーザーを対象に実施した調査では、86%がセキュリティソフトを導入していたにも関わらず、43.5%がウイルスに感染した経験があると回答しており、購読期限の切れたセキュリティソフトを使い続けたり、フリーソフトなどを利用した十分ではないセキュリティ対策が問題になっていると指摘。オンライン犯罪から身を守るためには、インターネット上の情報を鵜呑みにしない慎重さや、最新の状態にアップデートされたセキュリティソフトを使用することが重要だと強調した。このほか、サイバー犯罪の危険性を解説する「シマンテック セキュリティ スクエア」や、ライブドア内に期間限定で開設した「ネット犯罪の恐怖から身を守る方法」など、啓発活動の一環として行っている取り組みも紹介した。
一方、インターネット利用者の立場からネットワーク犯罪の現状を語った弁護士の紀藤正樹氏は、犯罪分類で不正アクセスや詐欺以外の「その他」に分類されるモラル的な不当行為や迷惑行為は、すべてを犯罪化するのは困難だと説明し、“紀藤商法”として自身が名誉棄損されたケースを挙げながら、「例えば最も相談件数が多いはずの名誉棄損は年間50人ほどしか摘発されていない」と指摘。この理由にインターネットの匿名性や裁判にかかる費用、迷惑行為では警察がなかなか動かない点を“3つの壁”として挙げ、「被害者によっては、昔の恋人に個人情報を流されるといった、被害自体を知られたくないケースもある。実際は泣き寝入りが普通になっている」と、顕在化しにくいユーザー被害の実態を紹介した。同氏は「自分の身は自分で守るというのが今のインターネットの文化。ネット上でのびのびと活動するためにはやはり対策が必要で、仕組みの分からない多くの人にとって、サイバー犯罪から身を守るためには、セキュリティソフトの導入が最も助けになる」などと語った。
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