リアル店舗でせめぎあう「都合のいい店員」と「都合のいい客」:牧ノブユキの「ワークアラウンド」(2/2 ページ)
「実物を見ないとよく分からないので、量販店の店員に聞いて決める」というあなたは、量販店の店員にうまく利用されているだけの「お人好し」かもしれない。
量販店を支える「お人好し」な客
とはいえ、購入のために訪れる人々は、こうした応援販売員の特性を知ってうまく活用することなく、正社員に対するのと同じように全方位的なアドバイスを求めたり、応援販売員に対して値引き交渉をしようとしたりする。
土日をはじめとするセール期間中は、ごった返している店内で店員を選別している余裕はないのも事実だが、家族や友人にいいところを見せようと応援販売員に得意気に交渉を始め、別メーカーの製品について詳しくない、勉強不足だ、と怒り出す人も少なくない。内部事情を知っている側からすると、素人であることをさらけ出しているようなものだが、当人たちはそもそもの交渉相手が間違っていることに気づかない。
しかし、こうした門外漢の店員に説明を求め、それで納得して購入に至る人も多いのが、量販店の面白いところだ。まったく的はずれな答えが返ってきているのに、その店員が詳しいと信じ込んでしまっているがために、疑問をもたずに製品を買ってしまう。なんらかの助言さえもらえれば、その中身は自分で考えないという、店員にとっては、最も扱いやすいパターンだ。
現在、量販店の売上を支えているのはこうした「お人好し」な客ともいえる。ネット通販では、こうした「お人好し」に頼った販売方法というのはまず成立しないからだ。一方で、こうした「しったか」客の存在は「とにかく接客する人手が多ければ多いほどいいんだ」と量販店がメーカーに応援販売を強要する(もちろん建前上はメーカーが自主的にやっている)温床になっているといえるのかもしれない。
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