進化か?退化か?──Let'snote J9の真価を問う:見た目で判断してはいけない(4/4 ページ)
Let'snoteの元祖といえばRシリーズ。その“R”に代わって新たに“J”が登場した。「Rとは別な位置付け」という新モデルは、みんなの目にどう見えるだろうか?
ベンチマークテストで考える“12万円”Let'snoteの“使える度”
店頭向けスタンダードモデルでは、CPUにCore i3-370Mを採用して価格を抑えている。ただ、TDP35ワットモデルなので、動作クロックは2.4GHzになる。これは、Let'snote R9のマイレッツ倶楽部プレミアムエディションで搭載していたCore i7-640UMの1.2GHz、Turbo Boost Technology有効時で最大2.26GHzより高速で動作する。ただ、データストレージは160GバイトのHDD、システムメモリの容量は標準構成で2Gバイトに抑えられている「12万円前後」のLet'snote J9がどの程度のパフォーマンスを発揮するのか、気になるところでもある。
そこで、やや旧モデルになるが、2010年1月に登場したLet'snote R9のマイレッツ倶楽部プレミアムエディション(動作クロック1.06GHz、Turbo Boost Technology有効時で2.13GHzのCore i7-620UM、DDR3メモリ4Gバイト、250GバイトのHDDを搭載)と、Let'snote J9の店頭向けスタンダードモデル、そして、マイレッツ倶楽部限定プレミアムエディションで測定したベンチマークテストの値を比較してみた。
なお、OSが異なる(Let'snote J9スタンダードモデルは32ビット版 Windows 7 Home Premium、Let'snote J9マイレッツ倶楽部プレミアムエディションとLet'snote R9は64ビット版 Windows 7 Professional)のと、Let'snote J9の店頭向けスタンダードモデルとプレミアムエディションがどちらも評価用試作機で製品版と測定結果が異なる可能性があるなど、厳密な比較にはならないため、参考値として考えていただきたい。
ベンチマークテストの結果 | Let'snote J9 スタンダードモデルstandard | Let'snote J9 プレミアムエディション | Let'snote R9 | |
---|---|---|---|---|
PCMark Vantage Build 1.0.2.0 | PCMark | − | 10064 | 3622 |
memories | − | 5075 | 1991 | |
TV and Movies | − | 3520 | 2439 | |
Gaming | − | 5472 | 1985 | |
Music | − | 13289 | 3878 | |
Communications | − | 10223 | 4410 | |
Productivity | − | 14286 | 2957 | |
HDD | − | 22656 | 3009 | |
PCMark 05 Build 1.2.0 | PCMarks | 5096 | − | 3914 |
CPU | 6466 | 8096 | 4490 | |
Memory | 5250 | 6474 | 4431 | |
Graphics | 2230 | 2256 | 1840 | |
HDD | 4307 | − | 4646 | |
3DMark 06 Build 1.0.2 | 1280×768ドット、nonAA、nonAniso | 1304 | 1390 | 1213 |
CINEBENCH R10 | Rendering(Single) | 2636 | 4558 | 2218 |
Rendering(Multiple) | 5906 | 7757 | 3542 | |
CrystalDiskMark3.0 | read Seq | 55.84 | 190.6 | − |
Read 512 | 23.64 | 174.3 | − | |
Read 4 | 0.323 | 13.92 | − | |
Read 4KQD32 | 0.705 | 16.34 | − | |
Write Seq | 55.49 | 171.2 | − | |
Write 512 | 24.47 | 153.4 | − | |
Write 4 | 0.761 | 22.32 | − | |
Write 4KQD32 | 0.767 | 34.02 | − | |
FINAL FANTASY XI Offical Benchmark 3 | LOW | 3658 | 4212 | 2416 |
High | 2271 | 2615 | 1623 |
Let'snote J9は、スタンダードにしてもプレミアムエディションにしても、Let'snote R9の結果を明らかに上回る。TDP35ワットCPUの高クロック動作が効いているようだ。データストレージ関連のテスト結果については、256GバイトのSSDを搭載するLet'snote J9 プレミアムエディションが群を抜いているが、160GバイトのHDDを搭載するスタンダードモデルは250GバイトのHDDを搭載するLet'snote R9を下回る。しかし、メモリ関連のテストでは、2Gバイトと不利な条件のスタンダードモデルの結果が、4Gバイトを搭載するLet'snote R9を超えている。
このように、価格を抑えるために、CPUやメモリ、HDDのスペックを抑えたLet'snote J9の店頭向けスタンダードモデルでも、従来のLet'snote R9を超えるパフォーマンスを発揮する。これは、TDP35ワットの高クロックCPUを搭載しているおかげだが、消費電力の大きいCPUを搭載しているので、バッテリー駆動時間が心配になるかもしれない。しかし、Let'snote J9 マイレッツ倶楽部プレミアムエディションをBBench 1.01(海人氏・作)で「60秒間隔でのWeb巡回(10サイト)」「10秒間隔でのキーストローク」「無線LAN常時有効」「電源プランはバランス」(ただし、液晶ディスプレイの輝度は手動で20分の10レベルに設定)の条件で測定した結果は6.98時間と、コンパクトモバイルのノートPCとしては良好な結果を出している。
実は使い勝手に優れた「できる」モバイルノートPC
Let'snote J9は、低価格で購入できるラインアップを追加するために、これまでのLet'snoteで重視してきた路線を思い切って変更したモデルだ。Windows 7 Home Premiumの採用、vProの非対応、そしてボンネット天面の廃止と堅牢性能の軽減など、Let'snoteの存在理由としてきた仕様やスタイルを大胆に変えている。
デザイン的な理由のほかに、堅牢性能を維持するために着用が前提とされるジャケットを外すとコンパクトな印象となるが、「Let'snoteの個性がなくなって別なPCメーカーのノートPCにも見えてしまう」という声が多い。
見た目では厳しい意見が多いLet'snote J9だが、実用的な評価では、解像度が1366×768ドットの10.1型ワイド液晶ディスプレイやキーボードの使い心地などかなりいい。ほかのLet'snoteシリーズが1280×768ドットにとどまっているだけに、画面回りの印象は一番いい感じだ。見た目で「マイナススタート」だったLet'snote J9だが、使う時間が長くなるほどに印象はよくなっていった。
最初は外見に驚くかもしれないが、12万円の低価格モデルでも1366×768ドットという高解像度とLet'snote R9を超えるパフォーマンスが利用できるLet'snote J9。見た目だけで判断してはいけないノートPCだ。
- 発表会リポートはこちら→3人の美女がLet'snoteを語る:Let'snote J9を使えば女子力もアップするらしい
関連記事
- 3人の美女がLet'snoteを語る:Let'snote J9を使えば女子力もアップするらしい
パナソニックは、Let'snoteの新シリーズ「Let'snote J9」の製品説明会を行い、新製品の特徴とともに「女子力をアップ」するプロモーションを紹介した。 - 2010年PC秋冬モデル:生まれ変わったLet'snoteのコンパクトモバイル──「Let'snote J9」
“R”に変わるLet'snoteの新シリーズが登場した。ワイド液晶画面とTDP35ワットの高クロックCPU、そして、専用の“ジャケット”で新しいユーザー層を狙う。 - サイズと重さはそのままで、バッテリー駆動時間が向上──「Let'snote」2010年秋冬モデル
パナソニックは、9月6日にLet'snoteの秋冬モデルとして「S」「N」「F」の新製品を発表した。いずれもマイナーバージョンアップでCPUとHDD容量が強化された。 - 最大で約16時間のバッテリー駆動が可能に──「Let'snote S9」
パナソニックは、9月6日にLet'snote S9の新モデルを発表。SSD搭載のマイレッツ倶楽部モデルプレミアムエディションでは約16時間のバッテリー駆動を実現した。 - マイレッツ倶楽部に“プレミアムなN”が登場──「Let'snote N9」
パナソニックは、9月6日に「Let'snote N9」の新モデルを発表。マイレッツ倶楽部では、ハイスペックモデルのほかに「プレミアムエディション」が用意された。 - マイレッツ倶楽部モデルでCore i7を搭載──「Let'snote F9」
パナソニックは、9月6日にLet'snote F9の新モデルを発表した。マイレッツ倶楽部モデルでは、CPUにCore i7を搭載した構成が登場した。 - 「Let'snote C1」の“トリプルヒンジ”とパフォーマンスを緊急チェック
“C1”はLet'snoteシリーズで初めての「コンバーチブル」タイプのモデルだ。ごついスタイルになりがちなのにシンプルなスタイルを実現したC1に迫る。 - Let'snote初のコンバーチブル対応モデル──Let'snote C1
パナソニックは、6月2日にLet'snoteの新シリーズとなる「Let'snote C1 CF-C1」を発表した。また、Let'snote夏モデルにOffice 2010搭載モデルが追加された。 - 基本性能を地道に強化した「Let'snote 2010年夏モデル」発表
パナソニックは、5月11日にLet'snote夏モデルを発表。「R」「S」「N」「F」でCPUやHDDを強化したほか、マイレッツ倶楽部モデルでは「無線接続全対応」が“さらに”追加された。 - プレミアムエディションで“Core i7”モデルが登場した「Let'snote S9」発表
軽量な2スピンドルノートPCとして人気のLet'snote S9に夏モデルが登場。店頭モデルではHDDとメモリを増量し、マイレッツ倶楽部限定モデルではCPUを強化した。 - CPUを強化した「Let'snote R9」2010年夏モデル発表
「小型軽量堅牢」のモバイルノートPCに夏モデルが登場。CPUの動作クロックを向上させながら、TDPは従来通りと消費電力を維持しているのが特徴だ。 - WWAN+モバイルWiMAXモデルが追加された「Let'snote N9」2010年夏モデル発表
廉価なワンスピンドルモデルのLet'snote N9。夏モデルでは、待望の「無線接続全対応」構成が直販限定モデルで登場する。 - 夏になってもハンドルは健在──「Let'snote F9」発表
パナソニックは、5月11日に軽量大画面ノートPC「Let'snote F9」の2010年夏モデルを発表した。出荷開始は5月21日の予定。実売価格は20万円前後だ。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.