中国で“中華ロイド”を買っちゃった!:山谷剛史の「アジアン・アイティー」(2/2 ページ)
米国では思ったほど盛り上がっていないというAndroidタブレットデバイス。中国でも店頭で見ることはまずない。が、そこは中国。あるところにはあるんだなあ。
中華ロイドが来た!開けた! え、かっこいい……
Fly Touch IIは、購入するショップによってパッケージの名称が異なる。が、ハードウェア構成や梱包物は同じだ。筆者が購入したのは「Super PAD」というパッケージで、起動するとシステムの表示が中国語になっているが、Androidの言語とキーボードの設定を工場出荷時の簡体字中国語から日本語に替えるだけで日本語環境になる。Super PADに内蔵されたキーボードは、以前筆者が使っていたVAIO Type U付属のキーボードに比べて打鍵感が劣るが、まったく使えないわけでもない。価格相応と考えれば納得がいく。それより、キーボードの打鍵感より本体のカバーを兼ねているという点でSuper PADの評価は高くなる。
このSuper PADパッケージでは、中国製メディアプレーヤー「CCPlayer」がインストールされている以外にアプリケーションは入っていない。とはいえ、中国で販売されている“正規流通版”のiPhoneやiPod touch、iPadでは、YouTubeやGoogle Mapが“国の事情”でメニューに表示されないが、Super PADでは、ほかのAndroidタブレットデバイスと同様に表示される。ただ、中国で必ずPCにインストールするチャットソフト「QQ」のAndroid版が(マーケットなどで用意されているにも関わらず)インストールされていない。
中国のユーザーにはAndroidタブレットデバイスがQQを含むコミュニケーション利用やビジネス利用ではなく、単なるコンテンツプレーヤーとして認識されているのだろうか、と考えて中国のIT系Webページに掲載されているAndroidタブレットデバイスのレビュー記事や「インストールしておきたいソフト10選」といった記事をみてみると、確かに音楽共有サイトや動画共有サイトを利用するためのアプリケーションばかりが紹介されている。このあたりに、中国のユーザーにおけるAndroidデバイスの認識が見えてくる。
そんな中華ロイドの行く末はどっちだ
そんな筆者のFly Touch IIが故障してしまった。保証がある国美電器ではなく、何の補償もない代わりに半額のオンラインショップで購入した製品なので、日本の常識では、「そりゃあんた、購入者の自己責任でしょ。面倒みませんよ」となるが、中国ではリアル店舗でもオンラインショップでも、まずは電話をかけて修理を依頼してから故障した機材を送り、正常動作の機材と「無料で」「交換してもらう」のが基本だ。
筆者も、中国滞在中に数え切れないほどの中国メーカー製品が故障してきたが(本当によく故障する!)、いずれも無料ですぐ交換してくれた。今回も「突然動かなくなったのですが」と電話で状況を説明すると、「じゃあ送ってください。工場で原因をチェックすると時間がかかるから、新品をすぐ送ります」と返答があり、数日後には新品が届いた。中国のサポート恐るべし。
中国で流通しているタブレットデバイスで、iPadとAndroid搭載スレートPCはどちらが優位だろう? ある程度デジタルガジェットを使いこなせるユーザーの間では、安価で評判が“悪くない”Androidに人気が集まっている。ただ、所得が低い農村部の人々が安価なAndroidタブレットデバイスを購入するというのは、このカテゴリーの流通が上海や北京といった大都市の店舗とオンラインショップに限定されていることと、安価でも売れなかったNetbookの実績を考えると考えにくい。
iPadは“脱獄”前提で利用するのが“中国標準”(だって、海賊版を入れるんだもん)なので、アプリケーションコストはiPad(ということはiPhoneも)もAndroidも条件は同じだ。さらに、見栄えとステータスを大事にする中国では、iPhoneとiMacが金持ちをアピールできる重要なアイテムと認識されており、富裕層の必需品となっている。それに比べて、現状のAndroid搭載タブレットデバイスは、ガジェットギークの“おもちゃ”という地位でしかない。ハイエンドな多機能モデルは一定のシェアを取るだろうが、Andriod搭載タブレットデバイスは、Netbookと同じように、中国では「メーカーから数多くの製品は出るが、一般のユーザーにはウケない」という道をたどりそうな気がしてならない。
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