「高いレベルのセキュリティを安価に提供したい」――PC Toolsが日本参入:1年で1980円
セキュリティベンダーのPC ToolsがBBソフトサービスと提携し、日本の小売り市場に参入する。第1弾の「PC Tools Internet Security」は1980円の総合セキュリティ製品だ。
PC Toolsが日本市場に参入、「SoftBank SELECTION」として販売
セキュリティソフトベンダーのPC Toolsは7月6日、総合セキュリティソフト「PC Tools Internet Security」のパッケージ販売を開始すると発表した。同社は今回の日本市場参入にあわせてBBソフトサービス(以下、BBSS)と提携。その第1弾となるPC Tools Internet Securityは、BBSSが展開する「SoftBank SELECTION」ブランドとして販売される。同日行われた記者説明会で、PC Toolsワールドワイドセールス担当のロバート・ウースターゲトル氏(Robert Oostergetel)が日本市場参入の狙いを語った。
PC Toolsは、主にセキュリティやユーティリティ関連製品を手がけるソフトウェアベンダーの1つ。特にセキュリティ分野ではこの1年間で世界25カ国に進出しており、小売りの売上が前年比103%増と急成長中の企業だ。ウースターゲトル氏は「これまで販売チャンネルを直販から小売りへと大きくシフトしてきたが、今後1年でさらに12カ国へ進出したいと考えている。そのポイントになるのがここ日本で、PC Toolsの継続的な成長のためには必要不可欠な市場だ」と語り、今後アジアへ進出するための布石として日本市場が重要な足がかりになるという考えを示した。
また、同氏は「日本のセキュリティにおけるコンシューマ市場は14億円規模あると言われているが、その一部を取り込んでいくためには技術力の高いセキュリティソフトを求めやすい価格で提供していくことが重要になる」と説明し、1年間のサブスクリプションでPC1台用が1980円/PC2台用が3980円と、総合セキュリティソフトとしては安価な価格設定である点をアピールした。
なお、技術力の面でいえばPC Toolsの製品は比較的PCに慣れた上級者から定評があり、2008年10月にシマンテックによって買収されてからは、PC Toolsがバリューセグメント、シマンテックがプレミアムセグメントというすみ分けで製品展開を行っている(このためシグニチャレベルでの一部共有も行われている)。ウースターゲトル氏は「日本は我々にとって重要な市場だ。BBSSとの提携によりオンラインと小売りの双方で販売を拡大していきたいと考えている。今回(PC Toolsの)ロードマップに日本が含まれたことをうれしく思う」と日本市場の重要性を繰り返した。
クラウドベースの技術からビヘイビア検知まで、多段階でPCを保護
一方、PC Tools Internet Securityの詳細は、同社の上級主席ソフトウェアエンジニアであるロルフ・レパシ氏(Rolf Repasi)が説明した。同氏は「(オンライン犯罪は)麻薬取引よりも大きな産業になったと言われている。ブラックマーケットでは、社会保障番号やクレジットカード番号、生年月日といった個人情報が2ドル以下で購入できる状況だ」と述べ、現在インターネットを取り巻く脅威が金銭を目的とした犯罪組織によるものへと変化したことを説明したうえで、「(これらの犯罪者を)捕まえるのは困難だが保護を提供することはできる」と語り、改めてセキュリティの重要性を強調した。
また、脅威の主な発生源として中国やロシア、ブラジルなどを挙げ、ごく少数の国から発生したマルウェアが世界的な影響を及ぼしている現状を指摘したほか、日本では特にトロイの木馬が主要な攻撃となっている点など、セキュリティ脅威の最新動向を紹介した。なお、同社が調査した統計結果によれば、日本の感染率は世界の割合でみると0.29%と低く(米国は5.5%)、レパシ氏は「ほかの国に比べて日本のユーザーはPCの技術レベルが高く、オンラインセキュリティの意識も高いのではないか」と推測している。
続いて同氏は“マルチレイヤーアプローチ”と呼ぶ多段階の保護機能を備えたPC Tools Internet Securityの特徴を2つのシナリオで説明した。まず1つは、受信したメールにフィッシングサイトへ誘導するリンクが含まれていた場合の例だ。銀行を模したフィッシングサイトのリンクをユーザーがクリックすると、ここで(ブラックリストにある)悪意のあるWebサイトの表示がブロックされる。仮にこのページが数時間前に作成されたばかりでデータベースになくても、Webページ自体を検査してぜい弱性につけこむ仕掛けがあれば同様にブロックする。このいずれにも該当せず、2つのレイヤーを通過した場合は、ファイルがダウンロードされる際に、それがマルウェアであるかどうかを判定する機能が動作する。これはPC Toolsのラボやアクティブユーザーから収集したデータを基盤としたクラウドベースの判定機能で、評価基準が常時最新の状態に更新されているのが特徴だ。
もう1つのシナリオは、悪意のあるプログラムが実際に実行されてしまった例。この場合は、常にプログラムの動作をモニターしているPC Tools Internet Securityがリアルタイムであやしい挙動を検知し、実行をブロックする(例えばタスクリストから隠れようとするなど)。実際、AV TEST(セキュリティソフトの比較検証を行う独立機関)の結果では、ビヘイビア検知によるマルウェアの検出率で100%を達成している。また、この手法では検知率を向上すると誤検知率も同様に上がりやすいが、他社製品に比べて高いわけでもなく優秀な成績を残しているという。レパシ氏は、マルウェアの侵入経路すべてをカバーするこれらの多様な防御機能を指して「非常に堅牢なセキュリティ機構が組み込まれている」と自信を見せる。
なお、同社はMac向けアンチウイルスソフトとして「PC Tools iAntiVirus」をラインアップしているが、日本語版の投入については「現在検討している段階」としている。
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