電気? つ、使えますよ……、晴れていれば──「西チベット」にITはありえるのか:山谷剛史の「アジアン・アイティー」(2/3 ページ)
外国人の立ち入りが難しいチベット自治区ラサから、さらに難度の高い西チベットに突入! ラサはまだ「都会」だった!! チベットの奥地で彼が見たIT事情とは!!!
携帯電話が使えるエリアは100キロおき
西チベットを訪れる中国人の旅行者は、総じて同国人どうしで宿にこもり、地元のチベット人との交流に消極的だ。しかし、この地で出会ったチベット人は、遠くからやってくる中国人や外国人に強い好奇心を示す。小さな集落であればあるほどたくさんの地元住民が旅行客を取り囲み、デジタルカメラや携帯電話で撮影した画像を興味深く見入る。
これまで、中国内陸部にある所得水準の低い地域やインフラ整備が途上のモンゴル、ベトナム、そして、情勢不安な中央アジア諸国などを巡ってきたが、所得に比べてPCが高価であっても、携帯電話を使って撮影することはごく当たり前だった。しかし、西チベットでは、携帯電話を持つ人がまだまだ少ない。これはどうしたことだろうか。
西チベットでも、携帯電話キャリアの営業所と端末販売店は各集落にある。しかし、携帯電話が使えるのは基地局がある集落中心周辺に限られ、集落の中心部から離れたとたん携帯電話は使えなくなる。しかも、集落にある唯一の基地局がしばしば故障するという。
「携帯電話を使うためにわざわざ自分の家から最寄りの集落に出たけれど、基地局が壊れていて使えないってぇ? しょうがないから、100キロ離れた隣の集落に電話をかけに行ってくるわ」と、電話をかけるために100キロ以上も移動するチベット人も少なくない。
統計によればチベット自治区の人口は2009年末で287万人、携帯電話の普及台数は149万台、固定電話の普及台数は50万台となっている。半数以上が持っている計算となるが、西チベットの小さな集落では携帯電話を使う人は見なかった。統計上は国民の半分が持っているが、その多くは人口が密集する(チベット比)ラサやシガツェなどの都市(チベット比)にユーザーが集中する一方で、西チベットでは集落に住むごく一部の層にしか普及していないのだろう。
PCを選んで買えるのは1000キロ離れたPCショップ
西チベットのPC事情では、所得水準がどうのこうの以前に購入自体がとても困難であったりする。小さな集落が数十〜数百キロ離れて点在する西チベットで確認できたPCショップは、西チベット最大の町「獅泉河」にあるだけで、いろいろなPCの実物を確かめながら購入したいと思ったらなんとしてもこのショップに1000キロ以上離れたラサまで行かなければならない。そのために陸路を数日かけて往復するのも大変な話で、西チベットでは仕事で必要としない限りPCを買う気にもならないそうだ。
とはいえ、PCショップがない西チベットの各集落にも印刷センター、ファイルダウンロードサービス、PC修理、PC教室を兼ねるインターネットカフェが“必ず”ある。ネットワークインフラはADSLときいて驚いたが、集落を結ぶ幹線はラサから引っ張ってきた光ケーブルというのにはさらに驚いた。旅行者が西チベットでインターネットから情報を収集しようとしたら、インターネットカフェを利用するのがもっとも簡単という。
インターネットカフェ以外にも、集落の携帯電話キャリアの営業所や、獅泉河など大きな集落にある食堂や商店の一部で、業務用(経営者の娯楽用も兼ねる)デスクトップPCを見かけた。が、PCが壊れたまま放置されているPCも少なくなかった。PCが故障しても修理に出すためにPCショップがある町まで泊まりがけで出かけるわけにもいかないからだ。
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